個人で飲食店を開業したら必ずやるべき税務手続きまとめ
飲食店を始めるとき、保健所の営業許可や店舗準備に気を取られがちですが、実は税務署への届出も非常に重要です。
「開業したいけど税金のことはよく分からない…」という方も多いのではないでしょうか?
この記事では、個人で飲食店を開業するオーナーが必ず知っておくべき税務手続きと経理の基本を、専門用語の解説を交えてわかりやすく解説します。
飲食店の開業に必要なのは「営業許可」だけじゃない
飲食店の開業は、保健所や消防署の許可を取るだけでは完了しません。
税務署に開業届を提出することで、初めて正式な事業として認められます。
開業時に税務署への提出が必要な書類は以下の通りです。
- 個人事業の開業届出書
- 青色申告承認申請書
「個人事業の開業届出書」とは
税務署に「個人で事業を始めます」と知らせる書類です。提出期限は開業日から1か月以内です。
これを出していないと、青色申告などの節税制度を受けられない場合があります。
「青色申告承認申請書」も同時に提出しましょう
青色申告とは、一定の帳簿をつけることで最大65万円の所得控除などの優遇を受けられる制度です。
開業届と一緒に提出しておくのがおすすめです。
スタッフを雇うならこの税務署類も必要
従業員を雇用する場合は以下の届け出書類も必要です。
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 源泉所得税の納期の特例
「給与支払事務所等の開設届出書」とは
従業員(アルバイト・パートを含む)に給与を支払う場合、事業主は源泉徴収義務者になります。
その際に提出が必要なのが給与支払事務所等の開設届出書です。提出期限は開業から1か月以内です。
「源泉所得税の納期の特例」を申請しよう
通常は給与のたびに源泉税を納める必要がありますが、源泉所得税の納期の特例を申請すれば年2回(7月10日・1月20日)にまとめて納付できます。
少人数の飲食店では必須の制度です。
飲食店経営で関係する主な税金の種類
所得税・住民税
事業のもうけ(売上−経費=所得)に対してかかる基本の税金です。所得税は確定申告時、住民税は6月に届く納付書により納めます。
消費税
原則、前々年の売上が1,000万円を超えると課税事業者になります。
ただし開業初年度は免税のケースが多いです。
飲食店では「イートイン=10%」「テイクアウト=8%」と税率が違う点に注意をしましょう。
個人事業税・償却資産税
業種や設備内容によって発生します。厨房機器など高額設備を持つ場合は課税対象になることがあります。
青色申告を選ぶメリットと注意点
節税効果が高い
青色申告にすると最大65万円の控除や赤字の繰越(3年)など多くのメリットがあります。
帳簿付けが必要
青色申告では複式簿記で帳簿をつける必要があります。
会計ソフト(freeeやマネーフォワード)を使えば初心者でも簡単です。
開業時に整えておきたい経理・会計の基本
事業用とプライベートの資金は分ける
事業専用の銀行口座・クレジットカードを作り、私的支出と完全に分けましょう。
売上・仕入・経費を毎日記録
現金商売ではレジ現金と帳簿残高の一致が重要です。POSレジや会計ソフトでの自動管理がおすすめ。
領収書・レシートの保存
領収書・請求書などは7年間の保存義務があります。日付順に整理しておきましょう。
仕入れた食材をプライベートで使った場合(家事消費)
「家事消費」とは
事業で仕入れた食材を自宅で使った場合、これは経費になりません。
このようなケースを家事消費といいます。
正しい処理方法
家事消費分は次のように仕訳します。
「事業主貸 ××円/仕入 ××円」。
つまり「事業から自分が引き出した」扱いにします。
まかないとの違い
従業員へのまかないは福利厚生費として経費にできることがありますが、特定の人だけや高額な食事は対象外です。全従業員が平等にもらえる機会を与える必要があります。
税務調査で誤解されないために
食材の使用先が不明だと売上除外や経費水増しとみなされることがあります。
帳簿やメモで「私用分」「まかない分」を明確にしておきましょう。
開業時にありがちな税務ミスと対策
- 開業届や青色申告承認申請書を提出し忘れる
- 給与支払事務所の届出を出していない
- 納期の特例を申請せず毎月納付になっている
- プライベート支出を経費に混ぜてしまう
- 帳簿や領収書を保存していない(保存義務違反)
これらは税務署が特に確認するポイントです。
最初の段階でしっかり整えておくことで、後のトラブルを防げます。
正しい税務手続きと経理の準備が“黒字経営”の第一歩
飲食店経営は、料理の腕や接客だけでなく数字の管理が成功のカギです。
開業届や給与関連の届出を忘れずに提出し、日々の経理を整えることが安定経営への近道です。
freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計を活用して、
税務署対応やインボイス制度にも早めに備えておきましょう。
ポイントまとめ
・開業届・青色申告は開業後すぐ提出
・スタッフを雇うなら給与支払事務所の届出必須
・食材の家事消費は「事業主貸」で処理
・帳簿と領収書は7年間保存
・経理を仕組み化して“数字に強い飲食店”へ

