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個人事業主が法人化するとどうなる?給与・社会保険・節税のリアルとは?

堀真彰

個人事業主として一定の売上や利益が出てくると、「そろそろ法人化した方がいいのかな?」と考える方も多いのではないでしょうか。
法人化にはメリットもあれば、当然デメリットもあります。
今回は、法人化によって具体的に何が変わるのか、特に「給与」「社会保険」「節税」の観点からリアルな変化を解説します。

給与の考え方が大きく変わる

個人事業主の場合、事業の利益がそのまま自分の所得になります。
しかし法人化すると、社長(=自分)であっても会社から「給与」を受け取る形になります。

  • 給与は経費になる
    法人では、社長に支払う給与は「役員報酬」として経費計上できます。これにより、法人の利益を圧縮し、法人税の負担を軽減することが可能です。
  • 給与額は自由に変えられない
    役員報酬は原則として「事業年度の期首に定めた金額」で固定されます。途中で増減すると税務上問題になるため、慎重な設定が必要です。
  • 源泉徴収と年末調整が必要になる
    法人が給与を支払う場合、源泉徴収義務が発生します。年末には年末調整も必要となり、個人事業主時代よりも事務負担が増える点は注意が必要です。

社会保険の加入が義務に

法人化すると、社長1人だけの会社であっても、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務になります。

  • 保険料負担が増える可能性
    個人事業主時代は国民健康保険・国民年金に加入していたと思いますが、法人化後は厚生年金・健康保険に切り替わります。保険料は会社と個人で折半するため、実質的な負担は増えるケースが多いです。
  • 従業員を雇う場合の整備がしやすい
    法人化して社会保険に加入しておけば、従業員を雇う際もスムーズに保険加入手続きができます。採用面でも安心感を与えられるでしょう。

節税の選択肢が広がる

法人化の最大のメリットとして語られるのが「節税効果」です。
ただし、これは状況によって異なるため、過度な期待は禁物です。

  • 所得分散の自由度が高い
    法人ではご家族を役員や従業員として雇用し、給与を支払うことで所得を分散することができます。個人事業主の青色事業専従者給与制度と比べて制約が少なく、事前の届出も不要なため、より柔軟に設計できます。
  • 経費計上の幅が広がる
    社宅制度や役員車両のリース代、保険料、交際費など、法人のほうが経費として認められる支出の幅が広くなります。事業に関連する支出を合理的に経費化することで、節税につなげやすくなります。

その他の事項(注意点)

法人化には多くのメリットがありますが、同時に事務的な負担や手続きの煩雑さも伴います。
特に以下の点については、事前に理解しておくことが重要です。

  • 経理事務が複雑
    法人では複式簿記が必須となり、決算書の作成や法人税の申告も個人事業主より高度な知識が求められます。税理士への依頼が必要になるケースも多く、外部コストが発生する可能性があります。
  • 設立手続きが複雑
    法人設立には定款の作成、公証人の認証、登記申請など複数のステップが必要です。設立時には登録免許税や定款認証費用など、数万円〜十数万円の初期費用がかかります。
  • 登記や変更手続きが煩雑
    役員変更や本店移転、資本金の増減など、法人では変更があるたびに法務局への登記申請が必要になります。これらの手続きには書類作成や期限管理が求められ、専門家のサポートが必要になる場合もあります。

まとめ

法人化によって、給与の仕組み、社会保険の加入、節税の可能性など、事業運営のスタイルが大きく変わります。
「なんとなく法人化した方が良さそう」という感覚だけで進めると、思わぬ負担や損失につながることもあります。

まずは、自分の事業のフェーズや将来の展望を踏まえて、「今、法人化するべきか?」を冷静に判断することが大切です。

私たち「税理士法人淀川パートナーズ」は、税務顧問や経理事務の効率化など幅広く対応しています。

ABOUT ME
堀 真彰
堀 真彰
税理士・公認会計士
大手監査法人で上場企業の監査に従事。 若手起業家を税務の面から支援したい考え、小西とともに弊社を設立。 税務申告の代行者だけではなく、経営のパートナーとして信頼される税理士を目指しています。
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