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法人化の注意点とは?大阪の税理士が教える会社設立前後の落とし穴

小西 椋磨

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小西 椋磨

小西 椋磨

税理士 / 公認会計士

公認会計士・税理士/税理士法人淀川パートナーズ代表。大手監査法人出身。2023年に独立し、大阪市淀川区を拠点に創業融資支援から税務顧問まで、創業期・成長期の経営者の財務の右腕として伴走しています。

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「売上が上がってきたので、そろそろ法人化した方がいいですかね?」

個人事業主やフリーランスの方から、こういうご相談をよく受けます。

正直に言うと、私はこの質問に対して「いいですね、やりましょう」とは、すぐに言いません。まず「本当に今、法人化すべきですか?」と、一度立ち止まって一緒に考えるようにしています。

理由は後ほど説明しますが、法人化は「節税になる」というイメージだけで進めると、思わぬコストや手間が発生することがあるからです。

この記事では、実際の相談対応の中で「これは事前に知っておいてほしかった」と特に感じた点に絞ってお伝えします。網羅的なガイドではなく、見落としやすいからこそ痛い目を見やすい、そこだけを厳選しています。

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法人化の注意点①:そもそも法人化すべきか?

「節税になるから法人化したい」というご相談はとても多いです。たしかに、法人税率は一般的に個人の所得税率より低くなるケースがあります。

ただ、実際にシミュレーションしてみると「社会保険料の負担増を考えると、手元に残るお金は個人事業主のときと変わらない、あるいは減る」というケースも少なくありません。

法人になると、こういったコストと手間が一気に増えます。

  • 法人税申告(個人の確定申告より複雑で費用もかかる)
  • 登記変更費用(代表取締役が引越すたびに住所変更登記が必要で、登録免許税もかかる)
  • 社会保険への強制加入(社長1人でも加入義務あり)
  • 法人住民税の均等割(赤字でも年間7万円〜が固定でかかる)

もし取引先から「法人でないと取引できない」と言われていないなら、個人事業主のままで事業を継続するという選択肢も、全然アリだと私は思っています。

法人化は「すべき条件が揃ったとき」に進めるのがベストで、「なんとなく」で動くと後悔しやすいです。

法人化の注意点②:合同会社と株式会社、慎重に選ぶ

法人化すると決めたら、次に「株式会社」か「合同会社」かを選びます。

なんとなく「株式会社の方が信用される」というイメージで株式会社を選ぶ方が多いのですが、実際には合同会社で十分なケースもかなり多いです。

比較項目株式会社合同会社
設立費用の目安約20万円〜6万円〜
定款認証必要(3〜5万円程度)不要
役員の任期最長10年(更新のたびに登記が必要)無期限
意思決定株主総会が必要出資者間で柔軟に決定可能

外部から出資を受ける予定がない、将来的にIPO(株式公開)を目指すわけでもない、という場合は、合同会社の方が初期コストも維持コストも安く済みます。

「取引先が合同会社を嫌がる」というケースは、最近はほとんど見かけなくなりました。

法人化の注意点③:電子定款で設立費用を抑える

株式会社を設立する場合、定款(会社のルールブック)を作成して公証役場で認証を受ける必要があります。

このとき、紙で定款を作ると収入印紙代として4万円がかかります。一方、電子定款にすればこの4万円が不要になります。

自分でやる場合に必要なものはこちらです。

  • マイナンバーカード(電子署名に必要。住所が最新かどうか要確認)
  • ICカードリーダー(1,500〜2,000円程度で購入可能)
  • Adobe Acrobat有料プラン(電子定款のPDFに署名するために必要。7日間の無料体験あり)

ここで実際によくあるトラブルが、「いざ署名しようとしたらマイナンバーカードの住所が引越し前のままで、審査が通らなかった」というケースです。市役所での住所変更が済んでいるかどうか、事前に必ず確認してください。

法人化の注意点④:役員報酬は設立から3ヶ月以内に決める(最重要)

これは特に強調したい点です。

法人税法には「定期同額給与(ていきどうがくきゅうよ)」というルールがあります。簡単に言うと、役員報酬は毎月同じ金額を支払い続けないといけないという規定です。利益が出た月だけ多く払う、といったことは認められません(税務上の経費にならなくなります)。

そして、この役員報酬の金額は設立から3ヶ月以内に決める必要があります。

期限を過ぎてしまうと、その期(事業年度)は役員報酬を損金として計上できなくなります。つまり、本来は経費になるはずだったお金が経費にならず、払わなくていい法人税を払う羽目になります。

「売上が見えてから決めよう」と後回しにしていると、取り返しがつかなくなることがあります。

実際に、こんなケースがありました。設立から6ヶ月後に税務顧問のご依頼をいただいたお客様に「役員報酬はいくら払っていますか?」とお聞きすると、「払っていません」というご回答でした。設立3ヶ月の期限はすでに過ぎていたので、その事業年度は役員報酬ゼロとして処理するしかありません。ところが、その期に想定以上の利益が出てしまい、法人税が多額に発生しました。「そんなに税金がかかるとは思っていなかった」と、納付資金を用意できていなかったため、最終的に換価の猶予申請という手続きを取ることになりました。

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役員報酬を「ゼロ」にするという判断自体が間違いというわけではありませんが、それをした場合の税負担を事前に把握していなかったことが問題でした。設立前から税理士に相談していれば、こういった事態は防げます。

役員報酬の最適な金額は、個人の所得税・社会保険料・法人税のバランスで決まります。自分で計算するのは難しいので、設立前から税理士に相談することをおすすめします。

法人化の注意点⑤:設立直後にやるべき手続き(漏れると痛い)

登記が完了しても、すぐにやるべき手続きが続きます。

届出提出先期限
法人設立届出書税務署・都道府県・市区町村設立から2ヶ月以内
給与支払事務所等の開設届税務署設立から1ヶ月以内
青色申告の承認申請書税務署設立から3ヶ月以内(※)
社会保険の届出年金事務所速やかに

※青色申告の承認申請書の期限は、「設立から3ヶ月以内」と「最初の事業年度の終了日の前日」のどちらか早い方です。たとえば決算月が設立の翌月の場合、3ヶ月を待たずに期限が来るケースがあります。

特に「青色申告の承認申請書」を忘れると、欠損金(赤字)の繰越控除など多くの税務メリットが受けられなくなります。1日でも期限を過ぎると適用できないので、設立直後に必ず提出してください。(参考:国税庁|青色申告書の承認の申請

実際にこんなケースがありました。設立後に税務顧問のご依頼をいただいたお客様で、初年度は赤字でした。ところが青色申告の承認申請書を提出していなかったため、その赤字を翌年度に繰り越すことができませんでした。翌年度に黒字が出たとき、本来であれば前年の赤字と相殺できるはずだったのに、それができずに法人税が丸々発生してしまいました。「初年度が赤字だから税金はかからないだろう」と思って届出を後回しにしていたことが、翌年に響いたケースです。

なお、都道府県・市区町村への法人設立届出書には、登記簿謄本(登記事項証明書)の原本が必要な場合があります。法務局での登記完了と同時に3部程度取得しておくとスムーズです。

また、法人口座の開設は早めに動いてください。最近は審査が厳しくなっており、時間がかかることがあります。個人口座と法人口座を混在させると会計処理が複雑になるので、できるだけ早く分けることが大切です。

法人化の注意点⑥:意外と漏れる年次手続き

法人になると、毎年こなすべき手続きが増えます。決算・法人税申告はイメージしやすいですが、以下は漏れがちです。

以下はいずれも1月31日が期限です。

  • 年末調整・源泉徴収票の交付:役員報酬がある場合は会社として対応が必要
  • 給与支払報告書・法定調書の提出:各市区町村・税務署へ
  • 償却資産税の申告:パソコンや内装設備などがある場合。実務上、特に漏れやすいです

そして、忘れてはいけないのが法人住民税の均等割(きんとうわり)です。

これは、たとえ赤字でも毎年必ず払わなければならない税金です。大阪市の場合、資本金1,000万円以下・従業員50人以下の法人であれば、府民税2万円+市民税5万円=年間7万円が固定でかかります。

「今期は赤字なので、税金はかかりませんよね?」とおっしゃるお客様は実は多いです。法人税は利益がなければかかりませんが、均等割は別の話で、本社がどこにあるかによって金額は変わりますが、赤字でも固定で発生します。「法人を維持しているだけでかかるコスト」として、必ず事前に把握しておいてください。

設立前から税理士に相談する理由

「決算が近づいてから税理士を探せばいい」と思っている方が多いですが、実は設立前が一番大事なタイミングです。

理由は、設立時に決める事項が後から変えられないものが多いからです。

  • インボイス登録と消費税の免税:「法人設立後2年間は消費税がかからない」と思っている方が多いのですが、インボイス(適格請求書発行事業者)に登録した時点から消費税の納税義務が発生します。取引先からインボイス登録を求められているケースも増えていますが、登録前に必ず税理士に確認してください。
  • 決算月:資金繰りや節税に直結します。設立直後に決算を迎える月に設定してしまうと、ほぼ取引のない1ヶ月分だけで申告が必要になり、費用だけかかって意味がないということが起こります。また、定款の作成ミスで事業年度が1年を超えてしまったケースもありました。法人税の申告は1年を超える事業年度では申告できないため、最初の1年分と残りの期間に分けて2回申告する羽目になり、余計な手間とコストが発生しました。定款の作成は、一見シンプルに見えて実は重要な判断が多い作業です。
  • 役員報酬の額:設立3ヶ月以内に決定が必要(前述)

これらを最適化するには、個人の所得・事業規模・将来計画を踏まえた専門的な判断が必要です。後から「そうとは知らなかった」では取り返しがつかないことも多いので、設立前の段階でご相談いただくのが一番です。

大阪で法人化を検討している方へ

法人化は事業を成長させる大切な一歩ですが、「なんとなく」で進めると手痛いコストや手続きの漏れにつながることがあります。

「自分の売上規模で法人化すべきか?」「合同会社と株式会社どちらがいいか?」そういった迷いの段階からでもお気軽にご相談ください。初回相談は無料です。無理な営業は一切いたしません。

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税理士・公認会計士
税理士・公認会計士/税理士法人淀川パートナーズ代表。大手監査法人出身。2023年に独立し、大阪市淀川区を拠点に創業融資支援から税務顧問まで、創業期・成長期の経営者の財務の右腕として伴走しています。
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