ネイルサロンの確定申告|経費・家事按分・開業費の注意点を税理士が解説
この記事を書いた人堀 真彰(税理士 / 公認会計士)

「自宅サロンの家賃はどこまで経費になる?」「開業前に買った物は経費にできる?」——初めての確定申告で、ここで手が止まるネイルサロンの方は少なくありません。
この記事では、ネイルサロンの確定申告で迷いやすい3つの論点、経費と記帳の仕方・自宅サロンの家事按分・開業費と機材の扱いを、個人事業主の記帳と確定申告を担当している税理士が解説します。読み終えるころには、自分で処理できる部分と、専門家に確認したほうがよい部分を切り分けられるようになります。
ネイルサロンの確定申告の基本
個人でネイルサロンを営んでいる方は、1月1日から12月31日までの1年間の売上と経費をまとめ、翌年の3月15日までに確定申告をします。施術の売上から経費を差し引いた「事業所得」に対して、所得税と住民税がかかります。
開業1年目の申告で決めた処理の仕方は、2年目以降もそのまま続いていきます。最初の申告で基準を固めておくと、翌年からの作業がぐっと楽になります。
青色申告と白色申告の違い
確定申告には「青色申告」と「白色申告」があります。青色申告は事前に税務署へ承認申請書を出す必要がありますが、利益から差し引ける特別控除があり、節税の効果が大きくなります。ひとことで言えば、帳簿をきちんとつけて、e-Taxで期限内に出せば65万円です。
| 青色申告特別控除 | 主な条件 |
|---|---|
| 65万円 | 複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付して期限内に申告。かつ、e-Taxで提出するか、優良な電子帳簿の要件を満たして保存する |
| 55万円 | 複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付して期限内に申告(e-Taxなどの条件を満たさない場合) |
| 10万円 | 上記の条件を満たさない青色申告 |
青色申告の承認申請書は、開業した日から2か月以内(1月1日〜15日に開業した場合はその年の3月15日まで)に提出します。提出が間に合わなかった年は白色申告になり、翌年以降に青色申告にするには、青色申告を始めたい年の3月15日までに申請します。条件の詳細は、国税庁のNo.2072 青色申告特別控除で確認できます。
ネイルサロンで経費になる費用と勘定科目
経費になるのは、サロンの売上を得るために必要な支出です。ネイルサロンでよく出てくる費用と、帳簿をつけるときの勘定科目(費用の分類名)の例をまとめました。
| 費用の例 | 勘定科目の例 |
|---|---|
| ジェル・カラー・パーツなどの材料 | 仕入高(または材料費) |
| ファイル・ワイプ・消毒用品・使い捨て手袋 | 消耗品費 |
| テナントの家賃・共益費 | 地代家賃 |
| 予約サイトの掲載料・SNS広告・チラシ | 広告宣伝費 |
| 予約サイトの予約手数料・キャッシュレス決済の手数料 | 支払手数料 |
| 開業後に受けた技術講習・セミナーの受講料 | 研修費 |
| 電気代・水道代 | 水道光熱費 |
| スマートフォン・インターネットの料金 | 通信費 |
| お客様に出す飲み物・お客様用の備品 | 消耗品費(または雑費) |
勘定科目は、毎年同じ費用を同じ科目に入れていれば差し支えありません。科目名で迷うより、同じ費用はいつも同じ科目にと決めておくほうが大切です。
売上と手数料の記帳
キャッシュレス決済や予約サイトの売上は、手数料が差し引かれて入金されます。入金額だけを売上にすると、売上も手数料も少なく記帳されてしまいます。売上は手数料を引く前の金額で計上し、手数料は支払手数料として別に記帳します。
たとえば、10,000円の施術代から決済手数料360円が引かれて9,640円が入金された場合(数字は説明のための仮のものです)、帳簿には次のように記録します。
| 記録する内容 | 金額 |
|---|---|
| 売上高 | 10,000円 |
| 支払手数料 | 360円 |
| 普通預金への入金 | 9,640円 |
また、売上は入金された日ではなく、施術をした日に計上します。12月に施術して翌年1月に入金される予約サイトやカード決済の分も、施術をした年の売上です。年末の入金待ちの売上は計上漏れが起きやすいので、12月分の明細は必ず確認しましょう。
年末に残った材料と物販用の商品
年末に残っている材料や、お客様に販売するためのネイルオイル・ハンドクリームなどの商品は、原則として在庫として数え、その年の経費から外します。物販用の商品が多い場合や、材料をまとめ買いした場合は、数え方を含めて税理士に確認しておくと安心です。
自宅ネイルサロンの家事按分
自宅の一室でサロンを営んでいる場合、家賃や光熱費は生活とサロンの両方に使っています。このような費用は、サロンで使っている部分だけを経費にします。これを家事按分(かじあんぶん)といいます。
国税庁の通達では、業務に使う部分を明らかに区分できれば、その部分を経費にできるとされています。大切なのは割合の大きさではなく、「なぜその割合なのか」を説明できることです。
家賃の按分の考え方
家賃は、施術スペースの床面積の割合で按分するのが一般的です。たとえば、専有面積50㎡の部屋のうち、施術用の一室が10㎡なら、家賃の20%を経費にします。施術スペースを生活にも使っている場合は、さらに使用時間なども考えて割合を下げます。
持ち家の場合は家賃がありません。代わりに建物の減価償却費や固定資産税などを按分するため、計算が複雑になります。住宅ローン控除を受けている方は、事業に使う割合によって控除額に影響することもあります。持ち家で開業している方は、最初の申告の前に税理士に確認しておくと安心です。
光熱費・通信費の按分
電気代は、施術スペースの面積や、営業時間中に使うエアコン・暖房器具・照明の時間などから割合を決めます。スマートフォンは、予約の連絡やSNSでの集客に使う時間の割合で按分します。決めた割合と、その理由をメモに残しておきましょう。
家事按分のルールと、ほかの業種の具体例はこちらの記事で詳しく解説しています。

淀川パートナーズでは、ネイルサロンの日々の記帳から、開業費や家事按分の判断を含めた確定申告まで、開業1年目からサポートしています。全国どこからでもオンラインでご相談いただけます。
開業費と機材の減価償却
開業1年目の申告で特に迷いやすいのが、開業前に払った費用と、ネイルテーブルなどの機材の扱いです。
開業費になる費用と任意償却
事業を始めるまでに、開業準備のために特別に払った費用は「開業費」になります。たとえば、オープン前の広告費・チラシの印刷代、物件探しや打ち合わせの交通費などです。ただし、機材のように資産として残るものは開業費ではなく、次に説明する減価償却の対象です。また、テナントの敷金・保証金のうち退去時に返ってくる部分は、経費にも開業費にもなりません。
開業費は、経費にする年と金額を自分で選べます(任意償却)。開業1年目が赤字なら経費にせず、利益が出てきた年に回すこともできます。開業前の領収書は捨てずに、何のために払ったかがわかる形で残しておきましょう。
ネイル機材の減価償却と40万円未満の特例
機材は、1つあたりの金額によって経費にするタイミングが変わります。ネイル用ライトや集じん機など10万円未満のものは使い始めた年に全額を経費にでき、ネイルチェアや施術用のテーブルなど高額なものは、金額に応じて下の表のとおりになります。
| 1つあたりの金額 | 経費にするタイミング |
|---|---|
| 10万円未満 | 使い始めた年に全額 |
| 10万円以上20万円未満 | 3年間で3分の1ずつ(一括償却資産)も選べる |
| 40万円未満(青色申告の場合) | 使い始めた年に全額(2026年4月1日以後の取得分から。年間合計300万円まで) |
| 上記以外 | 耐用年数に応じて何年かに分けて経費にする(減価償却) |
消費税の免税事業者のうちは、10万円・20万円・40万円の判定を消費税込みの金額で行います。本体価格が10万円未満でも、税込みで10万円以上になる機材は「10万円未満」の扱いにはなりません。40万円未満の特例は青色申告をしていることが条件です。詳しくは国税庁のNo.2100 減価償却のあらましで確認できます。
開業資金の内訳や、創業融資を受けるときの資金計画は、こちらの記事で解説しています。

2年目以降に増える税金の判断
開業1年目の申告を終えても、サロンが成長するにつれて、毎年判断することが増えていきます。
消費税とインボイス
個人で開業した場合、インボイス(適格請求書)の発行事業者に登録していなければ、原則として開業から2年間は消費税を納める必要はありません。3年目以降は、2年前の売上が1,000万円を超えているかで判断します(1年目の1〜6月の売上と給与の支払額がともに1,000万円を超えた場合は2年目から納税しますが、1人で営むサロンではまれです)。
インボイスに登録すると、売上の金額にかかわらず消費税の申告が必要になります。納める額を軽くする「2割特例」(個人は令和8年分まで)と「3割特例」(令和9年分・令和10年分)もあり、お客様の多くが個人のサロンでは、登録するかどうかから判断が分かれます。
毎年同じ基準で続ける大切さ
家事按分の割合や勘定科目の分け方は、一度決めたら毎年同じ基準で続けることが大切です。施術スペースを広げたなど使い方が変われば見直しますが、使い方が変わらないのに年によって割合を変えると、利益の比較ができなくなり、税務署から説明を求められたときに、合理的な説明が難しくなります。
また、創業融資を受けた方にとっては、確定申告書と決算書が次の融資の審査資料になります。返済が始まってからの資金繰りや、スタッフを雇うか、法人にするかといった判断も、毎月の数字がそろっていてこそできます。確定申告は1年に1回の作業ではなく、毎月の記帳の積み重ねの結果です。
スタッフを業務委託で迎える場合の源泉徴収や消費税、給与と判断される境目は、こちらの記事で解説しています。

専門家に確認したほうがよいケース
経費の記帳や家賃の按分は、ご自身でも十分に対応できます。一方で、次のようなケースは判断が分かれやすいため、最初の申告の前に税理士に確認しておくと安心です。
- 持ち家の一室でサロンを営んでいる
- 物販用の商品がある、または材料をまとめ買いしている
- 創業融資を受けていて、決算書を次の融資に使う予定がある
- インボイスに登録するかどうか迷っている
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- ネイルサロンの確定申告は翌年3月15日まで。青色申告なら最大65万円の特別控除がある
- 予約サイトや決済の売上は手数料を引く前の金額で、施術をした日に計上し、手数料は支払手数料として記帳する
- 年末に残った材料や物販用の商品は、原則として在庫として数える
- 自宅サロンの家賃や光熱費は、面積や使用時間などの根拠を残して家事按分する
- 開業前の準備費用は開業費として経費にする年と金額を選べ、機材は金額に応じて経費にするタイミングが変わる
- 按分の割合や勘定科目は、使い方が変わらない限り毎年同じ基準で続け、売上が伸びたら消費税とインボイスを確認する
※本記事は2026年10月時点の情報です。個別の税務判断はご相談ください。
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