カフェの確定申告|経費・減価償却・開業費の注意点を税理士が解説
この記事を書いた人堀 真彰(税理士 / 公認会計士)

「お店で自分が飲んだコーヒーはどう扱う?」「数百万円かけた内装工事は、今年の経費にできる?」——カフェを開業して初めての確定申告では、ほかの業種にはない迷いどころがいくつも出てきます。
この記事は、カフェで仕事をしたときの飲食代の話ではなく、カフェを経営する個人事業主の方の確定申告についての解説です。経費と在庫の扱い、自家消費とまかない、開業費とコーヒーマシン・内装工事の減価償却、売上と消費税の管理まで、個人事業主の記帳と確定申告を担当している税理士が、国税庁の資料をもとに解説します。読み終えるころには、自分で処理できる部分と、専門家に確認したほうがよい部分を切り分けられるようになります。
カフェの確定申告の基本
個人でカフェを営んでいる方は、1月1日から12月31日までの1年間の売上と経費をまとめ、翌年の3月15日までに確定申告をします。提出するのは確定申告書と、青色申告なら青色申告決算書(白色申告なら収支内訳書)です。売上から経費を差し引いた「事業所得」に対して、所得税と住民税がかかり、国民健康保険料の計算にも使われます。
開業1年目の申告で決めた処理の仕方は、2年目以降もそのまま続いていきます。特にカフェは、内装や設備の減価償却が何年も続くため、最初の申告の処理が数年先の利益にまで影響します。
青色申告と特別控除
確定申告には「青色申告」と「白色申告」があります。青色申告は事前に税務署へ承認申請書を出す必要がありますが、利益から差し引ける特別控除があり、税金を抑える効果が大きくなります。
| 特別控除 | 主な条件 |
|---|---|
| 65万円 | 55万円の条件に加え、e-Taxで提出するか、優良な電子帳簿で保存する |
| 55万円 | 複式簿記で記帳し、決算書を添付して期限内に申告する |
| 10万円 | 上記の条件を満たさない青色申告 |
青色申告の承認申請書は、開業した日から2か月以内(1月1日〜15日に開業した場合はその年の3月15日まで)に提出します。開業届と一緒に出しておくと確実です。間に合わなかった年は白色申告になります。
カフェの経費になるもの・ならないもの
経費になるのは、お店の売上を得るために必要な支出です。カフェでよく出てくる費用と、帳簿をつけるときの勘定科目(費用の分類名)の例をまとめました。
| 費用の例 | 勘定科目の例 |
|---|---|
| コーヒー豆・牛乳・食材 | 仕入高 |
| テイクアウト容器・紙ナプキン | 消耗品費 |
| テナントの家賃・共益費 | 地代家賃 |
| アルバイトの給与 | 給料賃金 |
| 電気・ガス・水道 | 水道光熱費 |
| キャッシュレス決済の手数料 | 支払手数料 |
| グルメサイトの掲載料・SNS広告 | 広告宣伝費 |
| 店内BGMの配信サービス | 支払手数料(または雑費) |
| 制服・エプロン | 消耗品費 |
| 事業ごみの回収費 | 支払手数料(または雑費) |
勘定科目は、一般的な分類に沿って決めたうえで、同じ費用を毎年同じ科目に入れることが大切です。一方で、個人事業主であるオーナー自身の給料や生活費、所得税・住民税は経費になりません。
食材・コーヒー豆と年末の在庫
カフェは、豆や食材を仕入れて売る商売です。年末に残っている豆・牛乳・食材・焼き菓子の材料などは、原則として在庫(棚卸資産)として数え、その年の経費から外します。経費になるのは「その年に売った分」の仕入れだけだからです。
12月にコーヒー豆をまとめ買いした場合、買った金額をすべてその年の経費にすると、利益が実際より少なく計算されてしまいます。12月31日の営業終了後に在庫を数えて記録しておくことが、正しい申告に欠かせません。在庫の評価方法を税務署に届け出ていない場合は、原則として、最後に仕入れたときの単価に残っている数量をかけて計算します(最終仕入原価法)。
賞味期限切れの牛乳や売れ残ったケーキなどを廃棄した場合、特別な処理は必要ありません。捨てた分は年末の在庫に含まれないため、結果として経費(売上原価)に入ります。まとまった量を廃棄したときは、日付と内容を記録しておくと、仕入れに比べて売上が少ない理由を説明しやすくなります。
試作・まかない・自家消費
カフェならではの論点が、売り物の食材をお店のお客さま以外に使った場合の扱いです。使い道によって、処理が分かれます。
| 使い道 | 扱い |
|---|---|
| 新メニューの試作 | 仕入れとして経費 |
| 従業員のまかない | 経費(条件あり) |
| オーナーや家族の食事 | 売上に計上する |
大前提として、オーナー個人の日常の食費は経費になりません。そのうえで、オーナーや家族がお店の商品を食べたり持ち帰ったりした分は「自家消費」といい、販売したものとして売上に計上します。計上する金額は原則として通常の販売価格ですが、国税庁の通達では、仕入れた値段以上で、かつ通常の販売価格のおおむね70%以上の金額で帳簿に記載していれば、その金額で認めるとされています。この範囲で、販売価格の何割で計上するかといった基準を決め、毎年同じ方法で記録しておきましょう。自家消費は計上が漏れやすく、仕入れに比べて売上が不自然に少ないと、税務調査で説明を求められる原因になることがあります。
アルバイトなど従業員に出すまかないは経費になります。ただし、従業員が食事の価額の半分以上を負担し、かつお店の負担額が1か月あたり7,500円(税抜き)以下でないと、お店の負担分が従業員の給与として扱われ、源泉徴収が必要になります(国税庁No.2594 食事を支給したとき)。なお、オーナー自身の食事はまかないではなく、上の自家消費にあたります。
自宅カフェの家事按分
自宅の一部をカフェにしている場合、家賃や光熱費は生活とお店の両方に使っています。このような費用は、お店で使っている部分だけを経費にします。これを家事按分(かじあんぶん)といいます。
家賃は客席と厨房の床面積の割合で、電気・ガス・水道は面積や営業時間、厨房機器の使用量などから割合を決めるのが一般的です。カフェは厨房でガスや水を多く使うため、ほかの業種より光熱費の事業割合が高くなることもありますが、大切なのは割合の大きさではなく「なぜその割合なのか」を説明できることです。家事按分のルールと、ほかの業種の具体例はこちらの記事で解説しています。

淀川パートナーズでは、カフェの日々の記帳から、在庫や減価償却の判断を含めた確定申告まで、開業1年目からサポートしています。全国どこからでもオンラインでご相談いただけます。
開業費と設備・内装の減価償却
カフェは開業時に内装工事や厨房設備へ大きなお金をかけるため、開業1年目の申告では、その扱いで利益が大きく変わります。
開業費になる費用
お店を開くまでに、開業準備のために特別に払った費用は「開業費」になります。たとえば、オープン前の広告やチラシの印刷代、メニュー開発のための試作の材料費、物件探しや打ち合わせの交通費、営業許可の手数料などです。ただし、厨房設備や内装のように資産として残るものは開業費ではなく、次に説明する減価償却の対象です。また、テナントの保証金のうち退去時に返ってくる部分は、経費にも開業費にもなりません。
一方、礼金や、保証金のうち退去時に返ってこない部分(契約で差し引かれる償却分など)は、20万円未満ならその年に全額を経費にでき、20万円以上なら原則として5年に分けて経費にします。開業の年に家賃と一緒に全額を経費にしてしまう誤りが起きやすいので、賃貸借契約書で金額を確認しておきましょう。
開業費は、経費にする年と金額を自分で選べます(任意償却)。開業1年目が赤字なら経費にせず、利益が出てきた年に回すこともできます。開業前の領収書は捨てずに、何のために払ったかが分かる形で残しておきましょう。
コーヒーマシン・家具と40万円未満の特例
設備や備品は、1つあたりの金額によって経費にするタイミングが変わります。
| 1つあたりの金額 | 経費にするタイミング |
|---|---|
| 10万円未満 | 使い始めた年に全額 |
| 10万円以上20万円未満 | 3年間で3分の1ずつも選べる |
| 40万円未満(青色申告) | 年300万円まで使い始めた年に全額 |
| 上記以外 | 耐用年数に応じて分けて経費にする |
40万円未満の特例は、2026年4月1日以後に取得したものが対象です(それより前は30万円未満)。業務用のコーヒーマシンやグラインダー、製氷機は数十万円から百万円を超えるものまで幅があるため、どの区分に入るかで1年目の経費が大きく変わります。なお、年末に買って支払いを済ませていても、年内にお店で使い始めていなければ、その年の経費にはできません。消費税の免税事業者のうちは、この金額の判定を消費税込みの金額で行います。詳しくは国税庁のNo.2100 減価償却のあらましで確認できます。
内装工事と居抜きの造作譲渡料
借りた物件に施した内装工事は、工事をした年に全額を経費にすることはできず、減価償却します。何年で償却するかは工事の中身によって判断が分かれるため、カフェの申告で特に確認が必要なところです。工事の見積書や請求書は、内装・電気・給排水などの内訳が分かるものを保存しておきましょう。
居抜き物件で前の借主に払った造作譲渡料は、「造作一式」のまま1つの資産として償却するのではなく、引き継いだものを内装・厨房設備・テーブルや椅子などの資産の種類ごとに分けて減価償却します。種類によって耐用年数が違うためです。分けるときは、次の点に注意します。
- 少額かどうかは1台・1組ごとに判定:10万円未満などの判定は、機械なら1台ごと、家具なら1組ごとに行う。一式のままでは、少額の特例を使えるものも分からない
- 中古の設備は短い耐用年数を使える:残りの使用期間を見積もるのが難しい中古資産は、法定の耐用年数と経過年数から計算する短い年数(簡便法)を使える
- 内訳の資料を残す:契約書に「一式」としか書かれていない場合に備え、前の借主から設備の一覧や当時の購入資料をもらっておく
中古の設備の耐用年数や、一式の金額の分け方は計算が複雑なため、居抜き物件で開業した方は、最初の申告の前に確認しておくと安心です。開業資金の内訳や、居抜き物件の注意点はこちらの記事で解説しています。

カフェの売上管理と消費税
カフェは1回あたりの金額が小さい売上が毎日たくさん発生し、現金とキャッシュレスが混ざります。毎日の記録の積み重ねが、そのまま確定申告の正確さになります。
現金とキャッシュレスの売上記録
現金の売上は、毎日の営業終了後にレジを締め、レジの記録(日計表)と手元の現金を照らし合わせて記帳します。レジの現金から買い出しの代金や備品代を払うと、売上と現金が合わなくなる原因になります。支払いには事業用のカードを使うか、小口現金をレジとは別に分けて管理しましょう。
キャッシュレス決済の売上は、手数料が差し引かれて入金されます。売上は手数料を引く前の金額で計上し、手数料は支払手数料として別に記帳します。また、売上は入金された日ではなく、お客さまに提供した日の売上です。12月の売上が翌年1月に入金される分も、その年の売上に含め、年末時点では「売掛金」として記帳します。入金までの期間は決済サービスによって違うため、売上が伸びても手元の現金が足りなくなることがあります。日々の記帳で未入金の額を把握しておくと、資金繰りの見通しも立てやすくなります。
店内飲食とテイクアウトの税率
カフェの売上には、2つの消費税率が混ざります。客席で飲食してもらう「店内飲食」は外食として10%、持ち帰りの「テイクアウト」は飲食料品の販売として軽減税率の8%です。どちらにあたるかは、提供する時点でお客さまに店内か持ち帰りかを確認するなどの方法で判定します。デリバリーアプリなどによる出前・宅配も8%です。店頭でコーヒー豆を販売する場合は8%、マグカップなどのグッズは10%です。デリバリーアプリの売上は、キャッシュレス決済と同じく、手数料を引かれる前の金額で計上します。レジで店内とテイクアウトを分けて打つ設定にしておくと、税率ごとの売上を集計しやすくなります。
免税事業者とインボイス登録
個人で開業した場合、インボイス(適格請求書)の発行事業者に登録していなければ、原則として開業から2年間は消費税を納める必要はありません。3年目以降は、2年前の売上が1,000万円を超えているかで判断します(1年目の1〜6月の売上と給与の支払額がともに1,000万円を超えた場合は、2年目から納税します)。
インボイスに登録すると、売上の金額にかかわらず消費税の申告が必要になります。お客さまの多くが個人のカフェでは、登録しなくても影響が小さいことが多い一方、打ち合わせ利用のビジネス客や、法人からのケータリング・まとめ買いの注文が多いお店では、インボイスを求められることがあります。登録するかどうかは、お客さまの層と、納める消費税の額の両方を見て判断します。登録した場合も、納める額を軽くする特例(個人は令和8年分まで「2割特例」、令和9年分・令和10年分は「3割特例」)や「簡易課税」があり、どれが有利かは売上と仕入れの中身で変わります。
開業1年目に決めておくこと
ここまでの論点の多くは、開業1年目に決めた処理が翌年以降も続きます。最初の申告の前に、次のことを決めておきましょう。
- 事業用の口座とカード:生活用と分け、仕入れや経費の支払いを一本化する
- 会計ソフト:会計ソフトを使い、事業用の口座やカード、レジのデータを連携させて記帳の手間を減らす
- レジ締めと在庫の数え方:毎日のレジ締めと、12月31日の在庫の数え方をルールにする
- 自家消費の記録:オーナーや家族が食べた分を記録する方法を決める
- 内装・設備の資料:見積書・請求書・造作譲渡の契約書を保存し、耐用年数を決める
- 消費税の方針:インボイスに登録するか、どの計算方法を使うかを考えておく
また、テイクアウトの税率が変わる可能性もあります。2026年9月に閣議決定された改正案では、2027年(令和9年)4月から2年間、飲食料品の税率を1%に引き下げるとされています。店内飲食(外食)は10%のままで、テイクアウトが1%の対象になる案です。今後、法案が国会で成立した場合の内容ですが、成立すればレジの設定や価格表示の見直しが必要になります。最新の情報は国税庁の消費税率引下げ特設サイトで確認できます。
内装工事や設備の扱いは、一度決めると何年も続きます。日々の記帳はご自身でも対応できますが、次のようなケースは判断が分かれやすいため、最初の申告の前に税理士に確認しておくと安心です。
- 内装工事に大きな金額をかけた
- 居抜き物件で造作譲渡料を払った
- 従業員にまかないを出している
- インボイスに登録するかどうか迷っている
- 創業融資を受けていて、決算書を次の融資に使う予定がある
創業融資を受けた方にとっては、決算書が次の融資の審査資料になり、返済が始まってからの資金繰りの判断にも毎月の数字が欠かせません。確定申告は1年に1回の作業ではなく、毎月の記帳の積み重ねの結果です。日々の営業が忙しく、記帳や判断に手が回らない場合は、税理士の活用もご検討ください。淀川パートナーズでは、毎月の記帳から確定申告、融資後の資金繰りの確認までを続けて任せたい方を、税務顧問としてサポートしています。サービスの内容はこちらをご覧ください。
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- カフェの確定申告は翌年3月15日まで。青色申告なら最大65万円の特別控除がある
- 年末に残った豆や食材は在庫として数え、その年の経費から外す
- オーナーや家族が食べた分は自家消費として売上に計上する。従業員のまかないは条件を満たせば給与にならない
- 開業前の準備費用は開業費として、経費にする年と金額を選べる
- コーヒーマシンや家具は金額で経費にするタイミングが変わり、40万円未満の特例(青色申告・2026年4月以後の取得)もある
- 内装工事は減価償却し、居抜きの造作譲渡料は資産の種類ごとに分けて償却する。内訳の資料を残す
- 店内飲食は10%、テイクアウトは8%。レジで分けて集計する
※本記事は2026年10月時点の情報です。個別の税務判断はご相談ください。
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