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カフェの開業資金はいくら?内訳と創業融資の通し方を税理士が解説

この記事を書いた人堀 真彰(税理士 / 公認会計士)

カフェの開業資金はいくら?内訳と創業融資の通し方を税理士が解説

「小さなカフェを開きたいけれど、開業資金は全部でいくら必要なのか」「足りない分は融資で借りられるのか」——開業を考え始めると、まずここで手が止まります。

カフェの開業資金は、内装のない物件から作るか、前のお店の内装や設備が残る居抜き物件を使うかで、数百万円単位で変わります。この記事では、カフェの開業資金の内訳、自己資金と創業融資の組み方、審査で一番見られる売上計画の作り方を、創業融資の申込みを支援している税理士が、日本政策金融公庫の資料をもとに解説します。読み終えるころには、自分のカフェの資金計画を数字で説明できるようになります。

カフェの開業資金の内訳と目安

カフェの開業資金は、大きく物件取得費・内装工事費・設備費・運転資金の4つに分かれます。金額は立地、広さ、物件の状態、メニュー(ドリンク中心かフード中心か)で変わるため、「カフェならいくら」という決まった相場はありません。

15席のカフェの試算例

家賃15万円のテナントを、内装のないスケルトン物件から作る15席のカフェを例に、開業資金を試算すると次のようになります。説明のための仮の数字で、相場を示すものではありません。

費目試算額
物件取得費(保証金・礼金・仲介手数料など)120万円
内装工事費400万円
厨房設備・コーヒーマシン200万円
家具・食器・備品50万円
開業準備(広告・最初の仕入など)30万円
運転資金150万円
合計950万円

カフェで金額の幅が大きいのは、給排水やガスの工事と、業務用のコーヒーマシンです。物件の設備の状態や、選ぶ機種によって大きく変わるため、早めに見積りを取って確かめておきます。

見落としやすいのが運転資金です。開業してすぐに売上が安定するとは限らないため、家賃・人件費・仕入の支払いを数か月分まかなえるお金を、開業資金とは別に用意しておきます。この試算の150万円は、後で出てくる毎月の固定費(家賃・人件費・光熱費など42.2万円)の約3.5か月分です。内装や設備にお金をかけすぎて運転資金が残らない計画は、開業直後の資金繰りが苦しくなる原因になります。

公庫の調査で見る開業費用

日本政策金融公庫(以下、公庫)の2025年度新規開業実態調査によると、開業費用は平均975万円、中央値600万円です。ただし、この数字は飲食店に限らず全業種の平均です。カフェの資金計画は、平均と比べるよりも、自分が借りる物件の見積りから積み上げて作ります。

居抜き物件と自宅カフェの開業資金

開業資金を一番大きく左右するのは、内装工事費と設備費です。ここを抑える方法として、居抜き物件と自宅カフェがあります。

居抜き物件で抑えられる費用と注意点

居抜き物件は、前のお店の内装や厨房設備が残ったままの物件です。そのまま使える部分が多ければ、上の試算の内装工事費と設備費を大きく減らせます。一方で、次の点は契約の前に確認しておきます。

  • 造作譲渡料:残された内装・設備を引き継ぐ代金を、前の借主に支払う場合がある
  • 設備の状態:古い設備はすぐに故障し、修理や買い替えで結局お金がかかることがある
  • リースの設備:残っている設備がリース会社の持ち物で、引き継げない場合がある
  • レイアウト:前のお店の厨房や客席の配置が、カフェの動線に合わないことがある

融資を申し込むときは、引き継ぐ設備と新たに買う設備を分けて、それぞれの見積書をそろえておくと説明しやすくなります。前の借主から造作を買い取る場合は見積書が出ないため、造作譲渡の契約書や、引き継ぐ設備の一覧を求められることもあります。

自宅カフェの場合

自宅の一部をカフェにすれば、物件取得費や家賃はかかりません。ただし、飲食店の営業許可を受けるには、住居部分と区画された調理場など、保健所の施設基準を満たす必要があります。改装の前に、地域の保健所に相談しておきましょう。また、自宅の家賃や光熱費のうちお店で使う分は、使用割合に応じて経費にします(家事按分)。

カフェの創業融資と自己資金

カフェの開業で使える創業融資の代表的なものが、公庫の新規開業資金です。主な条件は次のとおりです。

項目内容
対象新たに事業を始める方、事業開始後おおむね7年以内の方
融資限度額7,200万円
返済期間(設備資金)20年以内(うち据置5年以内)
返済期間(運転資金)10年以内(うち据置5年以内)

限度額や返済期間は制度の上限です。実際にいくら・何年で借りられるかは、事業計画の内容をもとに審査で決まります。

自己資金の目安と資金計画の例

新規開業資金の条件に、自己資金の金額の要件はありません。それでも、自己資金は計画性を示す材料として見られます。上の調査では、融資を受けた方の自己資金は、平均で資金調達額の22.9%でした。

先ほどの試算(950万円)なら、たとえば自己資金250万円+公庫700万円という組み方になります。自己資金は約26%で、調査の平均に近い水準です。自己資金の貯め方や、親からの援助の扱いは、こちらの記事で解説しています。

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カフェの事業計画書と売上計画

融資の審査で一番詳しく見られるのは、売上の見込みです。カフェは客単価が低いため、売上の見込みが少し甘いだけで、返済できるかの見通しが大きく変わります。

公庫の記入例を読み替える

公庫は創業計画書の業種別の記入例を公開していますが、9業種の中にカフェ・喫茶店はありません。飲食店で参考になるのは洋風居酒屋の記入例です。

この記入例では、売上を「客単価×席数×回転数×営業日数」で計算し、しかも昼と夜、平日と週末に分けて積み上げています。原価率には「勤務時の経験から」という根拠を添えています。カフェなら、モーニング・ランチ・カフェタイム、平日・土日に分けて計算すると、根拠のある売上計画になります。

時間帯別の売上の試算

15席・週1日定休(平日18日・土日8日)のカフェで試算すると、次のようになります(仮の数字です)。

時間帯計算式月の売上
平日モーニング600円×15席×0.5回転×18日8.1万円
平日ランチ1,200円×15席×1.0回転×18日32.4万円
平日カフェタイム800円×15席×0.8回転×18日17.3万円
土日(通し)1,000円×15席×2.5回転×8日30.0万円
合計―87.8万円

回転数は、「満席になる時間帯がどのくらい続くか」を、勤めていたお店の実績や、出店予定地の人通りから見積もります。面談では、なぜその回転数なのかを聞かれると考えておきましょう。

返済と生活費まで残るかの確認

売上から経費を引いた利益で、借入の返済と、個人事業なら自分の生活費をまかなえるかを確認します。上の売上で、原価率35%(公庫の洋風居酒屋の記入例と同じ)、アルバイト1人、借入700万円を金利年2%・7年で返す、と仮に置いた場合です。

項目月額
売上87.8万円
原価(35%)30.7万円
家賃15.0万円
アルバイト人件費17.2万円
光熱費・消耗品・決済手数料・ごみ回収など10.0万円
支払利息1.2万円
利益13.7万円
借入の元金返済8.3万円
返済後に残るお金5.4万円

この表は、公庫の創業計画書の「事業の見通し」と同じ形で、内装や設備の減価償却費は入れていません(お金が出ていかない経費のため)。公庫の様式でも、所得税などの税金と借入の元金は、この利益から支払うものとされています。なお、税金は、利益から減価償却費などを差し引いた所得にかかります。

決済手数料やごみの回収費も、毎月かかる経費です。飲食店から出るごみは事業ごみとして扱われ、家庭ごみとして出せないため、回収業者への委託などが必要になります。実際の金額は、物件や業者の見積りで確かめてください。

月に約88万円売れても、返済後に残るのは5.4万円です。ここから所得税・住民税や国民健康保険料・国民年金も支払うため、この例のままでは生活費が足りず、申し込む前に計画を見直す必要があります。見直すときは、次の点を検討します。

  • 客単価・席数・営業時間:売上の前提そのものを見直す
  • 借入額と返済期間:設備資金と運転資金に分けて、返済期間を長めに組めないか相談する
  • 自己資金:開業までに積み増して、借入を減らす

カフェは利益が薄くなりやすいため、売上だけでなく「返済と生活費まで残るか」を計画の段階で確かめておくことが大切です。

飲食店の事業計画書の全体の作り方は、こちらの記事で解説しています。

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カフェの融資審査で見られる点

売上計画のほかに、審査では「この人が、この計画を実行できるか」が見られます。

飲食店での経験

公庫の創業計画書には「経営者の略歴等」の欄があり、勤務先の名前だけでなく、担当業務や役職、身につけた技能も書くよう求めています。カフェなら、ドリンクや調理の担当、店長として売上や仕入、アルバイトの管理をした経験などを具体的に書きます。経験が売上計画の根拠にもなるため、勤めていたお店の客数や客単価を覚えておくと説得力が増します。

飲食店での経験が短い場合でも、ほかの仕事で身につけた接客や管理の経験、開業前の準備(講座の受講、イベント出店など)で補えることがあります。面談でどう説明するかは、こちらの記事を参考にしてください。

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原価率と人件費の根拠

飲食業界では、食材費(Food)と人件費(Labor)を合わせたFLコストを売上の60%以内に収めるのがよく言われる目安です。公庫が示している基準ではありませんが、計画が無理のない範囲かを自分で確かめるのに使えます。上の試算では、原価30.7万円と人件費17.2万円で約55%です。

ただし、公庫の創業計画書では、個人事業の場合、事業主自身の分は人件費に含めません。一人で長時間お店に立つ計画だと、人件費が低く見えて数字上は余裕があるように見えます。自分が休めない前提の計画になっていないかも、あわせて確認しておきましょう。

開業後の資金繰りと税務の準備

融資はゴールではなく、カフェ経営のスタートです。返済が始まってからのほうが、お金の管理は難しくなります。

開業直後の赤字に備える

カフェは常連のお客さまがつくまでに時間がかかることが多く、開業から数か月は計画どおりの売上にならないこともあります。運転資金をどのくらい持つかに公庫の公式な目安はありませんが、実務では、家賃や人件費などの固定費の数か月分を手元に残しておくと安心です。個人事業の場合は、お店の運転資金とは別に、売上が安定するまでの自分の生活費も蓄えておきましょう。

開業後は、売上計画と実際の売上を毎月比べ、ずれが出たら早めにメニューや営業時間を見直します。計画と実績を毎月比べる習慣が、資金が尽きる前に手を打てるかどうかを分けます。この記録は、将来2回目の融資を申し込むときの材料にもなります。

開業時に決めておく税務

開業のときに決めておきたいお金と税務の準備は、主に次のとおりです。

  • 事業用の口座:生活用の口座と分ける。融資の入金や返済、日々の記帳も分かりやすくなる
  • 青色申告:開業届と一緒に青色申告承認申請書を出す。期限は原則として開業の日から2か月以内
  • 減価償却:内装工事や厨房設備は、原則として耐用年数に応じて数年に分けて経費にする。一定の要件を満たす青色申告者は、40万円未満の資産を年300万円までその年に一度に経費にできる特例もある(令和8年4月1日以後に取得したもの)
  • 消費税とインボイス:開業したばかりの個人は、原則として消費税の納税が免除される(免税事業者)。ただし、領収書を求めるビジネス客が多い立地では、インボイス登録をするかどうかが売上に影響することがある
  • 消費税の還付:設備投資が大きい年は、あえて課税事業者を選ぶと、支払った消費税が戻る場合がある。ただし、その後も数年は課税事業者が続くなどの制約があり、届出には期限があるため、開業前に試算する

開業した後の確定申告で迷いやすい、在庫や自家消費、開業費、内装工事の減価償却などは、こちらの記事で解説しています。

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まとめ

  • カフェの開業資金は、物件取得費・内装工事費・設備費・運転資金の4つで考える
  • 15席のカフェをスケルトン物件から作る試算では約950万円。居抜き物件なら内装・設備を大きく抑えられるが、造作譲渡料や設備の状態を確認する
  • 公庫の新規開業資金に自己資金の金額要件はないが、融資を受けた方の自己資金は平均で資金調達額の22.9%
  • 公庫にカフェの記入例はない。洋風居酒屋の記入例のように、時間帯別・曜日別に売上を積み上げる
  • 売上だけでなく、返済と生活費まで利益が残るかを計画の段階で確かめる
  • 開業後は計画と実績を毎月比べ、青色申告や減価償却など毎年の税務にも備える

これからカフェの開業資金を計画する方は、まず次の3つから始めてみてください。

  • 出店したいエリアの家賃を調べる:家賃が決まると、物件取得費と毎月の固定費の目安が出る
  • 自己資金を通帳で確かめる:今いくらあり、開業までにいくら貯められるかを把握する
  • 時間帯別の売上を試算する:この記事の表を使い、自分のお店の席数と客単価で計算してみる

※本記事は2026年10月時点の情報です。個別の税務判断はご相談ください。

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Written by

堀 真彰

税理士 / 公認会計士

堀 真彰Hori Masaaki

数字が苦手な方にも、専門用語に頼らずわかりやすくお伝えすることを大切にしています。事業計画書から日々の税務まで、一つひとつの課題に粘り強く向き合います。

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