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【物販・せどりの棚卸】年末在庫の数え方と売れ残りの処理を税理士が解説

この記事を書いた人小西 椋磨(税理士 / 公認会計士)

【物販・せどりの棚卸】年末在庫の数え方と売れ残りの処理を税理士が解説

仕入れにこれだけお金を使ったのに、なぜ利益が出て税金がかかるのか。物販を本業にしている方から、確定申告の時期によくいただく疑問です。その答えの多くは、年末の「棚卸(たなおろし)」にあります。

この記事では、年末にどこまでの在庫を数えるのか、在庫にいくらの金額を付けるのか、売れ残りや値下がりした商品を経費にできるのかを、eBay・Amazon・せどりの実務に沿って解説します。eBay・Amazonなど物販事業者の記帳と申告を担当している税理士・公認会計士がまとめました。読み終えるころには、12月31日に何を準備すればよいかがはっきりするはずです。

仕入れても売れ残った分は、今年の経費にならない

物販の利益の計算では、その年に仕入れた商品がすべて経費になるわけではありません。経費になるのは、売れた商品の仕入れ値(売上原価)です。

売上原価は次の式で計算します。

売上原価 = 年初の在庫 + その年の仕入れ − 年末の在庫

たとえば、年初の在庫がなく、1年間の仕入れが600万円、年末に150万円分の商品が残っていれば、その年の経費になる仕入れは450万円です。残った150万円は、翌年以降に売れたときの経費になります。

仕入れた商品が年末に残っていれば、その分は今年の経費ではなく「在庫」として翌年に繰り越します。

棚卸は青色申告の方だけの作業ではありません。白色申告でも売上原価を計算する以上、年末の在庫の把握が必要です。

棚卸をせずに年末在庫を0円として申告すると、その年は利益が実際より少ない申告になります。税務調査で指摘されれば、追加の税金に加えて加算税がかかることがあります。また、翌年は年初の在庫0円から計算が始まるため、その商品が売れた年に利益がまとめて出てしまいます。在庫を数えないことは節税にはならず、税金を払う年がずれて、申告の誤りが残るだけです。

在庫は、毎年12月31日時点で実際に数えるのが原則です(所得税基本通達47-25)。帳簿の数字だけでなく、実物やレポートで数量を確かめます。

年末に数える在庫は「手元の商品」だけではない

物販の方の記帳を見ていると、自宅にある商品は数えていても、手元にない在庫が漏れていることがあります。年末に数える対象は次のとおりです。

区分年末在庫に入れるかポイント
自宅・倉庫にある商品入れる実物を数えます
Amazon FBA倉庫にある商品入れるAmazonに預けていても自分の商品です
納品代行業者・外部倉庫に預けている商品入れる業者から年末時点の在庫リストをもらいます
仕入先が発送済みで、まだ届いていない商品入れる年内に仕入れとして計上したなら、在庫にも入れます(未着品)
12月31日までに売れたが、まだ発送していない商品入れる売上を発送日で計上している場合、発送前は在庫です
年内に発送して売上に計上した商品入れないその年の売上原価になります

年末在庫は「手元にあるか」ではなく、「12月31日時点で自分の商品として残っているか」で判断します。

eBayの売上は、当事務所では発送日(Shipped On Date)で計上しています。12月30日に売れて1月4日に発送した商品は、翌年の売上になり、12月31日時点では在庫です。売上の計上日と在庫の数え方は必ずセットで考えます。

eBay輸出物販の確定申告|消費税還付の受け方と売上・経費・為替の正しい処理を税理士が解説
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返品で戻ってくる途中の商品は、年内に返品・返金が決まっていて売上を取り消していれば在庫に戻します。年明けに検品してから返金を決める場合は、その年の売上のままとし、在庫には戻しません。

段ボールや緩衝材などの梱包資材は、毎年おおむね同じ量を買って普段から使っているなら、買った年の経費にできます(所得税基本通達37-30の3)。この場合は在庫として数えなくてかまいません。ただし、年末に大量にまとめ買いして使い切れないような場合は、未使用分を資産として扱う必要があります。

数量のデータはどこから取るか

Amazonは、セラーセントラルの「レポート」から「フルフィルメント」に進み、在庫元帳などの在庫関連レポートで12月31日時点の数量を確認します。画面の名前は変わることがあるので、年明けすぐに年末時点のレポートを保存しておくことをおすすめします。

eBayには、在庫の仕入れ値を管理する機能がありません。Seller Hubの出品中リストをダウンロードし、ご自身の仕入れ台帳と突き合わせて、商品ごとの仕入れ値を確認します。中古品を扱う場合は、仕入れの時点で商品ごとに管理番号を付けておくと、年末の突き合わせがかなり楽になります。

在庫の金額は「仕入れ値」で決まる

数量が決まったら、次は在庫に金額を付けます。これを「評価」といいます。

評価方法の届出をしていなければ、最終仕入原価法で評価します。最終仕入原価法とは、その年の最後に仕入れたときの単価に、年末の数量を掛けて在庫の金額を出す方法です。同じ商品を何度も仕入れている場合は、年末に近い時期の単価が使われます。評価方法を選んで届け出る場合は、開業した年の確定申告期限までに提出します(所得税法施行令100条)。

せどりやeBayの中古品のように一点物が多い場合は、同じ商品がほかにないため、結果として1点ずつ実際の仕入れ値で評価することになります。

中古品や一点物は、商品ごとの仕入れ値を記録していないと、年末に正しい在庫の金額を出せません。

仕入れ値には、商品の代金だけでなく、仕入れのときの送料や関税など、商品を買うためにかかった費用も含めます。

低価法(年末の時価が仕入れ値を下回っている商品を、時価で評価できる方法)を使えるのは、青色申告の方だけです。使うには届出が必要で、期限は上と同じく開業した年の確定申告期限です。開業後に評価方法を変える場合は、別に変更の承認申請が必要になります。相場の上下が大きい商品を扱っている方は、評価方法を選ぶ段階で一度ご相談いただくことをおすすめします。

売れ残り・値下がりした在庫を自分の判断で0円にしない

何か月も売れない商品を見ると、「もう価値はないから0円でいいのでは」と考えたくなりますよね。ただ、税金の計算では、自分の判断だけで在庫の評価を下げることはできません。

相場が下がった、仕入れすぎた、なかなか売れないというだけでは、評価は下げられません(所得税基本通達47-24)。評価を下げられるのは、次のような事情がある場合です(所得税法施行令104条)。

  • 季節商品が売れ残り、今後は通常の値段で売れないことが過去の実績などから明らかなとき
  • 型式や性能が大きく違う新製品が出て、通常の方法では売れなくなったとき
  • 破損、型崩れ、棚ざらし、品質の変化などで、通常の方法では売れなくなったとき

(国税庁:棚卸資産の取得価額の特例(所得税基本通達47-22〜47-24))

評価を下げる場合は、その理由を後から説明できる資料を残します。商品の状態がわかる写真、傷や不具合のメモ、相場の推移の記録などです。

評価を下げるなら、「なぜ通常の値段で売れないのか」を写真や記録で示せることが前提です。

在庫から外れるとき(売る・捨てる・自分で使う)

売れ残った商品は、安くても売って処分するのが一番わかりやすい方法です。売れれば売上が立ち、仕入れ値との差額がそのまま損として計算に反映されます。

捨てた場合は、廃棄損として経費になります。どの商品をいつ捨てたかの一覧、廃棄前の写真、処分業者に頼んだ場合はその領収書を残します。

仕入れた商品をご自身で使ったり、家族にあげたりした場合は、在庫から外す代わりに、その分を売上として計上します(自家消費。所得税法39条)。計上する金額は通常の販売価格が原則ですが、仕入れ値以上で、かつ通常の販売価格のおおむね70%以上の金額であれば認められています(所得税基本通達39-1・39-2)。

よくある間違い

間違いどうなるか
売れ残りを理由なく0円で評価する評価損が認められず、利益が少ない申告になります
FBA倉庫の在庫を数えていない年末在庫が少なくなり、経費が多すぎる計算になります
発送済みで届いていない仕入れ品が漏れている仕入れだけ経費になり、在庫が抜け落ちます
売れたが未発送の商品を在庫から外している売上と原価の計上の年がずれます
自分で使った商品を売上にしていない仕入れが経費のまま残り、売上の計上漏れになります

消費税の還付を受けている方は、在庫の扱いがもう一つある

輸出で消費税の還付を受けている課税事業者の方は、所得税と消費税で在庫の扱いが違う点に注意が必要です。

所得税では、売れ残った商品はその年の経費になりません。一方、消費税では、仕入れにかかった消費税は売れた年ではなく、仕入れた年に差し引きます。年末に売れ残っていても、仕入れた年の還付の計算に入ります。

所得税では在庫は翌年の経費になりますが、消費税では在庫の分も仕入れた年の還付に入ります。

免税事業者から課税事業者に切り替わる年は、さらに一つ論点があります。原則課税(実際の仕入れの消費税を差し引く通常の計算方法)で申告する場合、課税事業者になる前日、個人であれば前年の12月31日に持っていた在庫のうち、免税事業者だった期間に仕入れたものの消費税も、切り替わった年の計算で差し引けます(消費税法36条)。この在庫の明細を作って保存しておくことが条件です。切り替わる前の年末の棚卸表は、所得税だけでなく消費税の還付にも使う大切な資料になります。

逆に、課税事業者から免税事業者に戻る場合は、最後の課税期間の年末に残っている在庫のうち、その年に仕入れたものの消費税を差し引けなくなります。簡易課税や2割特例で申告している場合は、どちらの調整も関係ありません。

(国税庁:タックスアンサーNo.6491 免税事業者が課税事業者となった場合等の棚卸資産に係る消費税額の調整)

【eBay輸出】消費税還付のよくある質問10選|実際の相談に税理士が回答
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年末の棚卸を、毎年の作業として仕組みにする

棚卸は12月31日に慌てて始めるより、12月の中旬から準備しておくほうが正確になります。在庫が自宅・FBA倉庫・外部倉庫・輸送中に分かれている物販では、ふだんの記録がそのまま申告の正確さにつながります。

棚卸は年に一度の作業ではなく、毎月の記帳と在庫の記録の延長として仕組みにしておくことが大切です。

12月の段取り

まず12月の中旬までに、仕入れ台帳を整えます。商品名、仕入日、仕入先、数量、仕入れ値、送料・関税などを記録し、販売済みのものに印を付けておきます。

12月31日になったら、自宅や倉庫の商品は実物を数え、FBA倉庫や外部倉庫の在庫はレポートやリストで数量を確定させます。輸送中の仕入れ品と、売れたがまだ発送していない商品もこのときに拾います。

数量が決まったら、商品ごとに仕入れ値を付けて棚卸表を作ります。評価を下げる商品があれば、理由と写真を一緒に保存しておきます。

仕訳の例

年末の在庫が150万円の場合、12月31日付けで次の仕訳を入れます。

(借方)商品 1,500,000円 /(貸方)期末商品棚卸高 1,500,000円

翌年の1月1日付けで、繰り越した在庫を年初の在庫に振り替えます。

(借方)期首商品棚卸高 1,500,000円 /(貸方)商品 1,500,000円

この2本の仕訳で、前の年の年末在庫が次の年の年初在庫としてつながります。

在庫が増えると「黒字なのに手元にお金がない」状態になる

物販は、事業が伸びるほど在庫が増える商売です。仕入れの代金は先に出ていきますが、売れ残った分は経費にならないため、帳簿上の利益と手元のお金がずれていきます。その結果、翌年の所得税・住民税・国民健康保険料を支払う時期に、資金が足りなくなることがあります。

年末の在庫の金額は、法人化を考えるタイミングや、仕入れ資金の借り入れを検討するときの判断材料にもなります。

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当事務所では、物販の方の記帳を毎月お預かりし、在庫と資金の動きを確認しながら、年末の棚卸、確定申告、翌年の税金の見込みまで続けてご支援しております。毎年の棚卸と記帳をまとめて任せたい方は、記帳代行のご案内もご覧ください。

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Written by

小西 椋磨

税理士 / 公認会計士

小西 椋磨Konishi Ryoma

「数字で経営の現状を可視化し、判断材料を増やす」ことが私の役割です。創業期の融資から日々の税務まで、実務の現場を止めない体制を整えます。

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