【eBay輸出】法人化のタイミングは?消費税還付で損しない判断基準を税理士が解説
この記事を書いた人小西 椋磨(税理士 / 公認会計士)

「eBayの売上が月1万ドルを超えそう。そろそろ法人にしたほうがいいですか?」
eBay輸出の法人化について、最近こうしたご相談が増えています。ただ、売上の数字だけで法人化を決めると、社会保険料や消費税の還付で思わぬ損をすることがあります。
この記事では、法人化で手元のお金が増えやすい人・増えにくい人の違いと、eBay輸出ならではの消費税還付・古物商許可の落とし穴を、eBay・Amazonなど物販事業者の記帳と申告を担当している税理士・公認会計士がまとめました。自分がいま法人化を考えるべき段階かどうかを判断する材料として、お役立てください。
売上が伸びた=法人化、ではありません
売上が伸びてくると、「法人にしたほうが税金が安くなるのでは」と考えるのは自然なことです。ただ、判断の材料にすべきなのは売上ではなく、利益と手元に残るお金です。
たとえば月商1万ドル(1ドル150円で年約1,800万円)でも、eBay輸出の利益率が15〜25%なら、利益は年270〜450万円ほどです。この段階で法人にすると、社会保険料などの負担が増え、手元に残るお金がかえって減ることがあります。
eBay輸出は、売上が大きく見えても、仕入れ、国際送料、eBayの手数料、Payoneerの手数料、広告費、返品対応で利益が薄くなりやすい商売です。
eBay輸出の法人化は、売上の大きさではなく、利益と手元に残るお金で考えるのが基本です。
eBay輸出の確定申告や消費税還付の基本は、こちらの記事で解説しています。

法人化で変わるのは、税金よりも「お金の流れ」です
個人事業主のままなら、事業の利益に所得税・住民税・個人事業税がかかります。法人化すると、会社の利益には法人税などがかかり、社長が受け取る役員報酬には給与として所得税・住民税がかかります。
| 項目 | 個人事業主 | 法人化後 |
|---|---|---|
| 税金のかかり方 | 事業の利益に所得税・住民税・個人事業税 | 会社の利益に法人税など、役員報酬に所得税・住民税 |
| 社会保険 | 国民健康保険・国民年金 | 社長一人の会社でも健康保険・厚生年金への加入が原則必要 |
| お金の扱い | 事業の利益をそのまま生活費に使える | 会社のお金は社長個人が自由に使えない |
| 社長の取り分 | 利益そのもの | 役員報酬(原則として1年間、毎月同じ額) |
特に誤解が多いのが、会社のお金の扱いです。法人化後、会社の預金は会社のものです。社長個人が使うには、役員報酬や配当として受け取る必要があり、そのたびに税金がかかります。会社のお金を生活費に使うと、会社が社長にお金を貸している扱い(役員貸付金)になり、金融機関の評価が下がります。
役員報酬は、原則として事業年度の途中で変えられません(定期同額給与)。為替や販売状況で利益がぶれやすいeBay輸出では、報酬を高くしすぎると会社にお金が残らず、低くしすぎると社長の生活費が足りなくなります。
ここで大事なのは、利益をほぼ全額、役員報酬として受け取る使い方では、法人化しても負担は減りにくく、かえって増えることも多いという点です。役員報酬には健康保険・厚生年金の保険料が会社と本人の両方にかかり、その合計は報酬の3割近くになるためです。
法人化で手元のお金が増えやすいのは、利益の一部を生活費に使わず、在庫や事業の拡大に回している人です。
「在庫を増やして伸ばしている時期か」が一番の判断材料です
eBay輸出は、先に仕入れて、売れてからお金が戻ってくる商売です。売上を伸ばそうとするほど在庫が増え、利益の多くが現金ではなく在庫として眠ります。
そのため、伸びている時期のeBay輸出では、「帳簿上は利益が出ているのに、手元にお金がない」という状態が起こりがちです。個人事業のままだと、在庫に回っている利益にも所得税・住民税がかかります。利益が大きくなるほど税率も上がるため、その納税が次の仕入れの資金を圧迫します。消費税の還付やPayoneerからの入金にも時間差があるため、資金繰りはさらに苦しくなります。売上は伸びているのに、毎月の仕入れの支払いに追われている、という方は少なくありません。
法人であれば、生活に必要な分は役員報酬として受け取り、残りは会社の利益として法人税などを払ったうえで仕入れに回せます。個人の所得税は利益が増えるほど税率が上がりますが、会社の税率は上がり方がゆるやかです。そのため、利益が大きくなるほど納税で出ていくお金を抑えやすく、次の仕入れに回せるお金が多く残ります。
在庫を増やして事業を伸ばしている時期ほど、法人化で仕入れに回せるお金が増えやすくなります。
反対に、次のような方は、利益がある程度出ていても法人化のメリットが小さくなりがちです。
- 注文が入ってから仕入れる無在庫販売が中心で、在庫にお金が寝ない
- 売上が横ばいで、利益のほとんどを生活費に使っている
- 社長個人の生活費が多く必要で、役員報酬を高く設定せざるを得ない
在庫や資金繰り以外にも、次のような事情は法人化を前向きに考える材料になります。
- 融資を受けて仕入れの規模を広げたい
- 外注スタッフや従業員を雇う予定がある
- 海外メーカーや国内の卸など、法人との取引を広げたい
- 将来の退職金を会社で準備したい(退職金は税金がかなり軽くなるため、会社に残したお金を個人に移す有利な方法です)
eBay輸出の法人化は、消費税・古物商・名義の段取りで差がつきます
eBay輸出の法人化では、一般的な法人化の話だけでは足りません。消費税の還付、古物商許可、eBay・Payoneerの名義、在庫の引き継ぎが絡むため、会社を設立する前の段取りが大切です。
eBay輸出で法人化するなら、設立日より前に、消費税・古物商許可・アカウント名義・在庫の引き継ぎの段取りを決めておくことが大切です。
新しい会社の「消費税2年免税」は、輸出業者には落とし穴です
資本金1,000万円未満で設立した会社は、原則として最初の2年間、消費税の免税事業者(消費税を納めなくてよい事業者)になります。法人化のメリットとしてよく紹介される点ですが、輸出業者には当てはまりません。
免税事業者は、消費税を納めない代わりに、仕入れや経費で支払った消費税の還付も受けられません。輸出の売上には消費税がかからない一方、国内の仕入れには消費税が含まれています。この差額を還付してもらうには、会社として課税事業者になる必要があります。
注意したいのは、個人事業主のときに提出した「消費税課税事業者選択届出書」(あえて課税事業者になるための届出)や、インボイス発行事業者の登録は、会社には引き継がれないことです。会社を設立したら、会社として改めて手続きをします。課税事業者選択届出書の場合、設立した事業年度の末日までに提出すれば、初年度から課税事業者になれます。なお、一度選ぶと原則として2年間はやめられません。
手続きの詳細は、国税庁の消費税課税事業者選択届出手続のページで確認できます。届出と事業開始日の考え方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

また、簡易課税制度(売上から概算で消費税を計算する制度)は、輸出の還付には向きません。実際に支払った消費税をもとに計算しないためです。還付を早く受けたい場合は、課税期間を1か月や3か月に短くする方法もあります。会社の初年度から短くしたい場合も、設立した期間中に専用の届出(消費税課税期間特例選択届出書)が必要になるため、課税事業者の手続きとあわせて確認しておくと安心です。

古物商許可は、会社の名前で取り直しが必要です
中古品を仕入れてeBayで販売している場合、古物商許可(中古品を仕事として売買するための許可)が必要です。
個人で取得した古物商許可は、会社には引き継げません。会社として中古品を仕入れるには、会社の名前で許可を取り直します。会社の許可は登記が終わってからでないと申請できず、審査には土日祝日を除いて40日ほど(暦日でおよそ2か月)かかるのが一般的です。
つまり、会社を設立してから許可が出るまでの間は、会社として中古品を仕入れることができません。この間は個人事業での販売を続け、許可が出てから会社に切り替えるなど、空白期間を見込んだスケジュールが必要です。
古物商の仕入れと消費税の関係は、こちらの記事で解説しています。

eBay・Payoneer・銀行口座の名義変更で、入金が止まることがあります
法人化後は、eBay、Payoneer、銀行口座の名義を会社に切り替えます。このとき本人確認や会社の確認が入り、入金が一時的に止まることがあります。
また、会社の銀行口座の開設には時間がかかるため、切り替えの前後には、会社の売上が個人の口座に入る、といった名義のずれがどうしても起こります。この期間の入出金を、どちらの売上・経費なのか区別して記帳しておかないと、消費税の還付や法人税の申告で説明が難しくなります。切り替える日を決め、その前後の取引を分けて記録しておくことが大切です。
在庫の引き継ぎは、個人から会社への売却として処理します
個人で持っている在庫を会社で販売する場合は、個人から会社へ在庫を売却したものとして処理します。個人が消費税の課税事業者であれば、この売却も消費税の対象になります。会社側で仕入れとして消費税を差し引けるか(仕入税額控除)は、個人がインボイス発行事業者に登録しているかどうかで変わります。
中古品の場合、会社の古物商許可が出る前に在庫を会社へ移して販売すると、許可なく古物を売買したことになりかねません。在庫を移すのは、会社の許可が出てからにします。
この処理を曖昧にすると、個人の最後の確定申告、会社の最初の決算、消費税の還付のすべてに影響します。
決算月を年末商戦に重ねない
決算月は自由に決められます。年末商戦で売上・発送・返品が集中する11月や12月を決算月にすると、棚卸しや決算の作業が繁忙期と重なります。繁忙期を避けて決めるほうが、実務上は扱いやすくなります。
法人化した後も、社長個人の確定申告が必要な年があります
法人化すると「会社の決算だけで終わる」と思われがちですが、社長個人の確定申告が必要になるケースがあります。
まず、法人化した年は、個人事業として最後の年の確定申告が必要です。会社設立までの個人事業の所得と、その年に会社から受け取った役員報酬を合わせて申告します。在庫の売却や、個人時代の売上の入金・経費の支払いが年をまたぐ場合の処理も確認が必要です。
次に、法人化した翌年以降も、役員報酬に加えてほかからも給与を受け取っている場合(給与が2か所以上)は、原則として社長個人の確定申告が必要です。たとえば、会社員を続けながら法人化した場合がこれに当たります。ただし、年末調整を受けていない方の給与と、給与・退職所得以外の所得の合計が20万円以下であれば、確定申告は不要です。
そのほか、給与の収入が2,000万円を超える場合や、個人名義の不動産収入などが残っている場合も、社長個人の確定申告が必要です。
法人化した後は、会社の決算と社長個人の確定申告を毎年あわせて見ることで、申告漏れや資金繰りのずれを防げます。
よくある失敗は「とりあえず法人化」と「会社の種類の選び違い」です
法人化で特に多い失敗は、必要がないのに「とりあえず法人化」してしまうケースです。会社を作ると、社会保険料、赤字でもかかる法人住民税の均等割(年7万円程度)、決算と申告の手間が毎年続きます。売上の数字だけで決めると、こうした負担に見合わないことがあります。
次に多いのが、合同会社で十分なのに株式会社を選ぶケースです。eBayでの販売が中心の一人社長であれば、合同会社で足りることがほとんどです。
| 項目 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 設立の実費 | 約6万円〜 | 約20万円〜(電子定款の場合) |
| 役員の任期 | なし | 最長10年。任期ごとに登記が必要 |
| 決算公告 | 不要 | 必要(官報に載せる場合は毎年数万円) |
| 向いているケース | eBayでの販売が中心の一人社長 | 海外メーカーとの直接取引、人の採用、出資の受け入れを予定 |
合同会社は英語ではLLCと表記されることが多く、海外でもなじみのある形です。eBayの買い手が会社の種類を気にすることはまずありません。
そのほか、次のような失敗もあります。
- 免税事業者のまま会社を設立し、消費税の還付を受けられなかった
- 古物商許可を会社の名前で取り直す前に、中古品を仕入れてしまった
- 役員報酬を高くしすぎて会社が赤字になった
- 役員報酬を低くしすぎて、会社のお金を生活費に使い、役員貸付金が膨らんだ
- 必要もないのに資本金を大きくした(資本金1,000万円以上だと設立時から消費税の免税がなくなり、1,000万円を超えると法人住民税の均等割も高くなります)
- 個人と会社の売上・入金・在庫が混ざった
法人化の失敗は、法人化そのものよりも、目的に合わない時期や会社の種類、役員報酬で進めてしまったときに起こります。
法人化がまだ早い人は、還付・記帳・在庫の管理を整える時期です
法人化はまだ早いと判断した場合でも、やるべきことはあります。むしろ個人事業主のうちに整えておくと、消費税の還付、将来の法人化、融資の審査のすべてで有利に働きます。
まずは、消費税還付のための届出と書類の保存です。eBayの注文データ、Tax Invoice、Payoneerの入金明細、仕入れの請求書、国際発送の控えを、取引ごとにつながる形で保存しておくことが大切です。
次に記帳です。eBay輸出では、売上、手数料、広告費、返金、為替差損益が混ざります。Seller HubやPayoneerのデータをもとに、発送日ベースの売上、入金、手数料、外貨の残高を分けて記録しておくと、利益が正確に見えるようになります。
そして在庫の管理です。商品ごとの仕入れ値、仕入日、販売日、期末の在庫を追える状態にしておくと、本当の利益率がわかります。この数字が見えて初めて、「在庫に回しているお金がどれだけあるか」=法人化を考えるべき段階かどうかを判断できます。
法人化がまだ早い段階でも、還付・記帳・在庫の管理を整えておくことが、法人化を判断する材料になり、そのまま融資の準備にもなります。
当事務所では、eBay輸出事業者の記帳代行、消費税の還付申告、法人化前後の試算を、完全オンラインで全国からお引き受けしております。法人化する場合は、会社の申告と社長個人の確定申告をまとめて担当いたします。
よくある質問
Q. 法人化すると、消費税の還付はどうなりますか?
A. 個人事業主のときに出した課税事業者選択届出書やインボイスの登録は、会社には引き継がれません。会社として改めて手続きをし、課税事業者になる必要があります。免税事業者のままでは還付を受けられないため、設立前に段取りを確認することをおすすめします。
Q. 合同会社だと、eBayや海外との取引で不利になりませんか?
A. eBayでの販売が中心の一人社長であれば、合同会社で不利になることはまずありません。海外メーカーとの直接取引や採用、出資の受け入れを予定している場合は、株式会社も検討の余地があります。
Q. 法人化した年も、個人の確定申告は必要ですか?
A. 必要です。会社設立までの個人事業の所得と、その年に受け取った役員報酬を合わせて申告します。翌年以降も、給与を2か所以上から受け取っている場合などは、社長個人の確定申告が必要になることがあります。
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