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【中古車販売】在庫車の決算処理|棚卸の金額・評価損・代車の減価償却を税理士が解説

この記事を書いた人堀 真彰(税理士 / 公認会計士)

【中古車販売】在庫車の決算処理|棚卸の金額・評価損・代車の減価償却を税理士が解説

はじめに

こんにちは、税理士法人淀川パートナーズの堀です。

「仕入れた車の代金は払った年の経費になる」「相場が下がった車は決算で値下げすればいい」——中古車販売の最初の決算で、そう考えてしまう方は少なくありません。

中古車は1台の金額が大きいので、在庫の処理を1台間違えるだけで利益が大きくずれます。この記事では、在庫車の金額の決め方、評価損、代車にした車の扱い、年末をまたぐ取引の線引きを、条文と国税庁の通達をもとに解説します。

売れ残った在庫車は今年の経費にならない

販売用に仕入れた車は棚卸資産(売るために持っている商品)です。経費になるのは売れた車の仕入金額だけで、年末に売れ残った車の仕入金額は翌年に繰り越します。

売上原価 = 年初の在庫 + その年の仕入れ − 年末の在庫

たとえば、開業1年目に10台を1,500万円で仕入れ、8台を1,600万円で売り、2台(仕入金額300万円)が売れ残った場合です。

正しい処理在庫に計上しなかった場合
売上原価1,200万円1,500万円
利益400万円100万円

※金額は仕組みを説明するための例です。

売れ残った2台を在庫に計上しないだけで、利益が300万円少なく計算されます。税務調査で指摘されれば、本来の税額に加えて、加算税や延滞税がかかることがあります。年末は、展示場の車だけでなく、整備工場に預けている車や陸送中の車も1台ずつ確認してください。

物販全般の年末の棚卸の進め方は、こちらの記事で解説しています。

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在庫車の金額には落札手数料・陸送費も含める

在庫として計上する金額(取得価額)は、購入の代価に、引取運賃・購入手数料など購入のためにかかった費用と、販売するために直接かかった費用を加えた金額です(法人税法施行令32条1項1号、所得税法施行令103条1項1号)。

オークションの落札手数料は購入手数料、会場からの陸送費は引取運賃にあたります。これらは毎月の経費にせず、原則としてその車の取得価額に含めます。売れ残った車なら、手数料や陸送費も一緒に翌年へ繰り越します。

一方、法人税の通達では、検収・手入れなどの費用は合計が購入代価のおおむね3%以内なら(法人税基本通達5-1-1)、登録のための費用は金額にかかわらず(同5-1-1の2)、取得価額に含めなくてよいとされています。

迷いやすいのが販売前の整備・板金代です。作業の内容と金額によって判断が分かれるので、どこまで車の金額に含めるかルールを決め、毎年同じように処理してください。

中古車の在庫は1台ずつの仕入金額で評価する|値下げ評価には低価法の届出が必要

年末の在庫の評価方法には、原価法(仕入金額で評価する方法)と低価法(仕入金額と年末の時価のうち低いほうで評価する方法)があります(法人税法施行令28条1項、所得税法施行令99条1項)。中古車は1台ずつ年式や状態、仕入金額が違うので、原価法のうち、1台ごとの実際の仕入金額で評価する個別法で考えるのが基本です(個別法の定義は法人税法施行令28条1項1号イ、所得税法施行令99条1項1号イ)。

法律上は、評価方法を届け出ていないと最終仕入原価法(種類・品質・型ごとに、年末にいちばん近い時期に仕入れたものの単価で評価する方法)になります(法人税法施行令31条、所得税法施行令102条)。1台ずつの評価を確実にしたいなら、個別法を届け出ておきましょう。

相場が下がった在庫車を値下げして評価したいなら、評価方法として低価法を選んでおく必要があります。個人事業主が低価法を選べるのは青色申告の承認を受けている場合だけです(所得税法施行令99条1項)。

評価方法の届出と、あとから変えるときの承認申請の期限は次のとおりです。

個人事業主法人
最初に届け出る期限開業した年分の確定申告期限設立した事業年度の確定申告書の提出期限
あとから変える(承認申請)期限新しい方法を使いたい年の3月15日新しい方法を使いたい事業年度が始まる日の前日
根拠所得税法施行令100条2項・101条2項法人税法施行令29条2項・30条2項

届出をしていない開業2年目以降の個人事業主は、令和8年分の決算で低価法を使うことはできません。変更の申請期限(2026年3月15日)が過ぎているためで、使えるのは令和9年分からです。今年開業した方は、令和8年分の確定申告期限までに届け出れば選べます。

相場が下がっただけでは評価損にできない

法人税の通達では、時価が物価変動や建値の変更などで下がっただけでは評価損を計上できないとされています(法人税基本通達9-1-6)。計上できるのは、災害による著しい損傷、著しい陳腐化、これらに準ずる特別の事実がある場合に限られます(法人税法施行令68条1項1号、所得税法施行令104条)。通達は、準ずる事実の例として破損・たなざらし・品質変化などで通常の方法では売れなくなった場合を挙げています(同9-1-5)。たとえば、破損して通常の価格では売れなくなった車などです。

「なかなか売れない」という理由だけで在庫の金額を下げても、税務上は評価損として認められない可能性が高いので注意が必要です。

値下がりを決算に反映させたいなら、前の章で見た低価法を選んでおく必要があります。低価法で評価する場合も、年末の時価の根拠(オークション相場など)は車ごとに残しておきましょう。

代車・試乗車にした車は減価償却資産になる

売るための在庫車は減価償却できませんが、代車や試乗車として継続して使う車は、在庫から固定資産(車両運搬具)に振り替えて減価償却します。国税庁の質疑応答事例でも、展示実演に常に使っている機械設備は減価償却資産とされています。分かれ目は「売るために置いているか、使うために置いているか」という実態です。

売れ残りを帳簿の上だけ代車にして減価償却で経費にしても、店頭で売り続けていれば税務調査で在庫と判断されるおそれがあります。

なお、中古資産の耐用年数の見積もりは事業に使い始めた年度にしかできません(耐用年数の適用等に関する取扱通達1-5-1)。在庫から振り替えた車の取得価額や耐用年数は判断が必要になるので、振り替える前にご相談ください。車の減価償却の基本は、こちらの記事でまとめています。

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年末をまたぐ車は「引き渡した日」で区切る

売上は、原則として商品を引き渡した日の属する年(事業年度)に計上します(法人は法人税法22条の2第1項)。12月に代金を受け取っても納車が1月なら、原則としてその車は年末の在庫に含め、代金は前受金にします。逆に12月に納車して入金が1月なら、12月の売上です。

12月に落札して陸送が年明けになる車も、仕入れだけ計上して在庫から漏れていないか確認が必要です。また、リサイクル預託金は消費税の扱いも車両代と違うので、車両の金額とは分けて管理しておきましょう。車両代と一緒に受け取るお金の消費税は、こちらの記事で解説しています。

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決算で慌てないために、在庫は毎月1台ずつ締めておく

落札手数料や陸送費を1台ごとに紐付けていなければ取得価額は出せず、振り替えた時期がわからなければ代車の減価償却も計算できません。決算で正しい数字が出せるかどうかは、毎月の記帳で決まります。在庫が増えると、利益は出ているのに手元のお金が足りない状態にもなりがちです。在庫資金の見積もり方は、こちらの記事で解説しています。

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まとめ

  • 年末に売れ残った車の仕入金額は、その年の経費にならず翌年に繰り越す
  • 在庫車の金額には、落札手数料や陸送費も原則として含める
  • 中古車の在庫は1台ずつの仕入金額で評価するのが基本。確実にしたいなら個別法を届け出ておく
  • 相場が下がっただけでは評価損は計上できない。値下げして評価するなら低価法(個人は青色申告者のみ)を選んでおく。個人が変えるには、使いたい年の3月15日までに承認申請が必要
  • 代車・試乗車として継続して使う車は減価償却資産。売れ残りを帳簿の上だけ代車にするのは通らない
  • 売上は原則として引き渡した日で計上し、納車前の車は年末の在庫に含める

※本記事は2026年10月時点の情報です。個別の税務判断はご相談ください。

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Written by

堀 真彰

税理士 / 公認会計士

堀 真彰Hori Masaaki

数字が苦手な方にも、専門用語に頼らずわかりやすくお伝えすることを大切にしています。事業計画書から日々の税務まで、一つひとつの課題に粘り強く向き合います。

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