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融資

中古車販売業の開業資金はいくら?在庫資金と創業融資の通し方を税理士が解説

中古車販売の開業資金
堀真彰

はじめに

こんにちは、税理士法人淀川パートナーズの堀です。

「店舗の家賃や工具ならわかるけれど、車の仕入れ代金って公庫は貸してくれるんでしょうか」——中古車販売で独立するとき、最初にぶつかるのがこの疑問ではないでしょうか。

結論からお伝えします。車の仕入れ代金は「運転資金」として融資の対象になります。借りられないわけではありません。ただし、設備資金にくらべて審査は慎重になりやすく、「何台仕入れるか」ではなく「その車が何日で売れるか」を説明できるかどうかで、出てくる金額が変わります。

この記事では、開業資金の内訳、古物商許可と展示場の準備、公庫が在庫の仕入資金をどう見るか、そして借りた後に必ず来る資金の谷までを、創業融資の支援をしている税理士の目線で整理します。中古車販売は、飲食店や美容室とは資金の性質がまったく違う商売です。そこを押さえないまま計画を出すと、金額が削られます。

中古車販売業の開業資金はいくら必要か|店舗型と無店舗型で分かれる

ネットで調べると「〇〇万円から」という相場がいくつも出てきますが、その数字をそのまま自分に当てはめても意味がありません。中古車販売の開業資金は、その大半が在庫だからです。店舗の広さや立地よりも、どんな車を何台持つかのほうが、必要額をはるかに大きく左右します。

相場を引くのではなく、項目を積み上げて考えましょう。

設備資金として必要なもの

項目内容
展示場・事務所の取得費保証金・敷金・礼金・仲介手数料。展示場は地代が安くても保証金がまとまって要る
外構・看板砂利敷き・アスファルト舗装・照明・のぼり・看板
事務所設備パソコン、複合機、応接セット、販売管理ソフト
整備・洗車まわり工具、高圧洗浄機、ポリッシャー(自社で仕上げる場合)

運転資金として必要なもの

項目内容
車両の仕入れ代金開業資金の中で最も大きくなりやすい。並べる台数×平均仕入単価
掲載媒体の費用カーセンサー、グーネットなどの掲載料。月額で継続的に出ていく
仕入れの付随費用落札手数料、陸送費、クリーニング、予備検査・整備
当面の固定費家賃、人件費、保険料、生活費

たとえば平均60万円の車を10台並べる展示場型なら、それだけで在庫に600万円が寝ます。ここに展示場の保証金と外構、掲載料と当面の固定費が乗ってくる、という構造です。同じ「中古車販売の開業」でも、在庫を持たない形で始めればこの600万円はまるごと不要になります。必要額を決めているのは店舗ではなく在庫だ、というのはそういう意味です。

在庫を持たない「注文販売」から始める選択肢

お客様から希望の車種を聞いてからオークションで探す注文販売であれば、在庫を抱えずに始められます。必要資金は展示場型よりはるかに小さく、開業のハードルは下がります。

1台あたりの利益についても、在庫を抱えない分だけ値下げ圧力や売れ残りの損切りがなく、**むしろ確保しやすい面があります。**ただし、仕入れ値に手数料を乗せるだけの落札代行に近い形になれば、当然その分は薄くなります。

注文販売の難しさは、利益率ではなく台数が読めないことです。店頭に車が並んでいないので、通りがかりのお客様を取り込めません。紹介や問い合わせがどれだけ入るかで、月の売上が上下します。どちらが良い悪いではなく、自分がどちらのモデルで戦うのかを決めてから資金計画を作ることが大切です。ここが曖昧なまま「とりあえず1,000万円」と申し込むと、根拠を問われたときに答えられません。

開業前に必要な手続きと費用|古物商許可・展示場・オートオークション

資金の話に入る前に、準備の順番を押さえておきましょう。ここでつまずくと、融資が下りているのに商売を始められない、という事態になります。

古物商許可は申請から概ね40日かかる

中古車を仕入れて売るには、古物営業法にもとづく古物商許可が必要です。申請先は主たる営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課保安係で、手数料は19,000円。大阪府警察の案内では、許可までの標準処理期間は申請から概ね40日以内とされています(大阪府警察「古物商許可申請」)。

見落としやすいのは、許可申請には営業所の所在地が必要になるという点です。つまり、物件を押さえてから申請し、そこから40日前後。物件の賃料はその間も発生します。開業日から逆算して、家賃だけが出ていく期間を運転資金に織り込んでおきましょう。

下取り車を廃車にするなら、もうひとつ登録が要る

古物商許可は「中古車を売買するため」の許可です。これとは別に、使用済自動車(廃車にする車)を引き取る場合には、自動車リサイクル法にもとづく引取業者の登録が必要になります。

引取業者とは、自動車の所有者から使用済自動車を引き取り、フロン類回収業者または解体業者に引き渡す事業者のことで、想定される業種として自動車販売・整備業者が挙げられています。登録先は都道府県知事等です。
(環境省「自動車リサイクル法の仕組み」)

下取りで引き取った車をすべて商品として再販するなら関係ありません。ただ、値のつかない車を引き取る場面は実際に出てきます。自分の商売でその場面があるかどうかは、開業前に確認しておきましょう。

展示場は「借りられる土地かどうか」を先に確認する

空き地であれば何でも展示場にできるわけではありません。市街化調整区域や農地では、そのまま事業用に使えないことがあります。貸主の使用承諾が取れるか、用途上の制限がないかは、契約前に確認が必要です。

物件・許可・融資はどの順番で進めるか

ここで順番の問題が出てきます。古物商許可を取るには営業所が要る。営業所を借りるにはお金が要る。そのお金は融資で用意したい。順番が一周してしまうのです。

この順番の組み立ては、物件の状況や貸主との関係、手元の資金によって変わります。決まった正解があるわけではありません。ただ、物件を決めてから慌てて動くより、先に資金の見通しを立てておくほうが選択肢は多く残ります。物件を仮押さえで待ってもらえるか、貸主とどれくらい交渉できるかも、早い段階で確認しておきましょう。

オートオークションの会員資格は独立直後の壁になりやすい

仕入れの主戦場はオートオークション(AA)ですが、会員になるための条件は会場ごとに異なります。古物商許可を取得してから一定期間の営業実績を求めるところ、屋根付きの営業所や保管場所を求めるところ、連帯保証人や保証金を求めるところなど、まちまちです。独立直後はこの条件を満たせないことがあるため、希望する会場の条件を早い段階で確認しておきましょう。

当面は落札代行を利用する、業者間の共有在庫ネットワークを使うといった方法もあります。一方で、知り合いの業者の会員資格を借りて参加するのは明確な規約違反です。発覚すれば、借りた側だけでなく貸した側も、会員資格の取消しをはじめとする重い処分を受けることになります。仕入ルートは融資審査でも必ず見られるところですから、正規の手段で確保してください。

公庫は在庫の仕入資金を貸してくれるのか|運転資金として見られる

本題です。日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方が対象で、使いみちは設備資金と運転資金。融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金は10年以内(いずれも据置期間は5年以内)です(日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」)。なお7,200万円は制度上の上限であって、創業時にこの金額が出るという意味ではありません。

車の仕入れ代金は、この運転資金にあたります。制度上、借りられない資金ではありません。

ただし実務上、運転資金は設備資金よりも説明を求められやすい資金です。設備資金は「その機械をいくらで買う」という見積書が根拠になりますが、運転資金は「なぜその金額が要るのか」を自分で説明しなければならないからです。

必要額そのものは在庫の大きさで決まりますが、「10台並べたいので600万円ください」という言い方は、根拠になりません。金融機関が見ているのは台数ではなく、その1台が何日で現金に戻るかです。同じ10台でも、平均60日で売れる店と90日かかる店とでは、1年間にその600万円が何回まわるかがまるで違うからです。

ですから創業計画書には、「月に何台売り、1台あたり平均いくらで仕入れ、在庫は平均何日で回るのか」を数字で書きます。前職での販売実績、すでに引き合いのある案件、注文販売の比率——根拠になるものは何でも使ってください。逆にここが空欄のまま希望額だけを書くと、減額されるか、設備資金だけの融資になりやすくなります。

そもそもいくら借りるべきかという考え方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

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借りた後に来る3つの資金の谷|在庫回転・入金のズレ・隠れコスト

ここからが、開業を扱う記事にあまり書かれていない部分です。融資が出た後、中古車販売には必ず3つの資金の谷が来ます。この3つを織り込んでいない資金計画は、通ったとしても後で苦しくなります。

在庫回転が30日延びるだけで、年間の粗利は大きく変わる

数字で見ていただくのが早いので、簡単な試算をお見せします。平均仕入60万円の車を10台、常時並べる店を想定します。在庫は600万円、1台あたりの粗利を15万円としましょう。

平均在庫日数年間の回転数年間販売台数年間粗利
60日約6回転60台900万円
90日約4回転40台600万円

在庫に寝かせているお金は同じ600万円、毎月の返済額も同じです。それでも、回転が30日延びるだけで、年間の粗利は300万円変わります。台数を増やさなくても、売れるまでの日数を縮めれば利益は増える。逆に、資金を追加して台数だけ増やしても、回転が落ちれば効果は打ち消されます。

なお、上の数字はあくまで考え方を示すためのモデル計算です。実際の単価も粗利も回転日数も、扱う車種や立地によって変わります。ご自身の数字で置き換えてみてください。

支払いは先、入金は後。利益が出ていても現金がなくなる

仕入れの支払いは、その車が売れるのを待ってはくれません。オークションで落札した時点で、代金の支払い義務は発生します。
一方、販売のほうは、お客様が「買います」と言った日に代金が入るわけではありません。整備を終え、登録を済ませ、納車が完了してはじめて代金を受け取れます。オートローンをお使いの場合も、信販会社から入金されるのは納車・登録が済んだ後です。商談から納車までに数週間かかることは珍しくなく、その間ずっと、その車の仕入代金は寝たままになります。

つまり、お金を払う日が先に来て、受け取る日が後に来るという構造です。決算書のうえでは利益が出ているのに、通帳の残高が減っていく。赤字でなくても資金は詰まります。この時間差だけでも、現金が足りなくなることは十分に起こりえます。

この時間差を埋めるためのお金も、運転資金として計画に含めておく必要があります。「在庫代だけ借りればいい」と考えると、ここで足が出ます。

仕入れは車両価格だけでは終わらない

1台の仕入れにかかるのは、落札価格だけではありません。落札手数料、陸送費、内外装のクリーニング、必要に応じた予備検査や整備費用が乗ってきます。

この積み上げを見ていないと、粗利15万円のつもりが実際には8万円だった、ということが起こります。粗利は「販売価格−落札価格」ではなく、「販売価格−その車にかかった総額」で考えてください。仕入台帳を1台ごとに作り、付随費用まで紐づけて管理しておくと、この誤差は防げます。

さらにこの業種は、仕入れのたびに消費税の判断も発生します。一般のお客様からの買取か、業者からの仕入れか、買った車を商品にするのか代車にするのかで、控除できるかどうかが変わるためです。詳しくはこちらの記事にまとめています。

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審査で見られる3点|仕入ルート・在庫回転の根拠・自己資金

ここまでの内容を、審査の観点から3つに整理します。

仕入ルートを確保できているか

売る車を継続して調達できるのかは、事業が成り立つかどうかの根本です。どのオークション会場を使うのか、会員資格の見込みはあるのか、代行や業販ルートを併用するのか。ここが曖昧だと、計画全体の信頼性が下がります。

在庫が回る根拠を示せるか

「月5台売ります」という数字そのものではなく、その数字を裏づける事実が見られます。前職で自分が何台売っていたかを書けるなら、それが一番強い材料です。

では、販売の実績を数字で出せない場合はどうするか。別の事実で埋めていきます。すでに「決まったら声をかけてほしい」と言われている見込み客のリスト。仕入先として当てにしているオークション会場や業販ルートの確保状況。注文販売を全体の何割に置くのかという方針。ひとつで足りなければ、複数を重ねて示してください。白紙の希望額と、事実を3つ添えた希望額とでは、返ってくる答えが変わります。

自己資金をどう準備してきたか

公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」の案内ページには、自己資金の要件は示されていません。制度上いくら必要と決まっているわけではない、ということです。

そのうえで、私たちが創業融資のご相談を受けるときは、必要資金の3分の1程度を自己資金の目安としてお伝えしています。これは制度上の要件ではなく、あくまで実務上の感覚です。3分の1に届かないから通らない、という話ではありませんが、少なければ少ないほど、計画の中身で説明を補う必要が出てきます。

そしてもうひとつ。見られているのは金額そのものよりも、どうやって貯めたかという中身です。毎月コツコツ積み立てた通帳は、計画性の証明になります。反対に、直前にまとまった金額が入金されている場合は、その出どころを必ず聞かれます。開業を決めた時点から、通帳の動きは記録として残しておいてください。

面談で実際にどんなことを聞かれるのかは、こちらの記事で具体的にまとめています。

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融資が出てからが本番です

創業融資は、通ればゴールという話ではありません。中古車販売はとくにそうです。借りたお金はそのまま在庫という形に変わり、その在庫が現金に戻ってくるまでの間も、返済日と支払日は等しくやって来ます。

しかも、判断が必要な場面が毎月あります。在庫が何日で回っているか。この1台を仕入れるべきか、値を下げてでも早く回すべきか。今回の買取は消費税を控除できるのか。これらは決算のときにまとめて考えられる種類のものではなく、その月ごとに数字を見ていないと手遅れになります。

私たちは大手監査法人の出身です。とはいえ、上場企業の決算をそのまま創業期の会社に持ち込むわけではありません。監査の仕事で身についたのは、数字を見て「おかしい」と気づく感覚と、その原因を突き止める手順です。在庫が月を追うごとに増えていないか、粗利率が落ちていないか、現金が減り始めていないか。創業直後の会社にお渡ししているのは、その目線です。

ご相談いただくタイミングについても、ひとつだけ。物件の契約書に判を押す前にご連絡いただくのが、いちばん打ち手が多く残っています。資金計画と物件の条件を突き合わせたうえで判断できますし、準備の順番も一緒に組み立てられます。すでに契約済みの場合でも、開業前であればできることは残っています。

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まとめ

必要な金額から考えるのではなく、「1台が何日で現金に戻るか」から資金計画を作りましょう。

  • 中古車販売の開業資金は大半が在庫。並べる台数と回転日数で必要額が決まる
  • 古物商許可は手数料19,000円、標準処理期間は申請から概ね40日以内。物件を押さえてからの申請になる
  • 下取り車を廃車として引き取るなら、古物商許可とは別に自動車リサイクル法の引取業者登録が要る
  • 車の仕入れ代金は公庫の運転資金として融資対象になる(新規開業・スタートアップ支援資金、限度額7,200万円、運転資金は10年以内)
  • 在庫資金の説明は台数ではなく在庫回転日数で行う。根拠がないと減額されやすい
  • 在庫回転が30日延びるだけで年間粗利は大きく変わる
  • 支払いが先で入金が後。この時間差を埋める資金も計画に含める
  • 粗利は落札価格ではなく、落札手数料・陸送費・整備費まで含めた総額で考える
  • 自己資金は必要資金の3分の1程度が実務上の目安。金額よりも、どう貯めたかを見られる

※本記事は2026年9月時点の情報です。個別の税務判断はご相談ください。

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堀 真彰
堀 真彰
税理士・公認会計士
大手監査法人で上場企業の監査に従事。 若手起業家を税務の面から支援したい考え、小西とともに弊社を設立。 税務申告の代行者だけではなく、経営のパートナーとして信頼される税理士を目指しています。
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