【2026年最新】軽貨物ドライバーの開業と確定申告|税理士が解説
この記事を書いた人堀 真彰(税理士 / 公認会計士)

はじめに
こんにちは、税理士法人淀川パートナーズの堀です。
「軽貨物で独立したけれど、車をどこまで経費にできるのかがわからない」
軽貨物ドライバーは、車が1台あれば始められる仕事です。そのぶん、開業してから「これは経費になるのか」「税金はいつ来るのか」を、走りながら調べることになりがちです。
特に間違えやすいのが車の減価償却です。ネット上には「軽自動車の耐用年数は4年」と書かれた記事がたくさんありますが、軽貨物ドライバーの車には、それとは別の区分が用意されています。ここを取り違えると、毎年の経費が実際より少なくなってしまいます。
この記事では、開業手続きから、2025年に新しく始まった安全管理者の義務、経費の考え方、車の落とし方、税金のスケジュール、インボイスまでを、税理士の実務目線で順番に整理します。
軽貨物ドライバーの開業手続き
軽貨物ドライバーの正式な事業名は「貨物軽自動車運送事業」といいます。トラック運送のような「許可」ではなく「届出」で始められるため、要件を満たしていれば比較的短期間でスタートできます。
運輸支局への経営届出書
最初に、営業所を置く地域を管轄する運輸支局へ届け出ます。近畿運輸局の案内では、次のものを持参するよう求められています。
- 貨物軽自動車運送事業経営届出書(提出用・控え用の計2部)
- 運賃料金表(提出用・控え用の計2部)
- 事業用自動車等連絡書
- 車検証(電子車検証の場合は、閲覧アプリで出力・印刷した「自動車検査証記録事項」)
運賃料金表は「いくらで運ぶか」を自分で決めて書く書類です。業務委託で単価が決まっている場合でも、事業者として提出する必要があります。
なお、届出書の控えは「事業をしていることの証明」になり、再発行ができません。紛失しないよう保管してください。融資や取引先との契約で提示を求められることがあります。
軽自動車検査協会での黒ナンバーの交付
運輸支局で受け取った事業用自動車等連絡書を持って軽自動車検査協会へ行き、車検証とナンバープレート(黒地に黄色文字の事業用ナンバー)の交付を受けます。
白ナンバーのまま有償で荷物を運ぶことはできません。ここは手続きの順番として避けて通れない部分です。
税務署への開業届と青色申告承認申請書
運輸支局の手続きとは別に、税務署への届出が必要です。
| 提出するもの | 提出期限(国税庁の案内) |
|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書 | 事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで |
| 所得税の青色申告承認申請書 | 原則その年の3月15日まで。ただし1月16日以後に新たに事業を開始した場合は、事業開始等の日から2か月以内 |
気をつけたいのは青色申告承認申請書の「2か月以内」です。ここを逃すと、その年は白色申告しか選べません。
青色申告にしておくと、最高65万円の青色申告特別控除(複式簿記での記帳と、e-Taxによる電子申告または電子帳簿保存が要件)、赤字を翌年以降に繰り越せる制度、そして後述する少額減価償却資産の特例が使えるようになります。軽貨物は車という大きな資産を持つ商売なので、青色申告のメリットが出やすい業種です。
開業届は2枚に分けず、青色申告承認申請書と一緒に出してしまうのが確実です。
なお、開業資金を日本政策金融公庫の創業融資でまかなう予定の方は、いくら借りるかを先に整理しておくと、見積書や計画書の準備がスムーズになります。借入額の決め方はこちらの記事で解説しています。

貨物軽自動車安全管理者の選任
ここは、少し前の記事には載っていない新しい話です。
令和6年5月15日に公布された法改正により、貨物軽自動車運送事業者に対する安全対策が強化されました。国土交通省は、事業者に対する規制の施行を令和7年(2025年)4月としています。
新しく義務づけられたのは、主に次の内容です。
- 貨物軽自動車安全管理者の選任(営業所ごと)と講習の受講、運輸支局等を通じた国土交通大臣への届出 ※バイク便事業者は除く
- 業務記録の作成・保存(毎日の業務開始・終了地点、距離等を1年間保存)
- 事故記録の作成・保存(3年間保存)
- 死傷者を生じた事故など、一定規模以上の事故の国土交通大臣への報告
- 特定運転者(事故惹起運転者・初任運転者・高齢運転者)への特別な指導および適性診断の受診
従業員を雇わず一人で走っている個人事業主も、この制度の対象です。
ただし、すでに事業を行っている既存の事業者には猶予期間が設けられています。国土交通省は、貨物軽自動車安全管理者の選任は施行後2年、特別な指導および適性診断は施行後3年としています。
業務記録と税務
業務記録には、毎日の業務の開始地点・終了地点と走行距離が含まれます。これは安全対策のための記録ですが、後で説明する「家事按分(かじあんぶん)」の根拠資料として、そのまま使えます。
義務だから仕方なくつける記録ではなく、経費を守るための資料でもある、と考えて記録しておくことをおすすめします。
軽貨物ドライバーの経費
まず、迷うことが少ないものから整理します。
| 勘定科目 | 軽貨物での具体例 |
|---|---|
| 車両費・燃料費 | ガソリン代、オイル交換、タイヤ、洗車、車検の整備費用 |
| 減価償却費・リース料 | 車両本体(購入の場合は減価償却/リースの場合はリース料) |
| 旅費交通費 | 高速道路料金、配達先のコインパーキング代 |
| 地代家賃 | 車庫・駐車場代 |
| 租税公課 | 自動車税種別割、自動車重量税、印紙代 |
| 損害保険料 | 自賠責保険、任意保険、貨物保険 |
| 消耗品費 | 台車、荷締めベルト、養生材、軍手、安全靴、カッター |
| 通信費 | 配達アプリを使うスマートフォンの通信料 |
| 諸会費 | 協同組合・団体の会費 |
プライベートと混ざる支出
軽貨物で実際に迷うのは、次のような支出です。
- 車をプライベートでも使っている場合:ガソリン代・保険料・減価償却費などを、事業で使った割合で按分します
- スマートフォン:仕事と私用が1台に同居しているなら、通話・通信の実態に応じて按分します
- 自宅の一部を事務所にしている場合:家賃・電気代を面積や使用時間で按分します
- 配達中の食事代:一人での食事は、原則として経費になりません
- 作業着・安全靴:業務専用であれば消耗品費として処理できますが、私服として着られるものは説明が難しくなります
按分でいちばん大事なのは「割合の数字」ではなく、「その割合をどう説明できるか」です。
「なんとなく事業8割」では、税務調査で説明ができません。軽貨物の場合は、走行距離という誰が見てもわかる客観的な数字があります。業務記録に残る事業用の走行距離と、車全体の走行距離の比で按分すれば、根拠のある数字になります。
経費にならないものと控除になるもの
経費に入れてしまいがちな支出のうち、次のものは扱いが違います。
- 駐車違反の反則金・交通反則金:必要経費になりません
- 所得税・住民税:必要経費になりません(自動車税や事業税とは扱いが異なります)
- 国民健康保険料・国民年金保険料:経費ではなく、社会保険料控除として所得から差し引きます
- 労災保険の特別加入保険料:経費ではなく、社会保険料控除の対象です(国税庁は社会保険料控除の対象として「労働者災害補償保険の特別加入者の規定により負担する保険料」を挙げています)
個人貨物運送業者は労災保険の特別加入の対象とされています。ケガをすれば収入が止まる仕事ですから、加入を検討する価値はあります。その際、団体に払う会費部分は経費、保険料部分は社会保険料控除と、分けて処理する点に注意してください。
同じように高額な事業用資産を持って個人で開業する業種として、遊漁船業にも共通する論点が多くあります。経費の線引きや資産の扱いについては、こちらもあわせてご覧ください。

車の減価償却と耐用年数
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。
運送事業用の小型車の耐用年数
国税庁の耐用年数表では、車両・運搬具が「一般用のもの」と「運送事業用・貸自動車業用・自動車教習所用のもの」に分かれています。
| 区分 | 細目 | 耐用年数 |
|---|---|---|
| 一般用のもの | 自動車(小型車:総排気量0.66リットル以下) | 4年 |
| 運送事業用・貸自動車業用・自動車教習所用のもの | 小型車(貨物自動車にあっては積載量2トン以下) | 3年 |
貨物軽自動車運送事業として使う軽バン・軽トラックは、「運送事業用」の区分に当てはまります。つまり、耐用年数は一般用の4年ではなく3年です。
4年で計算していた方は、毎年の減価償却費を実際より少なく見積もっていた可能性があります。
ただし、同じ軽バンでも運送事業以外の用途で使っている場合は「一般用」の4年になります。判断の分かれ目は車種ではなく「その車を何の事業に使っているか」です。
中古車の耐用年数
軽貨物は中古車で始める方が多い業種です。中古資産の耐用年数は、国税庁の示す「簡便法」で計算できます。
- 法定耐用年数の全部を経過している場合:法定耐用年数の20%に相当する年数
- 一部を経過している場合:(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%
- いずれも1年未満の端数は切り捨て、2年に満たない場合は2年とします
法定耐用年数が3年なので、実際に計算するとこうなります。
| 中古車の状態 | 計算 | 使う耐用年数 |
|---|---|---|
| 3年落ち以上(全部経過) | 3年 × 20% = 0.6年 → 2年未満 | 2年 |
| 2年落ち | (3−2) + 2×20% = 1.4年 → 2年未満 | 2年 |
| 1年落ち | (3−1) + 1×20% = 2.2年 → 端数切捨 | 2年 |
つまり、中古の軽バンを買って軽貨物に使う場合、多くのケースで耐用年数は2年になります。150万円の中古車なら、年あたり約75万円が減価償却費として経費になる計算です(定額法・年の途中の開業なら月割)。
2026年4月からの40万円未満の扱い
もうひとつ、開業する方に直接効いてくる改正があります。
青色申告をしている中小企業者等が使える「少額減価償却資産の特例」は、これまで取得価額30万円未満の資産が対象でした。令和8年度税制改正により、この基準が40万円未満に引き上げられ、適用期限も3年延長されています。
この引き上げは、2026年(令和8年)4月1日以後に取得した資産から適用されます。同じ年の中でも、3月に買ったものは30万円未満、4月以後に買ったものは40万円未満、と基準が変わる点に注意してください。
中古の軽バンは30万円台の車両が多いため、この10万円の引き上げがそのまま効いてくる業種です。
なお、この特例には年間合計300万円までという上限があり、青色申告であることが前提です。台車や高価な工具などもあわせて使える制度なので、上限の枠は意識しておいてください。
購入とリースの比較
「経費にしやすいのはどちらか」という質問をよくいただきます。整理すると次のようになります。
| 購入(中古) | リース | |
|---|---|---|
| 経費の入り方 | 減価償却費として2年程度で計上。40万円未満なら初年度に全額 | 毎月のリース料を支払った期間に応じて計上 |
| 初期の現金 | まとまった支出が先に出る | 初期支出を抑えられる |
| 総額 | 一般に安く収まりやすい | 金利・手数料相当が含まれる分、総額は増えやすい |
| 整備・車検 | 自分で手配する | プラン次第で含まれる場合がある |
原則としては、手元資金に余裕があるなら中古車を購入したほうが、経費化のスピードも総額も有利になりやすいといえます。耐用年数2年で一気に落とせるうえ、リースのように金利相当分を上乗せしないためです。
ただし、これは「利益が出ていて、経費を早く立てたい」ケースを前提とした話です。開業初年度で売上が読めない方や、手元の現金を運転資金に回したい方は、リースのほうが資金繰りは安定します。また、短期間で車を乗り換える予定がある方も結論が変わります。どちらが有利かは、その方の資金状況と利益の見込みによって逆転します。迷ったらご相談ください。
なお、開業前に買った車を事業用にする場合や、途中から事業に使い始めた場合の扱い、現金・ローン・カーリースで経費がどう変わるかは、個人事業主の車の経費をまとめた記事で詳しく解説しています。

2年目から払う4つの税金
軽貨物で独立した方から、開業2年目に「思っていたより手元に残らない」というご相談をいただくことがあります。原因はほとんどの場合、税金と保険料の時間差です。
| 支払うもの | 時期の目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 所得税 | 翌年3月15日まで(前年の税額によっては7月・11月に予定納税) | 確定申告で自分で計算して納める |
| 住民税 | 6月ごろに通知。年4回または一括 | 前年の所得をもとに計算される |
| 国民健康保険料 | 6月ごろに通知。分割で納付 | 同じく前年の所得がベース |
| 個人事業税 | 原則8月(第1期)・11月(第2期)の年2回 | 年税額1万円以下の場合は8月に全額 |
会社員をやめて独立した1年目は、住民税も国民健康保険料もまだ安い水準です。本番は2年目に来ます。
そして、独立直後の方がほぼ確実に知らないのが個人事業税です。大阪府の案内では、法定業種のうち運送業は第一種事業に該当し、税率は5%とされています。事業主控除は年間290万円で、所得がこの額以下であれば課税されません。
つまり、事業所得が290万円を超えたあたりから、翌年の8月に思いがけない納付書が届くことになります。
なお、軽貨物の業務委託ドライバーが個人事業税の対象になるかどうかは、原則としては運送業として第一種事業(5%)に当たると考えられますが、契約や業務の実態によって判断が分かれる場合があります。都道府県税事務所から確認の連絡や納付書が届いたときに、ご自身の契約内容と合わせて確認することをおすすめします。
インボイスと消費税
軽貨物は元請の運送会社やプラットフォームから仕事を受ける形が多いため、「インボイスの登録番号を出してほしい」と求められる場面がよくあります。
登録すれば消費税の納税義務が生じます。その負担を和らげてきたのが2割特例(売上にかかる消費税額の2割を納める措置)です。
国税庁は、2割特例を適用できる期間を「令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間」としています。個人事業者の課税期間は暦年(1月1日〜12月31日)ですから、令和8年9月30日が含まれるのは令和8年分の課税期間です。
つまり、暦年で申告する個人事業者にとっては、令和8年分(2026年分)の申告が2割特例を使える最後の年になります。
では令和9年分以降はどうなるのか。令和8年度税制改正では、個人事業者を対象に、令和9年分・令和10年分について売上にかかる消費税額の3割を納付税額とする「3割特例」を設けることとされています。今後の政省令や国税庁の取扱いで細かい点が示されますので、実際の申告にあたっては最新の情報をご確認ください。
また、軽貨物ドライバーが簡易課税制度を選ぶ場合、運送業は第五種事業(運輸通信業)でみなし仕入率は50%です。2割特例が終わった後にどの方法が有利になるかは、売上規模と経費構成によって変わります。
なお、簡易課税制度を選ぶ届出は適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに提出が必要です。「申告のときに考えよう」では間に合わないので、年内に方針を決めておく必要があります。
2割特例そのものの計算方法や、原則課税・簡易課税と比べたときの有利不利については、こちらの記事で詳しく解説しています。

まとめ
- 軽貨物は「貨物軽自動車運送事業」の届出+黒ナンバーの交付+税務署への届出の3ステップで始められる
- 青色申告承認申請書は開業から2か月以内。ここを逃すとその年は白色申告になる
- 2025年4月から貨物軽自動車安全管理者の選任などが義務化された。既存事業者には猶予期間があるが、一人で走っていても対象
- 業務記録の走行距離は、そのまま家事按分の根拠資料になる
- 運送事業用の軽貨物車の耐用年数は4年ではなく3年。中古なら簡便法で多くの場合2年になる
- 少額減価償却資産の特例は2026年4月1日以後の取得分から40万円未満に引き上げ(年間300万円まで・青色申告が前提)
- 2年目に住民税・国民健康保険料・個人事業税(運送業は5%、事業主控除290万円)がまとめて来る
- 2割特例は令和8年分(2026年分)が最後。その後の消費税の方針は年内に決めておきたい
※本記事は2026年9月時点の情報です。個別の税務判断はご相談ください。
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