【eBay輸出】消費税還付を受けられる「事業開始日」の考え方を税理士が解説

はじめに
こんにちは、大阪市淀川区の税理士法人淀川パートナーズ 税理士・公認会計士の小西です。
先日、eBayで輸出物販をされている方から、「今年から消費税の還付を受けたいけど、課税事業者選択届出書をまだ出していない」「開業届は2年前に出しているけど、これから課税事業者になるのでも間に合うのか」というご相談をいただきました。
実は、「開業届を出した日」と「消費税法上、事業を始めたとされる日」は別物なんです。この違いを知っているかどうかで、今年から消費税の還付を受けられるかどうかが変わってきます。今回のご相談をもとに、考え方と必要な手続きをお伝えします。
ご相談の内容
状況を簡単に整理すると、こんな感じでした。
- 開業届はすでに2年前に提出している
- ただし、実際にeBayのアカウントを開設し、本格的に物販を始めたのは今年から(アカウント開設の準備に時間がかかっていた)
- 去年は、知人に商品を渡して評価(フィードバック)をもらうための取引が何件かあった
- 「今年から課税事業者選択届出書を出して、1月の仕入れ分から消費税の還付を受けたいが、開業届を出してから2年も経っているのに、今からの届出で間に合うのか」
結論から言うと、本件のように実質的な事業開始が今年と考えられる場合には、今年中に届出書を提出することで、年初にさかのぼって課税事業者になれる可能性があります。なぜそう考えられるのか、順番にお話しします。
「開業届を出した日」と「事業を開始した日」は別物
実は、消費税の世界では「開業届を提出した日」がそのまま「事業を開始した日」として扱われるわけではないんです。これは知らない方が多いポイントだと思います。
開業届は、所得税法上の手続きとして「事業を始めます」と税務署に知らせるための書類です。一方で、消費税の課税事業者になるタイミングを判定するときの「事業を開始した日」は、開業届の提出日によって自動的に決まるものではなく、実際にどの時点から事業活動を行っていたかという実態で判断されます。仕入れの開始や出品準備、販売活動の状況などを踏まえて、総合的に見ていく必要があるということなんですね。
今回のケースで言うと、開業届は2年前に提出済みでした。ただ、前年にあった取引は知人との評価獲得目的の限定的なものにとどまり、本格的な仕入れや出品・販売活動は行われていなかったことから、実質的な事業開始は今年と考えられる可能性が高いケースでした。
ここで「輸出は消費税がかからないはずなのに、なぜ課税売上になるの?」と思われた方もいるかもしれません。eBayでの海外への販売(輸出取引)は、「輸出免税」という制度によって消費税率が0%になりますが、これは消費税がかからない取引というわけではなく、「課税資産の譲渡等」=課税売上に該当したうえで、税率が0%とされているだけなんです。だからこそ「売上にかかる消費税は0円、一方で仕入れにかかった消費税は還付される」という仕組みが成り立つわけです。消費税還付の仕組み自体については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

このように、実質的な事業活動の実態を踏まえると、消費税法上「事業を開始した課税期間」は今年と考えられる可能性があります。これが、これから手続きをしても間に合う可能性がある理由の土台です。
「開業届を出してから時間が経っているから、もう新規開業の取り扱いは使えないのでは」と思い込んでいる方は少なくありません。実態がともなっていなければ、開業届の提出日だけで判定が決まるわけではないので、その点はまず押さえておいていただきたいです。
「課税売上にあたるかどうか」は4つの要件で判断する
ここで重要になるのが、「そもそもどんな取引が消費税の課税対象(課税売上)になるのか」という基準です。国税庁は、消費税の課税対象となる取引について、次の要件を満たすものとしています。
- 国内において行うものであること
- 事業者が事業として行うものであること
- 対価を得て行われるものであること
- 資産の譲渡、資産の貸付けまたは役務の提供であること
このうち「事業者が事業として行うもの」について、国税庁は次のように説明しています。
「対価を得て行われる資産の譲渡、資産の貸付けおよび役務の提供を反復、継続、かつ、独立して行うことをいいます」
出典:国税庁タックスアンサー No.6109「事業者が事業として行うものとは」
ここがポイントで、たまたま1回だけ・偶発的に行った取引は、対価を得ていたとしても「事業として」行ったものとは扱われないんです。
去年の「評価をもらうための取引」は課税売上にあたるか
この基準に照らして考える必要があったのが、去年知人との間であった「商品を渡して評価(フィードバック)をもらう」取引の扱いです。
これが「事業として」行った取引(課税売上)にあたるなら、去年の時点ですでに課税売上が発生していたことになり、話がまったく変わってきます。ただ、今回のケースは、
- 「反復、継続、かつ、独立して」収益を得る目的で行った取引とは言えないこと
- eBayでの本格的な販売活動とは切り離された、ごく限定的なやり取りだったこと
といった実態があったので、「事業として」行った取引(課税売上)にはあたらないと判断しました。そうすると、去年の時点では事業として行った課税売上は発生しておらず、本格的な事業活動も始まっていなかったと考えられるため、実質的な事業開始は今年と整理できる可能性が高くなる、という話につながってくるわけです。
ただ、こうした「事業として行ったかどうか」の判断は、取引の頻度・目的・規模などを総合的に見て決まるものです。同じような取引でも、状況によって結論が変わることがありますので、迷ったときは自己判断せず、税理士に相談しながら整理することをおすすめします。
消費税還付を受けるために今年中の届出が重要な理由
消費税の還付を受けるには、まず「課税事業者」になる必要があります。売上が1,000万円を超えると自動的に課税事業者になりますが、それ未満の場合は「消費税課税事業者選択届出書」を提出することで、自分の意思で課税事業者になることができます。
この届出書の提出期限について、国税庁は届出書の様式に添付されている説明書きの中で、次のように案内しています。
「この届出書の効力は、提出した日の属する課税期間の翌課税期間から生じます。したがって、課税事業者となることを選択しようとする課税期間の初日の前日までにこの届出書を提出しなければならないことになります」
「なお、新規開業した事業者等は、その開業した課税期間の末日までにこの届出書を提出すれば、開業した日の属する課税期間から課税事業者を選択することができます」
これを表に整理すると、次のようになります。
| ケース | 提出期限 | 適用されるタイミング |
|---|---|---|
| 原則 | 適用を受けたい年の前年12月31日まで | 提出した年の翌年から |
| 新規開業した事業者等 | 開業した課税期間の末日(12月31日)まで | 開業した日の属する課税期間(その年)から=1月1日にさかのぼって適用 |
ここでのポイントは、「新規開業した事業者等」の取り扱いです。開業した年の年末までに届出書を提出すれば、原則のように翌年からではなく、その年の1月1日にさかのぼって課税事業者になれるんです。
今回のケースのように、実質的な事業開始が今年にあたると考えられる場合は、この取り扱いが使える可能性があります。今年の12月31日までに課税事業者選択届出書を提出すれば、今年の1月1日から課税事業者となり、1月以降の仕入れにかかった消費税も還付の対象になる、ということですね。
「もう今年も半分以上過ぎているから、今年からの還付は間に合わない」と諦めてしまう方もいますが、年内に届出書さえ提出できれば、年初にさかのぼって適用を受けられるケースがあります。ご自身の状況がこれに当てはまるかどうか、早めに確認しておくことをおすすめします。
もし去年すでに課税売上が発生していたら
ここで一つ、比較として知っておいていただきたいケースがあります。
もし去年の時点で、すでに「事業として」行った取引(課税売上)が発生し、かつ仕入れや販売活動も継続的に行われていたとしたらどうなるでしょうか。その場合、消費税法上の「事業を開始した課税期間」は去年と判断される可能性が高くなります。
新たに事業を開始した場合の取り扱いは、あくまで「事業を開始した課税期間」のうちに提出して初めて、その課税期間の初日にさかのぼれるというものです。すでにその課税期間(去年)が終わってしまっている以上、今から届出書を提出しても、今年の1月1日にさかのぼることはできません。原則どおり、届出書を提出した年の翌年からの適用となります。
ただ、この場合でも諦める必要はありません。インボイス(適格請求書発行事業者)の登録を行うという方法があります。免税事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合は、課税事業者選択届出書を別途提出しなくても、登録日から課税事業者として取り扱われる経過措置が設けられています。
「年初にさかのぼって還付を受けたい」のか、「すでに事業を開始した年が過ぎてしまっているので、登録日以降の還付を受けていく」のか。どちらに近いかによって、取るべき手続きが変わってきます。ご自身がどちらにあたりそうか、迷ったときはぜひご相談ください。
結局、何をいつまでに出せばいいのか
長くなったので、最後に整理しておきます。
まず確認すべきは、消費税法上の「事業を開始した年」がいつにあたるかです。これは開業届の提出日によって自動的に決まるものではなく、仕入れの開始や出品準備、販売活動の状況など、実際の事業活動の実態を踏まえて判断します。途中で出てきた「友達との評価目的の取引」のように、過去の取引が「事業として(反復、継続、かつ、独立して対価を得て)行った課税売上」にあたるかどうかも、頻度・目的・規模を踏まえて個別に見ていく必要があります。
その年がまだ終わっていない――つまり今年が事業を開始した年にあたるなら、年内に「課税事業者選択届出書」を提出してください。提出期限はその年の12月31日で、提出すれば1月1日にさかのぼって課税事業者になれます。
逆に、事業を開始した年がすでに過ぎてしまっている場合は、「インボイス発行事業者の登録」を検討することになります。さかのぼりはできませんが、登録日から課税事業者になれるので、これから先の還付には対応できます。
どちらの手続きも、タイミングを逃すと「1年分まるごと還付を受けられない」という事態になりかねません。とくに「事業を開始した年がいつにあたるか」の見立てを誤ると、せっかく届出書を出しても狙ったとおりに還付を受けられないことがあるので、ここは慎重に判断したいところです。
あわせて注意したい「青色申告承認申請書」の期限
ここでもう一つ、お伝えしておきたいことがあります。消費税の届出とは別に、青色申告承認申請書の期限にも注意が必要だという点です。青色申告の特典(65万円の控除など)を受けるには、原則として事業を開始した日から2か月以内に提出しなければなりません。
たとえば「初めて売上が立ったのが3月」だったとすると、その時点でもう2か月の期限を過ぎてしまっていることが多く、その年の青色申告は間に合わず、適用は翌年からになってしまいます。「消費税の届出は年内に出せば大丈夫」と思っていても、青色申告のほうは全く別のスケジュールで動いているので、あわせて確認しておいてください。
まずは無料相談へ
「開業届はもう出しているけど、課税事業者になるタイミングはこれで合っているのか」「自分の場合、どちらの届出を出せばいいのか分からない」という方は、一度ご相談いただければと思います。
事業を開始した時期の整理や、過去の取引が課税売上にあたるかどうかの判断は、状況によって結論が変わってくる難しい論点です。判断を誤ると、本来受けられるはずの還付を逃してしまうこともあります。
大阪市淀川区を拠点に、全国オンライン対応しています。有資格者(税理士・公認会計士)が直接担当しますので、安心してお任せください。
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