【海外在住】日本で会社を作り消費税還付を受ける手順|税理士が解説
この記事を書いた人小西 椋磨(税理士 / 公認会計士)

海外に住みながら、日本で仕入れた商品を海外のAmazonとeBayで販売している方から、「日本に住民票がない自分1人で会社を作り、その会社で消費税の還付を受けたい」というご相談をいただきました。
日本に住民票がない方でも、海外在住のまま代表者として日本で会社を設立できます。還付を受けるには、最初の事業年度のうちに「消費税課税事業者選択届出書」を税務署へ出す必要があります。登記の手続きとあわせて、会社名義の銀行口座と、日本で郵便を受け取る体制も準備します。
この記事では、設立の準備と、還付に必要な届出・書類を順に説明します。物販事業者の記帳と消費税還付の申告を担当している税理士・公認会計士が解説します。
読み終えるころには、設立前に何を用意し、設立後いつまでに何を税務署へ出せばよいかを、ご自身の予定に当てはめて決められます。
海外在住のまま日本で会社を作る手続き
代表者が全員海外在住の会社
以前は、代表取締役のうち1人以上は日本に住所が必要という取扱いでした。平成27年3月16日の法務省の通知(法務省民商第29号)で取扱いが変わり、現在は代表者の全員が海外に住んでいても、設立登記(会社の設立を法務局に登録する手続き)を申請できます。法務省の案内では、日本人である必要もありません。
日本に住民票がない方でも、海外在住のまま代表者として日本で会社を設立できます。
参考:法務省「外国人・海外居住者の方の商業・法人登記の手続について」
印鑑証明書の代わりになる署名証明書
日本に住民票がないと印鑑登録ができず、印鑑証明書を取得できません。その代わりに、お住まいの国の日本大使館・総領事館(在外公館)で署名証明(サイン証明)を取得します。
どの書類に署名証明が必要かは、登記を依頼する司法書士に確認してから取得します。外国語で作られた添付書類には日本語訳が必要です。
本店所在地と会社の銀行口座
設立の段取りには、会社名義の銀行口座の開設と、本店に届く郵便の受け取り体制も入れておきます。
税務署からの書類は本店に届きます。バーチャルオフィスや知人宅を本店にする場合は、誰がいつ郵便を確認し、海外へ知らせるかを決めておきます。
中古品を仕入れて売る場合は古物商許可(中古品の売買に必要な許可)が必要です。許可には日本国内の営業所と、営業所ごとの管理者が必要となるため、海外在住の代表者が管理者を務められるかは、営業所を管轄する警察署に確認します。
消費税の還付金は会社名義の口座で受け取る前提で準備します。
本店が日本にある会社なので、会社として納税管理人(日本に住所がない人の代わりに税務署とやりとりする人)を置く必要はありません(国税通則法117条)。代表者個人が日本で申告する場合の、個人の納税管理人とは別の話です。
新設法人の消費税と課税事業者選択届出書
会社が消費税を納める義務があるかどうかは、原則として2年前の事業年度(基準期間)の売上で決まります。設立した会社の1期目と2期目にはその年度がないため、設立時の資本金(出資金)が1,000万円未満であれば、原則として免税事業者(消費税の納税義務が免除される事業者)になります。
免税事業者のままでは、輸出の売上に消費税がかからない一方で、仕入で払った消費税も差し引けないため、還付を受けられません。還付を受けるには、消費税課税事業者選択届出書を税務署へ出し、課税事業者(消費税を申告・納税する事業者)になります。
1期目から還付を受けるには、最初の事業年度のうちに消費税課税事業者選択届出書を出します。
本来の提出期限は、適用を受けたい課税期間(消費税を計算する期間)の初日の前日です。ただし、設立した最初の事業年度から適用する場合は、その事業年度の末日までに出せば、1期目から課税事業者になれます(消費税法9条4項)。
たとえば4月1日に設立した3月決算の会社なら、翌年3月31日までに出せば1期目から課税事業者になります。出し忘れを防ぐため、設立後すぐに提出することをおすすめします。
選択すると、原則として2年間はやめられません。課税事業者選択不適用届出書(選択をやめるための書類)は、課税事業者となった課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ提出できません。
さらに、課税事業者になってから2年の間に始まる事業年度に、調整対象固定資産(1つ税抜100万円以上の固定資産)を買い、一般課税で申告した場合は、買った事業年度の初日から3年を経過する日の属する事業年度まで、免税事業者に戻れません。物販の在庫は対象外で、車や高額な機械を買う場合に関係します。
還付を年1回ではなく、3か月ごと・1か月ごとに受ける方法として、課税期間の短縮もあります。還付が早くなる一方で、申告の回数も年4回・年12回に増えます。

輸出の書類と消費税還付の申告
海外のFBA倉庫へ送る在庫も国際郵便の商品も、自社が輸出したことを示す書類がそろって初めて還付の計算に入ります。
海外のFBA倉庫へ送る在庫
自分の在庫を海外のAmazonのFBA倉庫(商品の保管や発送を委託する倉庫)へ送るのは販売ではありませんが、消費税法31条2項により輸出と同じように扱われ、その商品の仕入で払った消費税を差し引けます。そのため、輸出の書類を自社の取引として説明できる形で残します。
国内の転送業者や発送代行業者を使うと、輸出許可書(税関が輸出を許可したことを示す書類)の名義が業者になることがあります。その場合の書類の整え方は、国税庁の質疑応答事例と「消費税輸出免税不適用連絡一覧表」を含め、別の記事で解説しています。

国際郵便で送るeBayの商品
1つの郵便物の価額が20万円以下の場合、輸出許可書は出ません。小包やEMSで送るときは、日本郵便から受け取る引受けを証する書類と、発送伝票の控え(品名・数量・価額・受取人などが書かれたもの)を保存します。通常の郵便物で送るときは、引受けを証する書類に品名・数量・価額を書き足して保存します。帳簿に記録するだけでは足りません(消費税法施行規則5条、国税庁 タックスアンサーNo.6551 輸出取引の免税)。
20万円の判定は、原則として郵便物1個あたりの価額(販売した金額)で行います。同じ相手に2個以上に分けて送る場合は合計で判定します。クーリエなど発送方法ごとに残す書類は、別の記事で解説しています。

還付の申告と税務署の確認
会社の消費税の申告期限は、事業年度の終了後2か月以内です。
仕入の請求書・領収書(インボイス)や、Amazon・eBayの取引記録、手数料の明細を保存し、仕入と発送が対応する形で記帳します。海外から記帳する場合も、日本での仕入の書類は日本の会社の帳簿として保存します。
仕入先・発送の記録・入金の流れが帳簿から追えるようにしておくと、還付申告の内容について税務署から問い合わせがあったときにも説明できます。

当事務所では、海外在住の方の日本の会社について、設立時の税務署への届出から、毎月の記帳の確認、消費税還付の申告、税務署とのやりとりまで、有資格者が直接担当しております。海外からでも、メールとオンライン面談でご相談いただけます。
役員報酬と米国の税務
役員報酬(会社から役員に支払う報酬)はゼロにすることもできます。ほかに給与の支払がなければ、会社に給与の源泉徴収(支払うときに税金を差し引いて納める手続き)は生じません。
海外に住む役員へ報酬を払う場合は、会社が20.42%の所得税を源泉徴収して納めます。
日本の会社の役員としての報酬は、海外で仕事をしていても国内源泉所得(日本で生じた所得)として扱われます(海外で会社の使用人として常時勤務する場合などの例外を除きます)。会社は支払うときに20.42%の所得税を源泉徴収して納めます(所得税法161条1項12号イ・212条・213条)。
お住まいの国でも課税される場合の調整は、その国の申告で行います。また、米国などお住まいの国で、日本の会社を持つことに伴う申告が必要になる場合があります。
当事務所は日本の税務を担当いたします。お住まいの国の税務は、現地の税理士(米国ならCPAなど)に確認していただく形になります。
設立から最初の申告までの段取り
税務署への届出は設立後2〜3か月に集中するため、設立前に提出の段取りを決めておきます。
法人設立届出書は会社の設立を知らせる書類です。青色申告の承認申請書は、帳簿の記録・保存を前提に税金の優遇を受ける青色申告のために出します。
| 時期 | 手続き | 提出先・相手 |
|---|---|---|
| 設立前 | 署名証明の取得、本店の決定 | 在外公館・司法書士 |
| 設立日 | 設立登記 | 法務局(司法書士) |
| 設立後 | 会社名義の銀行口座の開設 | 金融機関 |
| 設立から2か月以内 | 法人設立届出書 | 税務署 |
| 自治体ごとの期限(東京都は事業開始から15日以内) | 法人設立の届出 | 都道府県・市町村 |
| 設立から3か月を経過する日と最初の事業年度の末日のうち早い日の前日まで | 青色申告の承認申請書 | 税務署 |
| 最初の事業年度中(できれば設立直後) | 消費税課税事業者選択届出書 | 税務署 |
| 事業年度の終了後2か月以内 | 法人税・消費税の申告(還付の申告) | 税務署 |
役員報酬を払う場合は、給与支払事務所等の開設届出書(給与を支払う事務所の開設を知らせる書類)も提出します。日本との時差があるため、設立日から逆算して、書類の準備を始める時期を決めておきます。
まとめ
- 日本に住民票がない方でも、海外在住のまま代表者として日本で会社を設立できます。
- 設立前に、会社の銀行口座と、本店に届く郵便を受け取る体制を準備します。
- 1期目から還付を受けるには、最初の事業年度中に消費税課税事業者選択届出書を提出します。
- 還付の申告に向けて、自社の輸出を示す書類と仕入の記録を保存します。
- 海外に住む役員に報酬を払う場合は、会社が20.42%の所得税を源泉徴収して納めます。
設立後も、毎月の記帳と輸出の書類の保存、毎年の決算と消費税還付の申告が続きます。2年後には課税事業者の選択を続けるかを、固定資産の購入による制限も踏まえて判断します。課税期間を短くするか、役員報酬を払うかどうかも、事業の状況に応じて決めていきます。
当事務所では、海外在住の方の日本の会社について、設立時の届出から毎年の決算・消費税還付の申告まで、オンラインでお手伝いしております。
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