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中古車販売業の消費税|古物商特例と売上の区分を税理士が解説

この記事を書いた人堀 真彰(税理士 / 公認会計士)

中古車販売業の消費税|古物商特例と売上の区分を税理士が解説

「2026年10月から消費税の控除が減ると聞いたけれど、うちの買取も負担が増えるの?」このようなご質問をいただくことがあります。

古物商特例の要件を満たす仕入れは、10月以降も100%控除できます。話題になっている「80%から70%へ」の縮小は、古物商特例を使える仕入れには関係がありません。

ただし、古物商許可があればどの車でも対象になるわけではありません。この記事では、改正と古物商特例の関係、車両代金と一緒に受け取るお金の消費税の区分、下取りと帳簿の注意点を、税理士の実務の立場から解説します。

中古車販売の消費税がややこしい理由

中古車店の消費税が分かりにくいのは、仕入れのルートが3つ混在しているからです。同じ車の仕入れでも、相手が誰かで消費税の扱いが変わります。

  • オートオークションでは、会場から交付される書類の記載を確認する
  • 一般のお客様からの買取では、相手のインボイス登録状況と買い取った車の用途を確認する
  • 販売時の下取りでは、販売代金の値引きとして処理していないかを確認する

このうち一般のお客様は、インボイス(正式には適格請求書。消費税の控除を受けるために必要な書類)を発行できない方がほとんどです。会社員の方などが乗っていた車を買い取るためです。

インボイスがないから控除できないと考えてしまうのが、よくある誤解です。中古車店には、古物商特例という別の仕組みがあります。

なお、オークション経由の仕入れの具体的な取扱いは会場ごとに異なりうるため、一律には判断せず、交付される書類の記載をご確認ください。

仕入れた車を国内で売らずに輸出する場合は、売上に消費税がかからず、仕入れで払った消費税が還付の対象になります。輸出の場合に押さえておきたい論点は、次の記事にまとめています。

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2026年10月からの経過措置70%と古物商特例の関係

まず、話題になっている改正から確認します。

インボイスを発行できない相手からの仕入れでも、一定割合について仕入税額控除(支払った消費税を差し引ける仕組み)を認める経過措置があります。この控除割合が、2026年9月30日までは80%、2026年(令和8年)10月1日以後は70%に縮小しました。

当初は令和8年10月から50%に引き下げられる予定でしたが、令和8年度税制改正で見直され、70%、50%、30%と段階的に下がって最後は0%になる形に変わりました。適用期限も2年延長されています。

一方、古物商特例はこの経過措置とはまったく別の制度です。古物営業法の許可を受けた古物商が、インボイス発行事業者以外の相手から、転売する商品として中古車を買い受ける場合には、一定事項を記載した帳簿を保存するだけで仕入税額控除ができます。

古物商特例を使える仕入れは、「80%から70%へ」の縮小の対象ではありません。要件を満たせば100%控除です。そのため、一般のお客様からの買取価格を10月以降に下げる必要はありません。

ただし、お店のすべての仕入れが改正と無関係というわけではありません。古物商特例が使えない仕入れには経過措置が適用されるため、仕入れごとに確認することが大切です。

また、令和8年度税制改正では経過措置に上限が新設されました。同一の相手方からの、インボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額(税込)が、その年または事業年度で1億円を超える場合、その超えた部分には経過措置を適用できません。仕入規模の大きいお店で該当しそうな場合は、早めにご相談ください。

買い取った車を代車・社用車にすると古物商特例は使えない

この点は、多くの解説記事で触れられていません。

古物商特例の対象は、その資産が棚卸資産(販売するために持っている商品。消耗品を除く)に該当する場合に限られます。条文上、明確にそう限定されています。

一般のお客様から買い取った車を自社の代車や社用車にした場合、その車は棚卸資産ではないため、古物商特例は使えません。同じ日に同じように買い取った車でも、商品として店頭に並べるか代車として使うかで結論が変わります。

確認すべきなのは古物商許可の有無だけでなく、その車を何に使うかです。

また、相手がインボイス発行事業者である場合も古物商特例の対象外で、通常どおりインボイスの交付を受ける必要があります。個人名義で乗っていた方が実は個人事業主としてインボイス登録をしていることもあるため、買取時に確認する仕組みを作っておくと安全です。

商品車と代車・社用車の区分があいまいになっているお店は少なくありません。用途の判断に迷った場合はご相談ください。

なお、買い取った車を代車や社用車として自社で使う場合は、消費税だけでなく減価償却や経費按分の扱いも変わります。車を事業で使うときの経費の考え方は、次の記事で詳しく解説しています。

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在庫の車を代車に回したときの決算での扱いや、年末に売れ残った在庫車の金額の決め方は、次の記事で解説しています。

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車両代金と一緒に受け取るお金のうち売上に含まれるもの

中古車の販売代金には、車両本体価格のほかに、税金や保険料、預託金など性質の違うお金が混ざります。実務で最も間違えやすいのがこの区分です。

税金や保険料という名前でも、消費税がかからないとは限りません。お金の性質と、本来誰が負担すべきものかによって扱いが分かれます。

車両代金と一緒に授受する金銭消費税の扱い
未経過分の自動車税相当額課税売上に含まれる(車両本体価格と区分して表示しても同じ)
未経過分の自賠責保険料相当額課税売上に含まれる(自動車税相当額と同じ)
リサイクル預託金相当額非課税(売主から買主への預託金の譲渡は金銭債権の譲渡にあたるため)
買主が本来納付すべき自動車重量税・登録免許税・手数料など登録免許税等として受け取ったことが明らかな場合は、課税資産の譲渡等の金額に含まれない(区分が不明確だと課税売上に含まれる)
名義変更をしなかったこと等により、本来買主が負担すべき自動車税が売主である事業者に課され、その相当額を買主から収受する場合資産の譲渡等の対価に該当しない

上の表は、国税庁の質疑応答事例「中古車販売における未経過自動車税等の取扱い」と、消費税法基本通達10-1-4・10-1-6に基づく整理です。

自動車税が課税売上になる理由を押さえておくと迷いません。自動車税は4月1日現在の所有者に課される道府県税です。買主が支払う未経過期間分は、都道府県に納める自動車税そのものではなく、その期間も続けて乗れる中古車の購入代金の一部として扱われます。そのため、明細を分けて書いても課税売上に含まれます。未経過分の自賠責保険料相当額も同じ考え方です。

一方、リサイクル預託金は、法律に基づいて資金管理法人に預けられているお金です。中古車として転売するときは、その預託金を売主から買主へ譲り渡すことになるため、金銭債権の譲渡として扱われます。

ここで注意したいのは、リサイクル預託金は「不課税」ではなく「非課税」という点です。会計ソフトでは、この2つが別の区分になっています。混同したまま入力しているお店は珍しくありません。原則課税の場合は課税売上割合(売上全体に占める課税売上の割合)に影響することがあるため、顧問税理士にご確認ください。

原則課税と簡易課税のどちらを選ぶべきか迷っている方も多くいらっしゃいます。中古車販売業は仕入金額が大きくなりやすく、この選択で納税額が大きく変わります。判断の基準は次の記事にまとめています。

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下取りは値引きではなく売上と仕入れの両建てで処理する

新しい車を販売するときに下取りがあると、お客様から実際に受け取る差額だけを売上に計上したくなるかもしれません。入金されるのは差額だけなので、自然な感覚です。

しかし売上の金額から下取り価額を差し引くことはできません。販売代金の総額を売上に計上し、下取りは別に課税仕入れとして計上します。売上と仕入れをそれぞれ計上するこの方法を両建てといいます。

下取りは仕入税額控除の対象になります。一般のお客様からの下取りでも、棚卸資産として転売する場合は古物商特例の対象になり得ます。販売と買取は別の取引として、分けて確認することが大切です。

古物商特例を使うときの帳簿の書き方

古物商特例はインボイスがなくても控除できる仕組みですが、インボイスが不要でも記録が不要なわけではありません。帳簿の保存が控除の条件です。

通常必要な帳簿の記載事項に加えて、次の2つを記載する必要があります。

  • 古物商特例に該当する旨
  • 課税仕入れの相手方の住所または所在地(国税庁長官が指定する者に係るものを除く)

見落とされやすいのが相手方の住所です。古物営業法に基づく古物台帳には記録しているのに、会計帳簿には書いていないケースがあります。要件を満たしていなければ、特例そのものが使えません。

買取書類と帳簿を照合し、記載漏れがないか確認しておくことをおすすめします。あわせて商品車・代車・社用車の用途を整理しておくと、税理士への相談もスムーズです。

古物商特例の帳簿の書き方や、仕入金額1万円を境に変わる実務上の判断は、次の記事で仕訳例つきで解説しています。中古車以外の古物を扱う場合にも共通する内容です。

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まとめ

まずは仕入れの区分と販売明細を、一件ずつ確認するところから始めることをおすすめします。

  • 経過措置による控除割合は、2026年10月1日から80%から70%に縮小した
  • 古物商特例は経過措置とは別制度で、要件を満たす仕入れは引き続き100%控除できる
  • 古物商特例の対象は棚卸資産に限られ、買い取った車を代車・社用車にすると対象外になる
  • 相手がインボイス発行事業者の場合も古物商特例の対象外で、通常どおりインボイスが必要
  • 未経過分の自動車税・自賠責保険料相当額は、区分表示しても課税売上に含まれる
  • リサイクル預託金相当額は非課税で、不課税と混同しないよう注意する
  • 下取りは値引きではなく、売上と課税仕入れを両建てで処理する
  • 帳簿には通常の記載事項に加え、特例に該当する旨と相手方の住所等を記載する

※本記事は2026年9月時点の情報です。個別の税務判断はご相談ください。

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Written by

堀 真彰

税理士 / 公認会計士

堀 真彰Hori Masaaki

数字が苦手な方にも、専門用語に頼らずわかりやすくお伝えすることを大切にしています。事業計画書から日々の税務まで、一つひとつの課題に粘り強く向き合います。

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