遊漁船業を始めるには?開業までにやること10選と順番を税理士が解説
この記事を書いた人堀 真彰(税理士 / 公認会計士)

「遊漁船業を始めたいけれど、資格・船・お金のどれから手を付ければいいのか分からない」——開業を考えている方が最初につまずくのは、手続きの中身よりも順番です。
この記事では、遊漁船業の開業までにやることを10個に分け、取りかかる順に並べました。特に、順番を間違えると後からさかのぼって直せない「お金と税金」の手続きを、遊漁船業の創業融資と確定申告を支援してきた税理士が解説します。
遊漁船業の開業までの流れ
遊漁船業(釣り客を船に乗せて漁場まで案内する事業)を始めるまでにやることは、次の10個です。
| 順 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 現場の経験を積む | 30日の実務研修でも要件を満たせる |
| 2 | 必要な資格を取る | 操縦免許・特定操縦免許・主任者講習 |
| 3 | 個人か会社かを決める | 後から変えると名義の手続きが増える |
| 4 | 係留場所を確保する | 泊められる大きさで船が決まる |
| 5 | 船を選び見積もりを取る | 中古か、誰から買うかで税金が変わる |
| 6 | 事業計画と資金計画を作る | 冬場の稼働と生活費まで入れる |
| 7 | 資金を調達する | 船の契約は融資の見通しが立ってから |
| 8 | 保険に入る | 定員1人あたり5,000万円以上 |
| 9 | 遊漁船業の登録をする | 都道府県知事の登録・5年ごとに更新 |
| 10 | 税務署への届出をする | 開業届・青色申告・消費税の判断 |
資格や登録は窓口が教えてくれますが、5・7・10のお金と税金の手続きには、後からさかのぼって直せないものがあります。税金の判断は船の契約前に必要になるため、船の目星がついた段階で一度ご相談いただくのが確実です。
遊漁船業の経験と資格の準備
現場での経験
遊漁船業では、遊漁船業務主任者(利用者の安全を管理する責任者)を選任する必要があります。主任者の要件の一つが、1年以上の実務経験か、主任者のもとでの30日以上(1日5時間以上)の実務研修です。研修の日数は2024年4月に10日から延長されたので、古い解説に注意してください。
以前、遊漁船業を始める方の資金調達をお手伝いした際、その方は漁師として1年半海に出たあと、既存の遊漁船で船長見習いを経験してから開業していました。この経験の積み方が、融資の審査で「この人なら事業を回せる」と説明する根拠になりました。
遊漁船業に必要な資格
- 小型船舶操縦士の免許:主任者になるには2級以上(または海技士(航海))が必要です
- 特定操縦免許:遊漁船の船長に必要です。2024年4月から講習が15時間以上になり、修了試験も加わりました。乗船履歴がないと、船長として航行できる範囲が平水区域(湾内などの穏やかな水域)に限られます
- 遊漁船業務主任者の講習:修了から5年を経過していないことが要件です
最新の要件は、水産庁の遊漁船業務主任者を養成するための講習の実施についてや、国土交通省の特定操縦免許制度についてで確認してください。
遊漁船の船選びと開業資金
個人で始めるか会社で始めるか
| 比べる点 | 個人 | 会社 |
|---|---|---|
| 始める手続き | 開業届など(登記不要) | 設立登記が必要 |
| 社会保険 | 国保・国民年金 | 社長1人でも加入 |
| 税金 | 利益が増えると税率が上がる | 利益が大きいと有利になりうる |
注意したいのは、あとから個人を会社に切り替えると、事業の名義が変わることです。登録・保険・融資・船の名義で手続きが必要になる可能性があるので、数年以内に会社にする見込みがあれば、最初に都道府県の窓口や金融機関に確認してください。
係留場所の確保
漁港やマリーナの空き状況や使用料、ルールは地域によって違います。泊められる船の大きさも場所ごとに決まるため、船のサイズや仕様を決める前に、地元の漁協やマリーナに相談しておきます。使用料は毎月の経費として資金計画に入れてください。
新しい船か中古船か
船の候補が決まったら、見積書を取ります。見積書は、このあと作る資金計画と融資の申し込みの根拠になります。ただし、正式な売買契約や手付金の支払いは、融資の見通しが立ってからにしてください。
中古の船は、減価償却(高額な設備の代金を何年かに分けて経費にする仕組み)の年数が短くなり、小型の遊漁船では2年になることもあります。ただし、この年数は使い始めた年の申告で決まり、あとから変えられません。買ったあとに、買った価格の半分を超える改修をすると、短い年数が使えなくなる場合もあります。
また、後で説明する消費税の還付を考える場合、個人やインボイス登録をしていない業者から買うと、船の消費税を全額は控除できません。船の耐用年数の詳しい区分は、こちらの記事で解説しています。

事業計画と資金計画
先ほどの方のケースでは、必要資金約2,600万円のうち船を中心とする設備資金が約7割でした。1つの買い物が計画のほとんどを決めるため、次の点まで入れておきます。
- 救命胴衣など航行区域に応じて必要な安全備品と、魚群探知機・レーダーなどの航海計器
- 冬場など、天候で出航できない月の売上の落ち込み
- 狙う魚種と集客の方法、満席でなく定員の半分程度でも回るか
- 事業主の生活費(経費にはなりませんが、現金は出ていきます)
資金計画の実際の組み方は、こちらの記事で紹介しています。

創業融資の申し込み
船の購入資金は、日本政策金融公庫などの創業融資で調達するのが一般的です。先ほどのケースでは、見積書のある設備資金はほぼ満額だった一方、運転資金は申請より減額されました。減額されても回る計画にしておくことが大切です。
当事務所の創業融資の支援内容は、こちらでご案内しています。
当法人のサービス
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遊漁船業の保険と登録
損害賠償保険への加入
登録を受けるには、利用者の死傷に備える保険への加入が必要です。金額は定員1人あたり5,000万円以上で、2024年4月の改正で3,000万円以上から引き上げられました。保険料は毎年かかる経費です。
遊漁船業の登録
遊漁船業を営むには都道府県知事の登録が必要で、5年ごとに更新します。2024年4月からは、利用者の安全管理などを定めた業務規程を申請時に提出し、基準に合わないと登録を受けられなくなりました。
登録には主任者の選任や保険への加入が前提になるため、資格・船・保険がそろってから最後に申請します。手順は営業所のある都道府県の水産担当の窓口で確認してください。
遊漁船業の開業届と消費税の判断
開業届と青色申告承認申請書
- 開業届:2026年1月1日以後の開業から、期限が「開業から1か月以内」ではなく「その年分の確定申告期限まで」に変わりました
- 青色申告承認申請書:1月16日以後に開業した場合は開業から2か月以内。こちらの期限は変わっていません
遊漁船業は船の減価償却が大きく、開業から1〜2年は帳簿上が赤字になりやすい事業です。青色申告なら、その後も毎年申告を続けることを条件に、この赤字を3年間繰り越して将来の黒字と相殺できます。船を買う年に青色申告が間に合わないと、いちばん大きな赤字を繰り越せません。開業届と一緒に出しておくのが確実です。
消費税の課税事業者を選ぶかどうか
開業して間もない個人事業主は、原則として消費税の納税義務がありません。ただ、あえて課税事業者を選ぶ届出をすると、船の代金に含まれる消費税が還付される可能性があります。インボイス登録業者から税込1,100万円で買った船なら、そのうち100万円が消費税です。
届出は、原則として課税事業者になりたい年の前の年のうちに出します。開業した年だけは、その年のうちに出せばその年から適用されます。船を買った年が終わってから届け出ても、その年の還付には間に合いません。
一方で、課税事業者を選んでから2年以内に税抜100万円以上の設備を買い、一般課税で申告した場合は、原則として3年間は免税事業者に戻れず、消費税の申告と納税が続きます。「今戻る金額」と「3年間に納める金額」を比べないと得か損かは決まらないので、船の契約前にご相談ください。届出の詳細は国税庁の消費税課税事業者選択届出手続で確認できます。
開業後に続く遊漁船業のお金の管理
乗船料は現金やキャッシュレス決済で受け取るため、事業用の口座を分け、出航ごとに人数・決済方法・金額を記録しておきます。予約サイト経由の売上は、手数料を引かれる前の金額を売上にし、手数料を経費にします。開業の翌年からは、次の予定が毎年続きます。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 1月31日まで | 船の固定資産税(償却資産税)の申告 |
| 3月15日まで | 所得税の確定申告 |
| 冬場 | 出航できない日が増え、売上が落ちる |
| 据置期間の終了後 | 融資の元金の返済が始まる |
償却資産税は、所得税の帳簿で償却し終えても、船を持っているかぎり毎年申告が必要です。
開業はゴールではなく、減価償却・冬場の資金繰り・融資の返済が重なる開業後の数年間のほうが、お金の管理は難しくなります。淀川パートナーズでは、開業前の届出の判断から、毎月の記帳、確定申告、返済を見すえた資金繰りまで続けて担当しています。
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- 開業準備は、経験と資格、船と資金、保険と登録、税金の手続きの順に進める
- 遊漁船業務主任者は、30日以上の実務研修でも経験の要件を満たせる。船長には特定操縦免許が必要
- 船と係留場所の見積もりをもとに資金計画を作り、船の契約は融資の見通しが立ってからにする
- 中古船の耐用年数は使い始めた年の申告で決まる。誰から買うかで消費税の扱いも変わる
- 保険は定員1人あたり5,000万円以上。登録は都道府県知事に申請し、5年ごとに更新する
- 青色申告の申請は開業から2か月以内。消費税の課税事業者を選ぶなら、船を買う年が終わる前に判断する
※本記事は2026年10月時点の情報です。個別の税務判断はご相談ください。
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