【物販・せどり】仕入資金の融資は借りられる?公庫の審査で見られる点を税理士が解説
この記事を書いた人小西 椋磨(税理士 / 公認会計士)

「在庫を増やせば売上は伸びるのに、仕入れのお金が足りない」。物販を本業にしている方が、売上が伸び始めた時期にぶつかりやすい悩みです。
この記事では、せどりやeBay輸出などの物販で、仕入資金を日本政策金融公庫(以下、公庫)から借りられるのか、審査で何を見られるのか、物販の方がつまずきやすい点と申込み前に準備する書類までを解説します。eBay輸出やせどりなど物販事業者の記帳・申告と、創業融資の支援を担当している税理士・公認会計士が書いています。
借りる金額をどう考えればよいか、申込み前に何をそろえておけばよいかも、具体例を使って説明します。
物販の仕入資金は日本公庫の運転資金として借りられる
物販の在庫や仕入れのためのお金は、運転資金(仕入れや日々の事業運営に必要なお金)として公庫の融資の対象になります。
公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方が対象です。使いみちは設備資金と運転資金で、商品の仕入れには運転資金を使います(日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」)。
融資限度額は7,200万円ですが、これは制度上の上限で、申し込めばその金額を借りられるわけではありません。運転資金の返済期間は10年以内で、そのうち据置期間(元金の返済を待ってもらえる期間)は5年以内です。開業から7年を超えている方は、別の融資制度の対象になります。
案内ページに自己資金の要件は書かれていませんが、審査では今どれだけ手元にお金があるかも確認されることが多いです。手元資金が少ないほど、借りたお金だけで仕入れと返済を回すことになるため、計画の中身でその分を説明する必要があります。
設備資金なら購入する設備の見積書が根拠になりますが、継続的な仕入れのための運転資金には、必要額を示す見積書がありません。在庫を増やしたいというだけでなく、なぜその金額が必要なのかを、販売実績と入金までの期間から説明することが大切です。

審査で見られるのは在庫が何日で現金に戻るか
仕入資金の必要額は、月の仕入額だけでなく、仕入れた商品が売れて現金に戻るまでの日数と合わせて説明することが大切です。
仕入れてから入金されるまでの日数で必要額が決まる
物販のお金は、仕入れ、出品、販売、入金の順に動きます。商品が売れても、入金されるまでは次の仕入れや返済には使えません。eBayなら発送してから入金されるまで、メルカリなら売上金の振込申請をしてから入金されるまでの期間があり、その間お金は在庫と未入金の売上に充てられています。販売件数が増えていても、入金までの期間が長ければ手元のお金は不足しやすくなります。
たとえば、月の仕入れが200万円で、仕入れてから入金までが平均45日だとします。1か月を30日とすると、45日は1.5か月分にあたるため、200万円×45日÷30日で、常に約300万円が在庫と未入金に充てられている計算になります。同じ日数のまま仕入れを月300万円に増やすと、必要額は300万円×45日÷30日で約450万円です。差額の約150万円が、新たに必要になる運転資金の目安です。
| 月の仕入れ | 入金までの日数 | 在庫と未入金に充てられるお金 | |
|---|---|---|---|
| 現在 | 200万円 | 45日 | 約300万円 |
| 仕入れを増やした後 | 300万円 | 45日 | 約450万円 |
これは考え方を示すためのモデル計算で、融資額を決める基準ではありません。150万円をそのまま借りる額にするのではなく、今の手元資金で足りる分を差し引き、送料や販売手数料などの支払いも加えて、借りる額を考えます。
数字の根拠は販売データで示す
平均45日のような日数は、感覚ではなく販売記録から確認します。仕入日、販売日、入金日を追っていけば、どの段階でお金が止まっているかを説明できます。
販売サイトの売上履歴や販売件数、仕入先、利益率、在庫の一覧を整理しておくと、仕入れを増やす理由を伝えやすくなります。「この商品は売れる見込みです」という説明だけでは根拠として弱く、これまでに何個仕入れて何個売れたのか、どのくらい利益が残ったのかを実績で示すことが大切です。
在庫の一覧では、売れている商品だけでなく、長く残っている商品も確認します。仕入れを増やす計画と、今ある在庫の状況をあわせて説明できるように準備しておくと安心です。
物販の方が審査でつまずきやすい4つの点
審査では、売上の大きさだけでなく、申告した利益、入金の流れ、税金や支払いの状況、手元資金を確認されることが多いです。
確定申告で利益を小さくしすぎている
確定申告書や決算書の数字は、審査で確認されることが多い資料です。経費を積んで所得を小さく申告していると、売上が大きくても返済できる力が低いと見られやすくなります。借りたい金額に対して利益が少なければ、毎月の返済に使えるお金を説明しにくくなります。
節税と融資は両立が難しい面があります。ただし、融資のために利益を大きく見せるのではなく、実際の取引を正しく記帳し、申告した数字にもとづいて返済の見通しを立てることが大切です。すでに申告した年の利益が小さい場合は、今期の月ごとの売上と経費をまとめた資料(試算表)で、現在の利益の状況を説明する方法もあります。
売上の入金口座と生活費の口座が分かれていない
事業の入金と生活費の支払いが同じ口座に混ざっていると、売上からどれだけ事業のお金が残っているかを説明しにくくなります。
eBay輸出では、Payoneer(海外の売上を受け取る決済サービス)の入金記録と、円に替えて銀行口座へ入った記録をつなげて確認します。通帳だけでは、どの販売分の入金なのかが分かりにくいことがあります。販売履歴、Payoneerなどの明細、通帳の入金が対応するように整理しておくことをおすすめします。これからの管理では、事業用と生活費用の口座を分けておくと、入金の流れも手元資金も確認しやすくなります。
税金や社会保険料の未納、カードの支払い遅れがある
税金や社会保険料の納付状況と、個人の信用情報(借入れやクレジットカードの支払い状況の記録)は、審査で確認されることが多い項目です。未納やカードの支払い遅れがあると、返済を続けられるかを慎重に見られやすくなります。
申込み前に、税金や保険料が納付済みかどうかと、カードの引落しの状況を確認しておくと安心です。未納がある場合は、その内容と今の対応状況を把握しておくことが大切です。
消費税の還付を資金繰りの前提にしている
eBay輸出の消費税の還付は、申告してから入金されます。仕入れの支払いと還付の入金の時期がずれるため、還付をあてにして仕入れを組むと手元のお金が不足することがあります。還付は金額だけでなく入金される時期も見込んでおき、入金が遅れても仕入れと返済を続けられるかを確認しておくと安心です。
課税期間(消費税を計算する期間)を短縮して、還付を早める方法もあります。メリットとデメリットは次の記事で解説しています。

申し込む前に準備しておく書類と数字
提出する書類の数字と、販売・仕入れ・入金の記録がつながるように準備しておくことが大切です。
公庫から求められることが多い資料と、必要額や返済の見通しを説明するために整理しておきたい数字は、次のとおりです。
- 確定申告書と決算書(直近2期分が目安)
- 今期の売上と経費が分かる資料
- 販売サイトの売上履歴や販売件数などの販売実績
- 仕入先と、何をいくらで仕入れているかの記録
- 商品ごとの数量・仕入額・仕入時期が分かる在庫の一覧
- 販売から銀行口座への入金までを追える通帳とPayoneerなどの入金明細
- 仕入れ・入金・経費・返済の時期と金額をまとめた、借りた後の資金繰りの見通し
開業して間もなく直近2期分の資料がない場合は、用意できる期間の資料を整理します。実際に必要な書類は、申込み先の公庫の支店に確認するのが確実です。
書類をそろえるだけでなく、仕入れをどれだけ増やすのか、追加でいくら必要か、返済のお金をどう確保するかを、つじつまの合う数字で説明できるようにしておくことをおすすめします。面談で聞かれる内容は、次の記事で解説しています。

借りた後は毎月の在庫と資金繰りの確認が欠かせない
融資を受けた後も、毎月の記帳を通じて、在庫が現金に戻るまでの日数と手元資金を確認していくことが大切です。
借りたお金は、仕入れをすればすぐに在庫に変わります。在庫が増えても予定どおりに売れなければ、返済に使える現金は増えません。売れ残りが増えると、次の仕入れと返済の両方でお金が足りなくなりやすくなります。
毎月見ておきたいのは、売上や利益だけではありません。在庫の金額、長く残っている商品の数量、販売から入金までの期間、口座に残っている現金も確認します。申込みのときの計画と実際の数字を比べることで、追加の仕入れを続けられるかを判断しやすくなります。たとえば売上が伸びていても在庫の日数が長くなっている場合は、仕入れを増やす前に手元資金への影響を確認する必要があります。
年末の在庫の数え方や、売れ残りの処理については、次の記事で解説しています。

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