日本政策金融公庫の面談は何を聞かれる?落ちない答え方を税理士が解説

はじめに
こんにちは、税理士法人淀川パートナーズの堀です。
「申込は済んだけれど、面談で何を聞かれるのかわからない」——創業融資の相談で、いちばん多くいただく不安がこれです。
日本政策金融公庫(以下、公庫)の創業融資では、申込のあとに担当者との面談があります。ここは提出した創業計画書の中身を「本人の口から説明できるか」を確かめる場です。書類がよくできていても数字の根拠を答えられなければ評価は下がり、逆に聞かれることを知って準備しておけば通過の可能性は変わります。
この記事では、公庫が公式に案内している面談の位置づけを押さえたうえで、私たちが実際に支援した案件で担当者から出た質問・指摘をもとに、聞かれることと答え方のポイントを解説します。一般論だけでなく「実際の面談ではここを突かれた」という情報までお伝えします。
公庫の面談とは?いつ・どこで・何を見られるのか
まず、面談が手続き全体のどこにあるかを確認しておきましょう。公庫が案内している創業予定者の手続きの流れは、次のとおりです。
- ①ご相談:電話・予約相談で制度や手続きを確認する
- ②お申込:インターネット申込(24時間365日受付)。創業計画書もこの段階で提出する
- ③ご面談:担当者から連絡があり、支店などで面談を行う
- ④ご融資:契約手続き後、融資金が口座に入金される
- ⑤ご返済:原則として月賦払い
公庫は面談について、「資金のお使いみちや事業計画などについてお話を伺います」「店舗や事業所の予定地をお訪ねいたします」「事業計画などをさまざまな角度から検討し、融資の判断をいたします」と案内しています。
見落とされがちなのが、面談は支店で話して終わりではなく、店舗や事業所の予定地を実際に見に来ることがあるという点です。物件が決まっていない、内装の計画があいまいといった状態だと、計画の実現性を疑われます。
必要な資料についても、公庫は「事業計画に関連する資料や資産・負債がわかる書類などをご準備いただきます」としています。所要時間は事業内容によりますが、私たちが支援した案件では1時間半に及んだケースもありました。30分で終わるつもりでいると、後半の質問で崩れてしまいます。
面談で必ず聞かれる6つのこと
面談の質問は創業計画書の記載事項に沿って進みます。計画書に書いたことは全部聞かれる前提で準備するのが正解です。実務上、特に必ず問われるのは次の6つです。
①創業の動機・きっかけ
「なぜこの事業を始めるのか」という質問です。ここは熱意を見られる部分なので、抽象的な話(自由に働きたい、昔からの夢だった)で止めず、これまでの経験とつながる具体的なきっかけを話せるようにしておきます。
②前職の経験と、始める事業との関連性
創業融資の審査で最も重視される項目のひとつです。同じ業種・関連業種で何年働いたか、どんな立場だったか(現場だけか、数字や仕入も見ていたか)を整理しておきましょう。
前職とまったく関係のない事業を始める場合は、審査が厳しくなる傾向があります。その場合は、なぜやっていけるのか(研修を受けた、経験者を採用する、受注の見込みが既にある等)を補う材料として用意してください。
③自己資金をどうやって貯めたか
金額そのものだけでなく、「どう貯めたか」という形成の経緯を聞かれます。毎月コツコツ積み立てた通帳は、計画性の証明としてそのまま評価されます。
一方、直前にまとまった額が入金されている場合は説明が必要です。贈与や退職金ならその旨を、借入で用意したお金なら正直に伝えます。曖昧にすると通帳の動きから見抜かれ、信頼を失います。
④売上の見通しと、集客の具体策
計画書の「事業の見通し」に書いた売上について、その数字にした根拠を聞かれます。客単価×席数×回転数、単価×契約件数など、分解して説明できる状態にしておいてください。
あわせて必ず問われるのが集客方法です。ここは実務上、最も差がつくところです。
- 評価されにくい:「知人・前職の取引先に声をかける予定」だけで終わっている
- 評価されやすい:SNS広告の出稿計画、ポータルサイトへの登録、既に確約のある取引先の名前と見込金額
⑤必要な資金の内訳と、返済の見通し
いくら借りたいかではなく、何にいくら使うのかを聞かれます。設備資金は見積書、店舗は賃貸借契約書(未契約なら物件資料)と紐づけて説明できるように。運転資金も何カ月分をどう見込んだのかを答えられる必要があります。

⑥個人の借入状況と、開業後の生活費
住宅ローン・自動車ローン・カードローンなど、個人としての借入を確認されます。借入があること自体が問題なのではなく、延滞がないことが重要です。
意外に多くの方が準備していないのが、開業後の生活費についての質問です。売上が安定するまでの間、家族の生活をどう維持するのか。ここに答えがないと、「生活費のために事業資金を取り崩すのでは」と見られてしまいます。
実際の面談で公庫から指摘されたこと
ここからは、私たちが支援した案件で公庫の担当者から実際に出た指摘をご紹介します。事例の特定を避けるため、金額はおおまかな規模にとどめ、業種や地域が分かる情報は省いています。
ケース1:仕入のある事業を始めるAさん(希望額は数百万円規模)
面談は約1時間半。担当者からは次の指摘がありました。
- 希望していた据置期間(元金の返済を待ってもらう期間)はそのままでは難しく、より短い期間を前提に考えるよう伝えられた
- 計画書上、2〜3年後の仕入が抑えられている理由の説明を求められた
- 集客計画が弱いと指摘された
- 開業後の生活費の見通しを確認された
注目していただきたいのは2つ目です。計画書の数字は、単年ではなく年度をまたいだ整合性まで見られています。売上が伸びる計画なのに仕入だけ横ばい、といった数字は必ず突かれます。「そう入力したらそうなった」では答えになりません。
ケース2:許認可が必要な事業を始めるBさん(希望額は数千万円規模)
こちらは金額の大きい案件でした。出てきた論点は次のとおりです。
- 融資希望額が同業の一般的な開業費用の水準を大きく上回っており、その理由の説明を求められた
- 金額が大きいため地方銀行との協調融資(複数の金融機関で分担して融資すること)も検討したが、公庫から銀行を紹介してもらうことはできず、別途自分でアプローチする必要があった
- 開業に必要な許認可や設備の設置場所は、最初の段階で確認が必須だった
金額が大きい案件ほど、「その業種の相場と比べてなぜこの金額なのか」を説明できるかどうかが問われます。開業経験や自己資金の厚みも、大きな金額を裏づける材料になります。
据置期間は「制度上5年以内」でも、希望どおりとは限らない
ここは多くの方が誤解しているポイントなので、独立して説明します。
現在の創業者向け制度である「新規開業・スタートアップ支援資金」(2024年3月まであった「新創業融資制度」は、この制度に統合されました)の公式な条件は次のとおりです。
- 融資限度額:7,200万円
- 返済期間:設備資金は20年以内、運転資金は10年以内
- 据置期間:いずれも5年以内
この「据置期間5年以内」を見て、「最初の数年は利息だけ払えばいい」と資金繰り計画を立ててしまう方がいます。しかし実際の面談では、希望した据置期間がそのまま認められるとは限りません。前述のケース1でも、希望より短い期間を前提に考えるよう伝えられています。
制度上の上限と、実際に認めてもらえる期間は別物です。据置期間は「事業が軌道に乗るまでの猶予」として個別に判断されるため、上限いっぱいを前提にした資金繰り計画は危険です。長めに希望するなら、なぜその期間が必要なのか(設備の稼働開始が遅い、許認可の取得に時間がかかる等)を根拠とセットで説明できるようにしてください。
面談で不利になりやすい人の共通点
これまでの支援経験から、面談でつまずきやすいパターンをまとめます。
- 計画書を人任せにしていて、自分の言葉で数字を説明できない:面談は本人が答える場です。ここが最大の落とし穴です
- 受注件数の前提が楽観的すぎる:「初月から◯件契約できる」といった前提は、根拠を問われます
- 物件・許認可が未確定:融資の時期そのものに影響します。許認可がまだなら、取得予定日を答えられるようにしておきます
- 自己資金が極端に少ない:制度上の要件はなくても、実務上は影響します
自己資金について補足します。かつての「新創業融資制度」には創業資金総額の10分の1以上という自己資金要件がありましたが、現在の「新規開業・スタートアップ支援資金」の公式案内に、自己資金の金額要件は書かれていません。ただし、要件がないことと審査で見られないことは別です。実務上は融資希望額の30%程度あると安心というのが私たちの感覚で、これは公庫の公表基準ではなく現場での目安ですが、自己資金が少ないほど説明を求められる場面は増えます。

面談前にやっておくべき準備
面談日が決まったら、次の2つを進めてください。
持ち物をそろえる
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)
- 許認可証のコピー(許認可が必要な業種の場合。未取得なら取得予定日を答えられるように)
- 設備の見積書、店舗・事務所の賃貸借契約書(概算・物件資料でも可)
- 自己資金の状況がわかる通帳
- 提出済みの創業計画書の控え
服装について迷う方が多いのですが、スーツである必要はありません。ジャケットや襟付きのシャツなど、清潔感のある服装であれば十分です。ただし、Tシャツに短パン、サンダルといったラフすぎる格好は避けてください。面談は、事業者として信頼できる相手かどうかを見られる場でもあります。
計画書を「自分の言葉」にして、声に出して練習する
計画書を読み返し、各数字について「なぜこの数字か」を一言で言える状態にします。売上・仕入・人件費・家賃の4つだけでも先に固めておくと、面談中の余裕がまったく違います。
そのうえで、本記事の6項目を質問リストとして使い、答えを声に出して練習してください。頭でわかっていることと、口で説明できることは別です。特に創業の動機と集客方法は、準備なしだと必ず抽象的になります。
税理士に相談すると、どこが変わるのか
私たち淀川パートナーズでは、創業計画書のうち特に評価を左右する「必要な資金と調達方法」と「事業の見通し(損益計画)」をお客さまと一緒に作成し、公庫への申込手続きの代行も行っています。あわせて、本記事で挙げたような質問にどう答えるかを一緒に整理する面談対策にも対応しています。
面談は基本的にご本人が受けるものですが、ご事情に応じて同席させていただく場合もあります。いずれにしても大切なのは、面談で聞かれる論点を先に潰しておくことです。数字の根拠、年度をまたいだ整合性、集客計画の書き方——この記事で挙げた指摘は、いずれも事前に手を入れられる部分です。
なお、まだ申し込んでいない段階の方は、計画書そのものに手を入れられるぶん、できることが格段に多くなります。面談日が決まってからでも準備はできますが、申込前にご相談いただくのがもっとも効果的です。
なお、自己資金がほとんどない段階でのご相談では、まず公庫の窓口で無料相談を受けて感触を確かめることをおすすめしています。ご依頼の前に現実的かどうかをお伝えするのが誠実だと考えているためです。

公庫の面談についてよくあるご質問
面談の所要時間はどのくらいですか?
事業の内容や融資希望額によって変わります。私たちが支援した案件では1時間半に及んだケースもありました。短く終わることもありますが、30分で終わる前提でスケジュールを組むと、後半の質問で焦ることになります。時間には余裕を持たせてください。
服装はスーツでないとだめですか?
スーツである必要はありません。ジャケットや襟付きのシャツなど、清潔感のある服装であれば十分です。ラフすぎる格好だけは避けましょう。
面談は必ず支店に行くのですか?
公庫は「店舗や事業所の予定地をお訪ねいたします」と案内しており、支店での面談だけでなく、開業予定地を実際に見に来ることがあります。状況によって郵送などでの対応になる場合もあるため、進め方は担当者からの連絡時に確認してください。
その場で答えられない質問があったらどうなりますか?
わからないことを取り繕って答えるのが、いちばん印象を悪くします。確認して後日回答する旨を正直に伝えれば問題ありません。
ただし、自分が提出した計画書に書いた数字の根拠だけは「調べます」では通りません。売上・仕入・人件費・家賃の4つは、必ず自分の言葉で説明できる状態にしてから面談に臨んでください。
面談の結果、融資を断られたら、もう申し込めないのですか?
再度申し込むこと自体はできます。ただし、前回と同じ計画書のまま出し直しても結果は変わりません。断られた理由がどこにあったのかを踏まえ、事業計画や資金計画を作り直したうえで再挑戦するのが基本です。理由に心当たりがない場合は、専門家に計画書を見てもらうことをおすすめします。
まとめ
- 公庫の面談は、創業計画書の中身を本人が説明できるかを確かめる場。計画書に書いたことは全部聞かれる前提で準備する
- 必ず聞かれるのは①創業の動機②前職との関連性③自己資金の貯め方④売上の根拠と集客⑤資金の内訳と返済⑥個人の借入と開業後の生活費の6つ
- 面談は支店で完結せず、店舗や事業所の予定地を実際に見に来ることがある
- 計画書の数字は年度をまたいだ整合性まで見られる(売上が伸びるのに仕入が横ばい等は指摘される)
- 据置期間は制度上5年以内でも、希望どおり認められるとは限らない。上限前提の資金繰り計画は危険
- 自己資金は現行制度に金額要件がないが、実務上は融資希望額の30%程度あると説明がしやすい
- 金額の大きい案件では、同業の開業費用の水準と比べてなぜその金額なのかの説明が求められる
※本記事は2026年7月時点の情報です。融資制度の内容や審査の運用は変更される場合があります。個別の税務判断・融資のご相談はお問い合わせください。
【創業融資の面談でお困りの方へ】
「面談日が決まったが、数字の根拠を説明できる自信がない」「創業計画書をどう書けばいいかわからない」という方は、お気軽にご相談ください。
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