創業融資の自己資金はいくら必要?認められるお金と見せ金の注意点を税理士が解説
この記事を書いた人堀 真彰(税理士 / 公認会計士)

「創業融資の自己資金は、いくらあれば足りるのか」「親に援助してもらったお金は自己資金に入るのか」——申込みの前に、ここで手が止まる方は少なくありません。
結論から言うと、日本政策金融公庫(以下、公庫)の新規開業資金に自己資金の金額の要件はなく、融資を受けた方の自己資金は平均で資金調達額の2割強です。ただし審査では、金額だけでなく、そのお金をどうやって準備したかも見られます。
この記事では、創業融資の自己資金の目安、自己資金に入るお金と入らないお金、親からの援助と贈与税、通帳で見られる点を、創業融資の申込みを支援している税理士が、公庫の資料と国税庁の情報をもとに解説します。読み終えるころには、自分の自己資金を面談でどう説明すればよいかが分かるようになります。
創業融資の自己資金の目安
公庫の創業Q&Aでは、「自己資金はいくらあれば融資を受けられますか」という質問に、「自己資金は重要な要素のひとつですが、それ以上に創業計画全体がしっかりしているかが重要」と答えています。新規開業資金の利用条件にも、自己資金の金額は書かれていません。
ネットでは今も「自己資金は創業資金の10分の1以上が必要」という情報を見かけますが、これは以前の新創業融資制度の要件で、2024年4月の制度の見直しでなくなっています。
とはいえ、目安がまったくないわけではありません。
融資を受けた人の自己資金の平均
公庫の2025年度新規開業実態調査によると、開業時の資金調達額の平均と内訳は次のとおりです。
| 調達先 | 平均額(割合) |
|---|---|
| 自己資金 | 279万円(22.9%) |
| 金融機関等からの借入 | 827万円(67.9%) |
| 配偶者・親・兄弟・親戚 | 53万円 |
| 友人・知人等 | 41万円 |
| その他 | 19万円 |
| 合計 | 1,219万円 |
この調査の対象は、2024年4月から9月に公庫が融資した、開業1年以内の企業です。審査を通った人の平均として、自己資金は資金調達額の2割強という水準です。あくまで平均なので、これより少ない自己資金で融資を受けた人も含まれています。
自己資金の何倍まで借りられるか
上の平均で比べると、金融機関からの借入(827万円)は自己資金(279万円)の約3倍です。ネットでは「自己資金の3倍まで」といった目安をよく見かけますが、公庫が「自己資金の◯倍まで」という基準を公表しているわけではありません。借りられる額は、必要な資金の内訳と、事業の売上から返済できるかで決まります。
必要な資金から借入額を決める手順は、こちらの記事で解説しています。

自己資金に入るお金・入らないお金
自己資金は、返す必要がなく、出どころを説明できる自分のお金です。よくあるお金を、実務での見られ方の目安で分けると次のようになります(当事務所で整理したもので、公庫が公表している一覧ではありません)。
| お金の種類 | 扱いの目安 | 説明に使う資料 |
|---|---|---|
| 給与などから貯めた預金 | 入りやすい | 積み立ての通帳 |
| 退職金 | 入りやすい | 退職金の明細 |
| 保険の解約返戻金 | 入りやすい | 解約の通知書 |
| 親からもらったお金 | 説明が必要 | 振込の記録 |
| 手元の現金(タンス預金) | 説明が必要 | 預け入れの経緯 |
| 法人の資本金 | 説明が必要 | 払い込んだ流れが分かる個人の通帳 |
| カードローンや知人から借りたお金 | 入らない | ― |
公庫の創業の手引にも、「一攫千金で得た資金や第三者から融通してもらった資金だけでは計画性が高いとは思われません」と書かれています。借りたお金は、返す義務がある以上、自己資金ではなく借入です。
タンス預金の扱い
現金で持っていたお金は、いつ、どうやって貯めたのかを通帳で示せません。申込みの直前にまとめて口座に入れると、一時的に借りたお金と見分けがつきにくくなります。手元の現金を自己資金にするなら、早めに口座へ預け、貯めた経緯を説明できるようにしておきましょう。
法人の資本金の扱い
会社を作って申し込む場合も、考え方は同じです。資本金として払い込んだお金も、もとをたどれば個人のお金です。個人の口座で貯めてから資本金を払い込んだ流れが分かる通帳で、どう貯めたかを示せるようにしておきます。
親からの援助と贈与税
親からのお金は、もらうのか、借りるのかで、融資での扱いも税金も変わります。どちらにするかを先に決め、記録を残しておくことが大切です。
| 項目 | もらう(贈与) | 借りる(借入) |
|---|---|---|
| 返す義務 | なし | あり |
| 創業計画書 | 自己資金として説明 | 借入として書く |
| 税金 | 年110万円超で贈与税 | 原則かからない |
| 残す記録 | 贈与契約書・振込の記録 | 借用書・返済の記録 |
もらう場合の贈与税
1年間(1月1日〜12月31日)にもらったお金の合計が110万円を超えると、贈与税がかかります(国税庁 No.4402)。申告と納税は、もらった年の翌年2月1日から3月15日までです。
自己資金を増やすために親から援助を受けると、翌年に贈与税の申告が必要になることがあります。相続時精算課税という別の制度を選べる場合もあるため、金額が大きいときは援助を受ける前にご相談ください。
借りる場合の借用書と返済
親から借りたお金は、返済の能力や状況から見て本当に貸し借りと認められれば、贈与にはなりません。ただし、「出世払い」「ある時払いの催促なし」のような貸し借りは、借りたお金そのものが贈与として扱われます。無利子の場合は、利子に当たる分が贈与と扱われる場合もあります(国税庁 No.4420)。
借りるなら、借用書に金額と返済の方法を書き、実際に口座から返済することが基本です。公庫の創業計画書には「親、兄弟、知人、友人等からの借入」の欄があり、内訳と返済方法を書きます。公庫への返済と合わせて、事業の売上から返せる計画にしておきます。借りたお金を自己資金として説明するのは、事実と違う申告になるため避けてください。
淀川パートナーズでは、自己資金の出どころの整理から、創業計画書の作成、公庫への申込みまでお手伝いしています。親からの援助の贈与税も、あわせてご相談いただけます。全国どこからでもオンラインでご相談いただけます。
通帳で見られる点と見せ金のリスク
公庫の創業の手引(美容業向け・令和7年9月)のチェックリストには、「自己資金はコツコツと貯めていますか?」「自己資金の蓄積過程は通帳などで確認できますか?」という項目があります。
自己資金の貯まり方と日頃の支払い
毎月の給与から少しずつ積み立てた記録は、それだけで創業に向けた準備の証拠になります。退職金や保険の解約などで一度に大きな入金がある場合は、明細や通知書など、出どころが分かる資料をそろえておきます。複数の口座から1つの口座にお金を集めた場合は、移動元の口座の通帳や明細も残しておきましょう。
実務では、半年から1年程度の通帳を求められることが多いです(公庫が期間を公表しているわけではありません)。通帳のないネット銀行は、Webの入出金明細を用意します。紙の通帳も、長く記帳していないと明細がまとめて印字(合算記帳)されてしまうため、早めに記帳しておくと安心です。そのうえで、いつから、どのように貯めてきたかを、面談で自分の言葉で説明できるようにしておきます。
手引では、公共料金・家賃・住宅ローンなどの日頃の支払いの状況も確認するとしています。支払いは口座からの引き落としにして、記帳した通帳を保管しておきましょう。
見せ金のリスク
見せ金とは、他人から一時的に借りたお金を口座に入れて、自己資金があるように見せることです。たとえば、知人やカードローンで借りたお金を、申込みの直前に入金するようなケースです。入金の時期や振込元は通帳に残るため、説明がつかない入金は確認されます。事実と違う説明をすると、自己資金だけでなく、申込み全体の信用を失うことになります。自己資金は、金額の大きさよりも、貯めてきた過程を説明できるかが大切です。
面談で自己資金の貯め方をどう聞かれるかは、こちらの記事で解説しています。

自己資金が少ないときの進め方
自己資金がほとんどないまま、開業資金のほぼ全額を融資でまかなう計画でも、制度の上では申し込めます。ただし、一般的に自己資金が少ないことは審査で不利に働きやすいと考えられます。手引のチェックリストにも、「自己資金が少なく借入依存の計画になっていませんか?」という項目があります。
自己資金が少ないときは、次の順で計画を見直します。
- 開業費用を見直す:中古の設備やリースを使う、最初の規模を小さくするなどで、必要な資金そのものを減らす
- 開業の時期を調整する:数か月でも積み立てを続け、貯めた記録を通帳に残す
- 親からの援助を受けるなら:もらうのか借りるのかを決め、贈与税や借用書の準備をする
ただし、その業種での経験が長く、売上の見込みを裏づける材料がそろっている場合など、自己資金が少なくても計画全体で評価されることもあります。自分がどちらに当たるか迷ったら、申込みの前にご相談ください。
融資を受けたあとの資金繰り
融資はゴールではなく、事業のスタートです。自己資金を開業費用に使い切ってしまうと、開業後の赤字や入金の遅れに耐える余力がなくなります。開業後は、毎月の資金繰りを管理しながら、返済を続けた実績を積み上げていくことになります。その実績は、2回目の融資を申し込むときにも見られます。

淀川パートナーズでは、創業融資の申込みの支援に加えて、融資を受けたあとの記帳や資金繰りの管理まで続けてサポートしています。サービスの内容はこちらをご覧ください。
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創業融資支援融資決定率83.3%(2026年9月時点)。事業計画書の作成から面談対策まで、公認会計士が直接担当します。創業融資支援の詳細を見る ›まとめ
- 公庫の新規開業資金に自己資金の金額要件はなく、公庫も「それ以上に創業計画全体が重要」としている
- 融資を受けた人の自己資金は、平均で資金調達額の22.9%(279万円)
- 「自己資金の◯倍まで」という公式の基準はない。借りられる額は資金の内訳と返済の見込みで決まる
- 自己資金は、返す必要がなく出どころを説明できるお金。借りたお金は自己資金にならない
- 親からの援助は、もらうなら年110万円超で贈与税、借りるなら借用書と返済の記録が必要
- 通帳では、自己資金の貯まり方と日頃の支払いの状況が確認される
※本記事は2026年10月時点の情報です。個別の税務判断はご相談ください。
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