【キッチンカー】創業融資の事業計画書の書き方|記入例と売上計画を税理士が解説
この記事を書いた人堀 真彰(税理士 / 公認会計士)

はじめに
こんにちは、税理士法人淀川パートナーズの堀です。
「キッチンカーで独立したい。でも事業計画書の売上の欄に、何を根拠に数字を書けばいいのかわからない」——そんな方に向けた記事です。
キッチンカーは店舗より初期費用を抑えやすい一方で、車両と厨房の架装(車に調理設備を取り付ける改造)にまとまったお金がかかります。そこで日本政策金融公庫(以下、公庫)の創業融資を検討される方が多いのですが、公庫が公開している創業計画書の記入例には、キッチンカーの例がありません。この記事では、キッチンカーならではの書き方を、売上計画の記入例とあわせて解説します。
キッチンカーの創業融資は、公庫の新規開業・スタートアップ支援資金から考える
これから事業を始める方がまず検討するのは、公庫の新規開業・スタートアップ支援資金です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 利用できる方 | 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方 |
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間 | 設備資金20年以内、運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内) |
限度額は大きいですが、審査で見られるのは「いくらまで借りられるか」ではなく、「その金額を返せる計画になっているか」です。その計画を伝える書類が、創業計画書です。
公庫の記入例にキッチンカーはない。売上は「どこで・何日」で大きく左右される
公庫は創業計画書の様式と業種別の記入例を公式サイトで公開していますが、記入例は洋風居酒屋・美容業など9業種で、キッチンカー(移動販売)の例はありません。居酒屋の例は「客単価×席数×回転数×営業日数」で売上を計算していますが、キッチンカーには席も、決まった店舗もありません。
キッチンカーの売上は、「どこに出店できるか」と「月に何日出られるか」で大きく左右されます。計画書や面談では、次の3点を具体的に説明できるかが大切になります。
- どこで売るか:出店先が決まっているか、交渉が進んでいるか
- 何日売れるか:雨の日や冬、イベントのない月を計算に入れているか
- いくら売れるか:客単価と1日の客数に、経験や下見にもとづく根拠があるか
また、車で調理して販売するには保健所の営業許可が必要です。車内でどこまで調理できるか、別に仕込み場所が必要かは設備によって変わり、基準は自治体ごとに定められています。車を発注する前に、営業する地域の保健所へ相談しておくと安心です。
自己資金の出どころや飲食業での経験など、飲食業全般で審査担当者が確認するポイントは、こちらの記事でまとめています。

創業計画書は、出店先・見積書・保健所の相談結果をそろえてから書く
いきなり欄を埋めようとすると手が止まります。先に次の3つをそろえておくと、どの欄も書きやすくなります。
- 出店先の候補リスト:候補地と、出店料が固定額か売上歩合かという条件
- 車両と架装の見積書:できれば複数の業者から取って比べる(設備資金の欄には見積書の添付が求められます)
- 保健所への事前相談の結果:作りたいメニューを車内で調理できるか、仕込み場所が必要か
そのうえで、キッチンカーで特に差がつくのは次の欄です。
- 創業の動機:「料理が好きだから」で終わらせず、なぜ店舗ではなくキッチンカーなのかを書く(例:前職のランチ営業で昼の2時間に注文が集中するのを見てきた。人が集まる場所へ出向ける業態なら、家賃をかけずに売上をつくれると考えた)
- 取扱商品・サービス:客単価・営業日数・営業時間を、平日のランチと週末のイベントのように出店先ごとに分けて書く
- 取引先:店舗なら仕入先を書く欄だが、キッチンカーでは出店先が実質的な販売先になる。決まっている場所、交渉中の場所を書く
- 必要な資金:車両・架装・積み込む機器は設備資金、最初の仕入れ・出店料・仕込み場所の利用料・当面の経費は運転資金に分ける
この4つの欄を、後半の売上計画と同じカレーのキッチンカーを例に書くと、次のようになります(説明用の例です)。
| 欄 | 記入例 |
|---|---|
| 創業の動機 | 飲食店でランチ営業を担当するなかで、昼の2時間に注文が集中することを見てきた。人が集まる場所へ自分から出向けるキッチンカーなら、家賃をかけずにその需要を取り込めると考えた。 |
| 取扱商品・サービス | キーマカレー(900円)、イベント用のセット(1,000円)。平日はオフィス街のランチで月16日、週末はイベントで月4日。 |
| 取引先・取引関係等 | 販売先は一般個人(現金・キャッシュレス)。出店先は、平日がオフィス街の空き地(出店料は売上の15%、交渉中)、週末が地域のイベント(1回1万円)。仕入先は食材の卸業者。 |
| 必要な資金と調達方法 | 設備資金380万円(中古車と架装350万円:見積書あり、発電機・冷蔵庫など30万円)、運転資金120万円(最初の仕入れ・出店料・仕込み場所の利用料・当面の経費)。調達は自己資金150万円、日本政策金融公庫350万円。 |
借入額をいくらにするかは、こちらの記事で決め方を解説しています。

計画書に書いた内容は、公庫の面談でそのまま質問されます。
面談で聞かれる6つのことは、こちらの記事で解説しています。

売上計画は出店先ごとに「客単価×客数×日数」で積み上げる
ここからは、ランチ用のカレーを出すキッチンカーを例に、「事業の見通し」の欄の記入例を作ります。数字はすべて説明用の仮の数字です。
| 出店先 | 客単価 | 1日の客数 | 通常の月 | 雨の多い月・冬 |
|---|---|---|---|---|
| 平日・オフィス街のランチ | 900円 | 50食 | 16日 → 72万円 | 13日 → 58.5万円 |
| 週末・イベント | 1,000円 | 120食 | 4日 → 48万円 | 3日 → 36万円 |
| 合計 | 120万円 | 94.5万円 | ||
ポイントは2つです。1つ目は、客数をそもそも作れるのかを確かめること。注文が集中する昼の2時間に1食1分で出すなら、作れるのは最大120食です。客数は「来てくれそうな人数」と「自分が作れる数」の、少ないほうで計算します。
2つ目は、雨の日と冬を最初から入れること。創業計画書の「事業の見通し」は「創業当初」と「軌道に乗った後」の2列なので、創業当初に雨の多い月・冬の数字、軌道に乗った後に通常の月の数字を置くと、根拠を説明しやすくなります。
経費は、家賃がかからない分、ほかの費用を忘れがちです。今回の例では、原価を売上の35%(売れ残りの廃棄も含めて考える)、出店料を平日は売上の15%・イベントは1回1万円(いずれも仮の条件)とし、仕込み場所の利用料3万円、燃料2万円、駐車場1.5万円、保険(事業用の自動車保険・賠償責任保険)1万円、修繕の積み立て1.5万円、その他3万円を毎月の経費に置きました。
| 項目 | 創業当初 | 軌道に乗った後 |
|---|---|---|
| 売上高 | 94.5万円 | 120万円 |
| 売上原価(35%) | 33.1万円 | 42万円 |
| 経費 | 23.8万円 | 26.8万円 |
| 利益(支払利息を引く前) | 37.6万円 | 51.2万円 |
たとえば必要な資金を500万円(設備資金380万円・運転資金120万円)とし、自己資金150万円、公庫から350万円を借りて7年で返すなら、元金の返済は月に約4.2万円です(説明のため設備資金と運転資金をまとめて計算していますが、公庫の制度では返済期間の上限が設備資金20年・運転資金10年と別々で、実際には資金ごとに返済期間が分かれることもあります)。個人事業の場合、生活費と元金の返済は利益の中から払います。創業当初の利益37.6万円から返済を引いた約33.4万円で、生活費・利息・税金・社会保険料を払っていけるか。この確認ができていれば、「返済の根拠がある計画」として説明しやすくなります(審査そのものは、自己資金や経歴なども含めた総合的な判断です)。
また、開業直後は売上が読みにくいものです。据置期間(元金の返済を始めるまで待ってもらう期間。制度上は5年以内)を設けて、最初の数か月は利息だけを払う形にする選択肢もあります。据置期間の希望は申し込みのときに伝えられるので、計画書の段階で考えておきましょう。
ただし実際は、廃棄が多い月や体調を崩して休む日もあり、一人で回すキッチンカーは自分が休めば売上がゼロになります。出店先がまだ決まっていない、イベント出店だけで組みたい、といった場合も書き方が変わります。ご自身の計画がどこまで通用するかは状況によって判断が分かれるので、迷ったら下書きの段階でご相談ください。
車両と架装は一度に経費にならない。耐用年数は車検証の区分で変わる
キッチンカーの車両と架装の費用は、買った年に全額を経費にはできず、何年かに分けて経費にする「減価償却」の対象です。車に常時搭載する機器は車両と一括して耐用年数を適用するとされているため(耐用年数の適用等に関する取扱通達2-5-1)、造り付けのシンクや調理台も車両と同じ年数になります。
| 区分(耐用年数省令 別表第一「車両及び運搬具」) | 耐用年数 |
|---|---|
| 特殊自動車のうち、特殊車体を架装したもの(総排気量2リットル以下) | 3年 |
| 特殊自動車のうち、特殊車体を架装したもの(上記以外) | 4年 |
| 一般の自動車のうち、軽自動車(総排気量0.66リットル以下) | 4年 |
| 一般の自動車のうち、貨物自動車(ダンプ式以外) | 5年 |
| 一般の自動車のうち、上記以外 | 6年 |
国税庁は「キッチンカーは何年」とは示していないため、どの区分に当たるかは車検証の登録内容と架装の中身から判断することになります。年数が変われば毎年の経費と税金が変わるので、車を買う前に見積書と車両の情報を持ってご相談いただくのが確実です。
融資はスタート。天候で揺れる売上は資金繰り表で管理する
キッチンカーの経営で本当に大変なのは、返済が始まってからです。梅雨や冬、イベントのない時期に売上が落ちても、返済・保険料・出店料は毎月出ていきます。年間で見れば黒字でも、悪い月が続けば手元の現金が先に尽きることがあります。
だからこそ、創業計画書で作った数字を、開業後は実際の数字で更新する資金繰り表が欠かせません。2台目の購入や店舗化で追加の融資を受けるときも、審査では決算書と毎月の数字が見られます。
資金繰り表の作り方は、こちらの記事で解説しています。

私たち淀川パートナーズでは、創業計画書の作成から融資の申し込みまでをサポートし、融資を受けたあとも毎月の数字を一緒に見ながら、次の一手を考えるお手伝いをしています。
創業融資の支援の内容と料金は、こちらのページで紹介しています。

まとめ
- 公庫の業種別の記入例にキッチンカーはない。売上は「どこで・何日・いくら売るか」で説明する
- 計画書の前に、出店先の候補・車両と架装の見積書・保健所の相談結果をそろえる
- 創業の動機には「なぜ店舗ではなくキッチンカーか」を書き、取引先の欄には出店先を書く
- 売上は出店先ごとに「客単価×客数×日数」で積み上げ、雨の多い月・冬の数字で返済と生活費を払えるか確かめる
- 車両と架装は減価償却の対象。耐用年数は車検証の区分と架装の中身で変わるので、買う前に確認する
※本記事は2026年10月時点の情報です。個別の税務判断はご相談ください。
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