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融資

ウイスキーバーの創業融資|公庫で通った資金計画を税理士が解説

ウイスキーバーの創業融資
堀真彰

はじめに

こんにちは、税理士法人淀川パートナーズの堀です。

「ウイスキーバーを開きたい。でも、いくら借りられるのか、計画書に何を書けばいいのかがわからない」

飲食店の開業資金についての記事はたくさんあります。ところが、それをウイスキーバーに当てはめようとすると、途中で手が止まります。「席数×回転率」で売上を計算しようにも、カウンター数席のお店では意味をなしません。ボトル1本の仕入値も、数千円のものから数万円のものまで幅があります。

この記事では、実際に日本政策金融公庫の創業融資が実行されたウイスキーバーのケースをもとに、費用の内訳・売上計画の作り方・開業前に集めた在庫の扱いまで、税理士の実務目線で解説します。

※ 事例は個人が特定されないよう、金額は概算に置き換え、地域名は伏せています。

ウイスキーバーの開業費用は、内装が半分以上を占める

ウイスキーバーは、席数が少なく面積も小さい業態です。それでも開業費用が下がりにくいのは、カウンターとバックバー(背面の棚)の造作にお金がかかるためです。

実際にご支援したケースでは、総額 約900万円のうち、内装工事だけで約500万円でした。

資金使途金額の目安
設備資金(うち内装工事 約500万円)約700万円
運転資金約200万円
合計約900万円

内装工事の中身を分解すると、次のような項目が並びます。

  • カウンター・バックカウンターの造作、天板や棚板の加工と取付
  • 照明器具と配線工事(バーは照明が雰囲気を決めるため、比重が大きくなります)
  • 給排水の設備工事、電気温水器
  • 入口扉・看板

面積が小さくても「造作の密度」が高いため、坪単価の相場では読めません。

さらに見落としがちなのが、開業前にそろえる備品です。グラス類、メジャーカップ、アイストング、製氷用のアイスモールドなど、ひとつひとつは小さくても、合わせると数十万円になります。

ここは公庫の担当者から必ず「見積書はありますか」と聞かれる部分です。内装工事は業者の見積書、備品は品目と金額がわかるリストを用意しておくと、計画の信頼度が上がります。

内装工事は、支払った年に全額が経費になるわけではありません

ここは見落とされやすいところです。内装工事の約500万円は、支払った年にまとめて経費になるわけではありません。

テナントを借りて出店した場合の内装工事は、建物附属設備に該当するものを除き「建物」として扱われ、耐用年数にわたって少しずつ経費にしていきます(減価償却)。

この耐用年数は、一律に「何年」と決まっているわけではありません。国税庁は、他人の建物について行った内部造作の耐用年数について「合理的に見積もった年数による」としています。造作の種類・用途・使用材質などによって変わるため、お店ごとに個別に判断することになります。

このケースでも、造作の内容をふまえて見積もった年数で毎月の減価償却費を計算し、損益計画に織り込みました。

現金は開業時に一度に出ていくのに、経費になるのは何年もかけて少しずつ。この時間差が、開業直後の資金繰りを見えにくくします。

だからこそ、損益計画とは別に資金繰り表が必要になります。利益が出ているのに現金がない、という状態を先に把握しておくためです。

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売上計画の作り方|客単価は「1杯の平均価格 × 注文数」に分解する

飲食店の売上計画は「客単価 × 席数 × 回転数 × 営業日数」で作ります。ウイスキーバーでも、この式そのものは変わりません。変わるのは客単価の作り方です。

ウイスキーバーの客単価は、次の2つに分解できます。

  • 1杯の平均価格(バックバーに並ぶ銘柄の平均)
  • お一人あたりの注文数(何杯飲まれるか)

「なんとなく客単価5,000円」ではなく、「平均2,000円のものを2杯」と分解する。ここが計画の説得力を分けます。

このケースでは、1杯の平均価格を2,000円、お一人あたりの注文数を2杯と置き、客単価を4,000円としました。そのうえで、回転数と営業日数を平日と土日に分けて積み上げます。

項目置いた数字
客単価4,000円(1杯2,000円 × 2杯)
席数5席(保守的に見積もり
回転数平日 1.0回/土日 1.5回
営業日数平日18日/土日8日(週1日定休)
  • 平日:4,000円 × 5席 × 1.0回 × 18日 = 360,000円
  • 土日:4,000円 × 5席 × 1.5回 × 8日 = 240,000円
  • 合計:月およそ60万円

2年目以降は回転数が上がることを見込んで、月およそ70万円としています。

ここで大事なのが席数です。カウンター席がもう少し取れる場合でも、あえて少なめに置いて計算しています。満席が続く前提の計画だと受け取られると、計画全体の信頼度が下がってしまうためです。

原価率はボトル1本=約23杯から逆算する

売上の次は原価です。ウイスキーバーが他の飲食店と決定的に違うのは、同じ棚に1本4,000円のボトルと1本10万円近いボトルが並ぶことです。

このケースでは、開業時の在庫は約100本。1本あたりの平均は約1万5,000円で、高いものは約10万円でした。

これを「酒類仕入高」とひとまとめにしても、原価率は出せません。そこで、私たちがこのケースで最初に確認したのは、次の1点でした。

「700mlのボトル1本から、何杯取れますか」

1杯を30mlで提供するなら、700ml ÷ 30ml ≒ 約23杯です。ここから、1本ごとの原価が出せます。

  • ボトル1本の仕入値 ÷ 約23杯 = 1杯あたりの原価
  • 1杯あたりの原価 ÷ 提供価格 = その銘柄の原価率

これを銘柄ごとに並べた一覧表を作っていただきました。項目は次のとおりです。

  • 銘柄
  • 700mlの仕入価格(税・送料を含む)
  • 30mlあたりの原価
  • 提供価格
  • 原価率

こうすると、「この銘柄は原価率が高すぎるので価格を上げる」「この銘柄は安く出せるので入口商品にする」という判断ができます。このケースでも、原価率がおおむね20〜30%に収まるよう提供価格を調整しました。

そして忘れやすいのが、無料でお出しするおつまみ(チャーム)です。このケースではお一人あたり約300円と置きました。客単価4,000円に対して約7.5%です。ドリンクの原価とは別枠で、必ず計画に乗せてください。

この一覧表は融資の面談でも効きます。売上と原価の数字が「勘」ではなく「積み上げ」であることを、1枚で示せるからです。

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【実例】自己資金2割で公庫の創業融資が通ったウイスキーバーの資金計画

ここまでの内容を、実際のケースでまとめます。

ご相談時の状況

  • 酒類関係の会社員として勤務された経験あり。ご自身でのお店は初めて
  • カウンター中心の小規模店
  • 開業前からご自身でウイスキーを買い集めており、それを開業時の在庫にあてる方針

資金計画(概算)

項目金額
総投資額約900万円
 うち設備資金(内装工事 約500万円を含む)約700万円
 うち運転資金約200万円
自己資金約200万円(総投資の約2割
日本政策金融公庫の創業融資約700万円

売上計画は、1年目が月およそ60万円、2年目以降が月およそ70万円という組み立てにしました。

私たちが行ったこと

  • 客単価を「1杯の平均価格 × 注文数」に分解し、席数・回転数・営業日数を平日と土日に分けて売上計画を作成
  • ボトル1本=約23杯からの原価計算と、銘柄別の原価率一覧表の作成
  • 内装の見積書・備品リストを、資金使途の各項目に紐づけて整理
  • 月次の損益計画と資金繰り表の作成
  • 据置期間(元金の返済開始を待ってもらう期間)を含めた返済計画の提示
  • 面談前の想定問答の準備

結果として、公庫の創業融資が実行され、無事に開業されました。

自己資金が総投資の2割でも、資金使途と売上の根拠が揃っていれば融資は通ります。

一般に自己資金は多いほど有利です。ただし実務では、金額そのものよりも「その自己資金がどうやって貯まったか」と「計画の数字に根拠があるか」が見られている、というのが率直な実感です。

据置期間についても、ご相談の時点では「特に考えていない」という状態でした。開業直後は売上が立ち上がるまで時間がかかりますので、元金の返済開始を数ヶ月待ってもらう設計にしています。ここは申し込みのときに希望を伝えられる部分ですので、必ず検討してください。

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開業前に買い集めたウイスキーは経費になるのか

ウイスキーバーを開かれる方の多くは、開業前からご自身でボトルを買い集めています。このケースでも、数年かけて集められたコレクションが、そのまま開業時の在庫になりました。

ここで多いのが、「仕入れた分はその年の経費になる」という受け取り方です。

売れ残っているボトルは、その年の経費にはなりません。

お酒の仕入代金のうち、その年に売れた分だけが売上原価として経費になります。売れ残った分は棚卸資産(在庫)として資産に計上されます。ウイスキーは腐らず、何年も棚に残るものです。100本仕入れて10本しか出なければ、経費になるのは10本分だけ、ということになります。

さらに、開業前に個人として購入したボトルを事業で使う場合、いくらで在庫に計上するかという論点もあります。原則として、購入時の価格がわかる資料(領収書や購入履歴)を残しておくことが大切です。このケースでも、銘柄ごとの購入日と価格を1本ずつ記録した表を作っていただきました。

この表は融資のためだけのものではありません。開業後の確定申告で、期末の棚卸にそのまま使えます。バーの在庫管理表は、作っておくと後で必ず効いてきます。

なお、開業前に支出した費用のうち、開業のために特別に支出したものは「開業費」として扱える場合があります。ただし、販売用のお酒の仕入は開業費ではなく在庫です。ここは混同しやすいところですので、迷ったらご相談ください。

まとめ

  • ウイスキーバーは小規模でも、内装工事が開業費用の半分以上を占めることが多い
  • その内装工事は支払った年に全額が経費にならず、耐用年数にわたる減価償却になる。現金の動きと経費の計上時期がずれる
  • 売上計画は「客単価 × 席数 × 回転数 × 営業日数」で作る。ウイスキーバーで工夫が要るのは客単価を「1杯の平均価格 × 注文数」に分解するところ
  • 席数は保守的に置く。満席前提の計画は信頼度を下げる
  • 原価率はボトル1本=約23杯から逆算し、銘柄ごとに一覧表にする。おつまみ(チャーム)の原価は別枠で乗せる
  • 実例では、総投資 約900万円・自己資金 約200万円(約2割)・公庫の創業融資 約700万円で融資が実行された
  • 自己資金の額そのものより、資金使途と売上の根拠が揃っているかが見られる
  • 売れ残ったボトルは経費にならず棚卸資産になる。購入価格の記録を残しておく

※本記事は2026年9月時点の情報です。個別の税務判断はご相談ください。

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堀 真彰
堀 真彰
税理士・公認会計士
大手監査法人で上場企業の監査に従事。 若手起業家を税務の面から支援したい考え、小西とともに弊社を設立。 税務申告の代行者だけではなく、経営のパートナーとして信頼される税理士を目指しています。
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