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税金

一人親方の確定申告|建設業の経費・外注費・消費税の注意点を税理士が解説

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小西 椋磨

建設業・土木・配管・電気工事で一人親方として働いている方から、こんな相談をよくいただきます。

「確定申告、去年は適当にやったんですけど、合ってますかね」
「何が経費になるかよくわからなくて、とりあえず材料費と工具だけ入れてます」
「外注に出してるんですが、給与にしないといけないんですか」

一人親方の確定申告は、一般の個人事業主と基本の仕組みは同じですが、業種特有の論点がいくつかあります。「知らなかった」では済まない落とし穴があるので、この記事では、経費の基本から業種特有の税務トラップ、青色申告の条件まで、一人親方の確定申告で押さえておくべきポイントをまとめて解説します。

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一人親方が使える経費一覧

一人親方の現場で実際によく出てくる経費をまとめます。「これ経費になりますか?」と聞かれることが多いものを中心に挙げます。

工具・資材・消耗品

現場で使う工具(電動ドリル・丸ノコ・スパナ等)、作業に直接使う資材・消耗品は経費になります。10万円未満のものは購入した年に全額経費、10万円以上のものは資産計上し、減価償却(耐用年数に応じて複数年で経費計上)します。

なお、青色申告をしていると30万円未満の工具・備品は「少額減価償却資産の特例」で一括経費にできます。これは白色申告では使えません。

作業服・安全靴・ヘルメット

仕事専用の作業服、安全靴、ヘルメット、手袋などは経費になります。ただし「普段も着られる服」は認められません。業務に特化したもの、現場でしか使わないものが対象です。

軽トラ・バイクの費用

現場への移動に使う車両の費用(ガソリン代・車検代・保険料・駐車場代)は経費になります。プライベートとの兼用なら、業務使用割合を按分して計上します。

一人親方の場合、現場への移動がほぼ100%業務用というケースも多いですが、税務調査では「プライベート利用がゼロとは考えにくい」と指摘されることがあります。走行距離記録などの根拠を残しておくと安心です。

携帯電話・通信費

現場との連絡・元請けとのやりとりに使う携帯電話代は経費になります。プライベート兼用の場合は50〜80%程度を業務按分するのが一般的です。

現場への交通費・高速代

現場までの電車賃・バス代・高速道路料金も経費です。領収書またはETCの明細を保管してください。

外注費(下請けへの支払い)

自分だけでは手が足りないときに別の一人親方に仕事を頼んだ場合、その支払いは外注費として経費になります。ただし、この外注費の扱いは後述する最も税務署が目を光らせるポイントです。

労災保険料・組合費は「控除」か「経費」か

一人親方は会社員ではないため、通常の労災保険には加入できません。そのため「一人親方労災保険(特別加入)」に任意加入する制度があります。

一人親方組合から届く領収書には複数の項目が混在していることが多く、それぞれ処理方法が異なります。

支払い項目確定申告での処理
労災保険料(特別加入)社会保険料控除(所得控除)
国民健康保険料社会保険料控除(所得控除)
建設組合の組合費(大阪府建設組合など)必要経費(社会保険料控除には含まれない)

実際に一人親方労災保険組合の領収書には「確定申告の際のご注意」として、労災保険料は社会保険料控除、組合費等は必要経費と明記されているケースがあります。ところが、これを全部まとめて「社会保険料控除」に入れてしまったり、逆に全額経費にしてしまう方が少なくありません。

また、大阪府建設組合など一部の組合では建設組合費について「社会保険料控除等に含めることはできません」と明示しています。ただし事業に関連する組合費は必要経費として計上できます。社会保険料控除には使えない、という点だけ注意してください。

実際に「全部まとめて経費に入れてましたけど問題ありますか」という相談を受けたことがあります。届いた領収書・証明書の内訳を必ず確認して、項目ごとに正しく処理してください。

参考:国税庁 No.1130 社会保険料控除

消費税の課税区分(課税事業者・インボイス登録者向け)

消費税の申告をしている一人親方が会計ソフトで仕訳を入力する場合、課税区分の設定も正しくしておく必要があります。

支払い項目消費税の区分
組合費不課税(対価性がなく、消費税の課税対象外)

なお、労災保険料(特別加入)は業務の経費ではなく社会保険料控除として確定申告書に記載するため、会計ソフト上の仕訳には原則登場しません。消費税の課税区分を設定する必要はありません。

外注費か給与か?税務調査で最も指摘されるポイント

一人親方が最も税務調査で指摘されやすいのが、「外注費が給与と判定される」問題です。

外注費として処理していても、税務署から「これは実態として雇用関係にある。給与だ」と判定されると、消費税の仕入税額控除が否認され、源泉徴収漏れも指摘されます。追徴税額が大きくなるケースがあります。

給与と外注費の判断基準

税務署が「給与か外注費か」を判断するポイントは次のとおりです。

項目外注費(OK)給与(NG)
指揮命令本人の裁量で仕事細かく指示を受けている
材料・工具本人が用意依頼側が提供
他の仕事他の元請けからも受注している実質的に専属
代替性自分が休んでも別の人を自分で手配代わりに人を出すのは依頼側
報酬形態成果・工事量ベース時間・日当ベース

「一緒に現場に入ってもらっているだけ」という感覚でも、実態が上記の「給与側」に近い場合は給与とみなされることがあります。

契約書を必ず結ぶ

外注(業務委託)なら業務委託契約書、従業員として雇用するなら雇用契約書が必要です。契約書がないと、税務調査で「外注か給与か」の判定材料がなくなり、不利な結論を押しつけられるリスクがあります。

口約束や慣例でやり取りしているケースが建設業では非常に多いですが、金額・工事内容・支払条件を明記した契約書を締結しておくことが最低限の対策です。

参考:国税庁 No.2807 給与所得と事業所得の区分

消費税の落とし穴|1,000万円・インボイス・簡易課税

売上1,000万円を超えると課税事業者になる

前々年の売上が1,000万円を超えると、消費税の課税事業者になります。課税事業者になると、受け取った消費税を申告・納税する義務が生じます。

「1,000万円超えたかも」と思ったら、早めに確認してください。翌々年から課税事業者になるため、準備期間があります。

参考:国税庁 No.6501 納税義務の免除

インボイス登録をしている場合は初年度から消費税が発生する

インボイス(適格請求書)登録をすると、売上が1,000万円以下・開業初年度であっても消費税の申告・納税が必要になります。

「最初の2年は消費税が免除と聞いた」という方がいますが、それはインボイス未登録の場合です。登録している方は最初から消費税の申告義務があります。

元請けからインボイス登録を求められて登録した方は特に確認してください。

【個人事業主必見】インボイス制度に登録すべき?免税事業者が知っておきたい判断ポイントとは?
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外注先がインボイス(適格請求書)を発行できない問題

課税事業者(インボイス登録者)が外注費を仕入税額控除するには、外注先がインボイス登録事業者であり、適格請求書を発行してもらう必要があります。

ところが、下請けの一人親方がインボイス未登録のケースが建設業では非常に多く、「外注費を払っているのに消費税の仕入税額控除が使えない」という問題が発生します。

現在は経過措置(インボイス特例)で一定割合の控除が認められていますが、この特例は段階的に縮小します。

期間インボイス未登録の外注費の控除割合
令和5年10月〜令和8年9月仕入税額相当額の80%
令和8年10月〜令和11年9月仕入税額相当額の50%
令和11年10月以降控除不可(0%)

外注が多い一人親方は「簡易課税」を検討する

インボイス未登録の外注先が多い場合、簡易課税制度を選択することで、外注先のインボイス有無にかかわらず、みなし仕入率を使って消費税を計算できます。

建設業の事業区分とみなし仕入率は次のとおりです。

事業区分該当するケースみなし仕入率
第3種事業材料を自分で調達して施工する場合70%
第4種事業材料を元請けから支給されて施工のみ行う場合(人工仕事)60%

一人親方は材料支給を受けて施工のみ行うケース(人工仕事)が多く、その場合は第4種(60%)に該当します。自分の業務実態に応じて事業区分を正しく判断してください。

参考:国税庁 No.6509 簡易課税制度の事業区分

簡易課税の選択には「消費税簡易課税制度選択届出書」を課税期間が始まる前日(12月31日)までに提出する必要があります。課税事業者になってから慌てて選択しようとしても間に合わないことがあるため、早めに検討してください。

見落としがちな経理のルール|発生主義・立替経費の正しい処理

期をまたぐ売上・外注費は「発生主義」で計上する

一人親方の売上や外注費は、締め日が月末以外の場合があります。たとえば「毎月20日〆・翌月払い」という取引では、12月21日〜12月31日分が翌年1月の請求書に含まれることになります。

この場合、12月31日までに提供した役務(仕事)の分は、12月の売上・経費として計上する必要があります。「入金があった月に売上を計上する」「請求書が来た月に経費を計上する」では発生主義の原則からずれてしまい、正確な損益計算になりません。

実務的には、役務提供期間(出勤日数・施工日数など)をもとに、期末時点で12月分を見積もって計上します。外注費も同様です。「12月21日〜12月31日分の外注費は、1月に請求書が来るが、12月に未払い計上しておく」という処理が正しい対応です。

立替経費の取り扱いに注意

元請けから工事に関連する経費(交通費・駐車場代など)を受け取る場合、その受け取り方によって処理が変わります。

実額請求(領収書を提出して実費を受け取る場合)
この場合は「立替金」として処理します。受け取った金額は売上に含めず、支払った経費も自分の経費に計上しません。あくまで立て替えただけの取引です。

概算請求(「1日○円×△日」などの定額で受け取る場合)
この場合は「売上」に含めて処理します。受け取った概算交通費は売上の一部として計上し、実際にかかった交通費は自分の経費として別途計上します。

「概算で受け取っているのに立替金として処理している」「そもそも処理を忘れていた」というケースが多いです。元請けとの取り決めを確認した上で、正しく処理してください。

青色申告65万円控除|受けるための5つの条件

青色申告の65万円控除を受けるには、以下の条件が必要です。

  1. 青色申告承認申請書を提出していること(開業届も合わせて提出)
  2. 複式簿記で記帳していること(単式簿記では10万円控除)
  3. 貸借対照表・損益計算書を確定申告書に添付すること(会計ソフトを使えば自動作成される)
  4. e-Taxで申告すること(または優良な電子帳簿保存+届出書の提出。どちらも満たさない場合は55万円控除)
  5. 期限内(3月15日まで)に申告すること(期限後申告では65万円控除を受けられない)

65万円控除は所得から直接引かれるため、税率20%なら13万円の節税効果があります。会計ソフトを使えば複式簿記での記帳は難しくありません。

参考:国税庁 No.2072 青色申告特別控除

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確定申告でやりがちなミス4選(実例あり)

実際の相談から見えてきた、一人親方に多いミスを3つ挙げます。

ミス① 材料費を経費にし忘れる
元請けから支給された材料は経費にできませんが、自分で買った材料は当然経費です。現金購入でも領収書があれば計上できます。

ミス② 青色申告の申請を忘れて白色申告になっている
開業してそのまま申告した結果、白色申告で65万円控除が使えていないケースがあります。翌年からは申請を忘れずに。なお、1月1日〜1月15日に開業した場合はその年の3月15日まで、それ以降に開業した場合は開業から2ヶ月以内が提出期限です。

ミス③ 家族への支払いを経費にし忘れる(または逆に問題のある形で処理している)
青色申告の場合、一定の条件を満たせば家族(配偶者・親族)への給与を経費(青色事業専従者給与)にできます。ただし、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要です。届出なしに支払っても経費にはなりません。

ミス④ 申告を期限後に出してしまう(または無申告のまま)
確定申告の期限は原則3月15日です。期限を過ぎると無申告加算税(最大30%)延滞税が発生します。税務署に把握されていても申告していない場合、調査で一括追徴されることがあります。「去年まとめて出せばいい」は通じませんので、毎年3月15日までに申告してください。

税理士に相談するタイミング

以下に当てはまる方は、一度相談されることをおすすめします。

  • 売上が800万円に近づいてきた(消費税・法人化の検討タイミング)。法人化の留意点については下記を参照してください。
  • 外注先が増えてきた(外注費vs給与の判定リスクが上がる)
  • 車・工具を新たに購入した(減価償却の処理)
  • 青色申告をしていなかった(遡及はできないが今からでも手続きを)
  • 昨年の申告内容に自信がない
法人化の注意点とは?大阪の税理士が教える会社設立前後の落とし穴
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まとめ

一人親方の確定申告で押さえておくポイントをまとめます。

  • 労災保険料(特別加入)は社会保険料控除で処理する(経費ではない)
  • 外注費は実態が重要。契約書・請求書を必ず取り交わす
  • インボイス登録者は初年度から消費税申告が必要
  • 青色申告65万円控除はe-Tax申告+複式簿記が条件
  • 材料費・工具・作業服・車・携帯はきちんと経費計上する

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税理士法人淀川パートナーズは大阪市淀川区の税理士事務所です。建設業・土木・配管工事の一人親方の確定申告・記帳代行・税務顧問を全国オンライン対応しています。

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小西 椋磨
小西 椋磨
税理士・公認会計士
税理士・公認会計士/税理士法人淀川パートナーズ代表。大手監査法人出身。2023年に独立し、大阪市淀川区を拠点に創業融資支援から税務顧問まで、創業期・成長期の経営者の財務の右腕として伴走しています。
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