【2026年最新】青色事業専従者給与の決め方|否認されない金額を税理士が解説

はじめに
こんにちは、税理士法人淀川パートナーズの堀です。
個人事業主やフリーランスの方から、こんなご相談をよくいただきます。
「妻に事業を手伝ってもらっているけれど、給料を払えば経費になって節税できると聞いた。でも、いくらまで払っていいのか分からない」
これは「専従者給与」という制度の話です。家族に支払った給与を必要経費にできる、個人事業主にとって非常に大きな節税手段です。一方で、金額の決め方や手続きを間違えると、税務調査で「経費として認められない(否認される)」リスクもあります。
この記事では、専従者給与の要件・届出の期限・いくらまで払えるのかの考え方・配偶者控除との損得まで、税理士の実務目線でわかりやすく解説します。
専従者給与とは?家族への給与を経費にできる制度
通常、個人事業主が生計を一にする(同じ財布で暮らしている)家族に給与を払っても、原則として必要経費にはできません。これは、家族へ給与を出す形で所得を分散し、税負担を不当に減らすことを防ぐためのルールです。
しかし、一定の要件を満たして届出をすれば、この例外として家族への給与を経費にできます。これが「青色事業専従者給与」です。
事業主の所得を家族に分散できるため、世帯全体の税負担を下げられるのが最大のメリットです。たとえば所得が集中している事業主から、所得がない配偶者へ給与という形で所得を移せば、より低い税率が適用され、世帯全体の所得税・住民税を抑えられます。
青色と白色で違う|専従者給与と事業専従者控除
専従者に関する制度は、青色申告か白色申告かで内容が大きく異なります。混同されやすいので、まず違いを整理しましょう。
| 青色申告 (青色事業専従者給与) | 白色申告 (事業専従者控除) | |
|---|---|---|
| 経費にできる額 | 実際に支払った給与の全額 (労務の対価として相当な範囲) | 定額の上限あり |
| 上限 | 明確な上限額はない | 配偶者:最高86万円 その他親族:最高50万円 |
| 事前の届出 | 必要 | 不要 |
| 金額の柔軟さ | 実態に応じて設定できる | 実際の支払いに関係なく定額 |
白色申告の「事業専従者控除」は、実際にいくら払ったかに関係なく、配偶者は最高86万円、その他の親族(15歳以上)は最高50万円を所得から差し引ける制度です。届出が不要で手軽ですが、金額の上限が決まっています(正確には、この定額と「控除前の事業所得等の金額 ÷(専従者の数+1)」で計算した金額のいずれか低い方が上限になります)。
一方、青色申告の「青色事業専従者給与」は、届出さえすれば実際に支払った給与を全額経費にできます(労務の対価として相当な範囲であることが前提)。節税効果を最大化したいなら、青色申告+専従者給与が原則として有利です。
なお、青色事業専従者給与を使うには、そもそも青色申告の承認を受けていること(「青色申告承認申請書」を提出していること)が前提です。まだ白色申告の方は、青色申告承認申請書を原則その年の3月15日まで(その年の1月16日以後に新規開業した場合は開業日から2か月以内)に提出する必要があります。この承認申請書と、次に説明する専従者給与の届出書はセットで準備しておきましょう。
専従者給与を使うための要件
青色事業専従者給与を経費にするには、家族が「青色事業専従者」に該当している必要があります。国税庁が定める要件は次の3つです(すべて満たす必要があります)。
要件1|生計を一にする配偶者その他の親族であること
青色申告をしている事業主と生計を一にする(生活費の財布が同じ)配偶者や親族であることが必要です。同居はもちろん、仕送りなどで生計が同じであれば別居でも該当する場合があります。
要件2|その年の12月31日時点で15歳以上であること
その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であることが必要です。中学生以下の子どもは対象になりません。
要件3|年間6か月を超えて事業に「もっぱら従事」していること
その年を通じて6か月を超える期間、事業に専ら(もっぱら)従事していることが必要です。この「もっぱら従事」が実務上いちばん問われるポイントです。他に本業として会社勤めをしている家族や、日中は学校に通う学生は、原則としてこの要件を満たしません。
たとえば「配偶者が平日は会社員としてフルタイム勤務し、休日だけ事業を手伝っている」というケースでは、専従者とは認められないのが原則です。
「青色事業専従者給与に関する届出書」の書き方と提出期限
青色事業専従者給与を使うには、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出しておく必要があります。この届出を忘れると、いくら実際に給与を払っていても経費にできません。
提出期限に要注意
提出期限は次のとおりです。
- 原則:専従者給与を経費に算入しようとする年の3月15日まで
- その年の1月16日以後に新たに開業した場合や、新たに専従者ができた場合:開業日・専従者ができた日から2か月以内
つまり、今年分から専従者給与を使いたいなら、その年の3月15日までに届出を出しておかないと間に合いません。「年末になって節税のために家族に給料を払おう」と思っても、届出を出していなければその年は使えないのです。ここを知らずに1年分の節税機会を逃す方が少なくありません。
届出書に書く「金額」は上限として機能する
届出書には、専従者の氏名・仕事の内容・支給金額(月額や賞与)などを記載します。ここで届け出た金額の範囲内でしか経費にできない点に注意してください。届出金額を後から増やしたい場合は「変更届出書」を提出します。届出時点では、昇給の余地も見込んで少し余裕をもった金額を記載しておくのが実務上のコツです。
いくらまで払える?否認されない金額の決め方
「専従者給与はいくらまで払っていいのか」——これが最もよくいただく質問です。結論からいうと、金額に法律上の明確な上限はありません。ただし、経費として認められるには次の条件を満たす必要があります。
- 届出書に記載した方法・金額の範囲内で実際に支払われていること
- 労務の対価として相当な金額であること
ポイントは「労務の対価として相当」かどうかです。仕事の実態に見合わない高額な給与は、その過大な部分が経費として否認されます。金額を決めるときは、次のような点を根拠にすると税務調査でも説明しやすくなります。
- 仕事の内容・責任の重さ(経理、接客、制作など具体的な業務)
- 勤務時間・勤務日数(タイムカードや業務日報で記録を残す)
- 同じ仕事を第三者(他人)に頼んだ場合に支払う給与水準
- 事業の規模・売上とのバランス
「実態のない給与を家族名義で払っているだけ」と見られないよう、勤務の記録と振込の実績を残すことが最大の防御になります。現金手渡しではなく、必ず本人名義の口座へ振り込みましょう。
なお、いくらに設定するのが最適かは、事業主の所得水準・配偶者控除との比較・社会保険への影響によって一人ひとり異なります。ご自身のケースでの最適額を知りたい方は、お気軽にご相談ください。
配偶者控除・扶養控除は使えなくなる|損得の比較
専従者給与には、見落としがちな重要な注意点があります。専従者給与を支払う家族は、配偶者控除・扶養控除の対象にできません。
国税庁のルールでは、専従者として給与の支払いを受ける人は「同一生計配偶者」や「扶養親族」になれないと定められています。つまり、配偶者を専従者にして給与を払うと、その代わりに配偶者控除(最大38万円など)は受けられなくなるということです。
そのため、専従者給与を使うべきかどうかは、「専従者給与による節税効果」と「失う配偶者控除・扶養控除」を天秤にかけて判断する必要があります。
どちらが有利になるかは、事業主本人の所得の大きさ・実際に支払える給与額・社会保険への影響によって一人ひとり変わり、一概にはいえません。同じ給与額でも、事業主の適用税率によっては損得が逆転することがあります。「専従者給与と配偶者控除、自分の場合はどちらが得なのか」を確実に知るには、実際の数字でシミュレーションするのが一番です。判断に迷ったら、お気軽にご相談ください。

給与を払った後に必要な実務(源泉徴収・社会保険)
専従者給与も「給与」である以上、支払った後には通常の従業員と同じ実務が発生します。届出だけで終わりではない点に注意してください。
源泉徴収と年末調整
専従者に給与を払う事業主は、源泉徴収義務者になります。給与から所得税を天引きして納める必要があります。目安として、令和8年分(2026年)からは月額105,000円以上を支払う場合に源泉徴収税額が発生します(扶養控除等申告書を提出している場合)。この基準額は、令和7年の税制改正(基礎控除・給与所得控除の引き上げ)にともない、従来の88,000円から引き上げられました。年末には専従者の年末調整も行います。
はじめて人に給与を払う場合は、税務署へ「給与支払事務所等の開設届出書」を提出します。また、源泉税の納付を年2回にまとめられる「源泉所得税の納期の特例」を申請しておくと、毎月の納付事務を減らせます。
社会保険・住民税への影響も確認を
給与の金額によっては、専従者が社会保険(健康保険・年金)の扶養から外れることがあります。所得税だけを見て給与を決めると、社会保険料の負担が増えて世帯の手取りがかえって減るケースもあります。「税金」だけでなく「社会保険」まで含めて考えるのが、専従者給与を成功させるコツです。

よくある失敗と税理士からのアドバイス
最後に、専従者給与でつまずきやすいポイントを実務目線でまとめます。
- 届出を出し忘れて1年分使えない:3月15日の期限を過ぎると、その年は専従者給与を経費にできません。
- 勤務実態がなく否認される:給与を振り込んでいても、働いた記録がないと否認リスクが高まります。業務日報・勤務時間の記録を残しましょう。
- 配偶者控除と二重取りしようとする:専従者給与を払った家族は配偶者控除・扶養控除の対象外です。両方は使えません。
- 社会保険を考慮していない:所得税だけで金額を決め、社会保険料負担で世帯の手取りが減ってしまう。
- 源泉徴収・年末調整を忘れる:給与を払う以上、源泉徴収義務が発生します。
専従者給与は正しく使えば大きな節税になりますが、金額設定と手続きに実務判断が必要な制度です。「うちの場合はいくらが適切か」「配偶者控除とどちらが得か」で迷ったら、早めに税理士へご相談ください。
まとめ
- 専従者給与は、生計を一にする家族への給与を経費にできる個人事業主の節税制度。
- 青色申告なら実額を全額経費にでき、白色申告は配偶者86万円・その他親族50万円までの定額控除。
- 要件は「生計を一にする15歳以上の親族」「年6か月超もっぱら従事」の3つ。
- 使うには「青色事業専従者給与に関する届出書」を原則その年の3月15日までに提出する必要がある。
- 金額に明確な上限はないが、「労務の対価として相当」でないと否認される。勤務記録と振込実績を残す。
- 専従者にした家族は配偶者控除・扶養控除の対象外。損得は必ず比較する。
- 給与を払うと源泉徴収義務が発生し、社会保険への影響も要確認。
※本記事は2026年7月時点の情報です。個別の税務判断はご相談ください。
初回相談は無料です。






